5 赤ちょうちん
2017.1.6 誤記修正
さてと、事前のリサーチだと由紀さんの担当刑事はこの屋台で飲んでいるはずだ。
なぜ、そんなことが判るかって、それは今日が彼の給料日で、最近通いだした安い給料でも気兼ねなく飲めて、美味いのがここの屋台の良い所だ。今度の給料日も行くぞと誘われたのを断った彼の相棒から交通課の女性警官に変装して聞き出したからだ。まあ、エサは後輩の女子大生との合コンを今日セッティングするというやつ。なぜか、ドタキャンなんだよな世の中上手くいかぬわ。
「親父、冷ともつ煮込み。あとは、レバーとかしら、つくね、塩で」
「はいよ、冷と煮込み!」「うーん、相変わらず美味い!」
「おっ、こないだはどうもお世話になりました」刑事さんの隣に座る。
「おっちゃん、ビールと馬刺しちょうだい。串は、レバーとかしらを塩で」コップとビールが前に置かれる。
「おう、こないだの探偵さんか。わざわざ俺を探して来たのかい?」
「はい、馬刺しとレバーね」
「うーん、美味いなあ。ねえ、調査とか、張り込みで来てるとか考えないの?こっちは折角気を遣って当たり障りなく会話してるのにさ」
「ちょっと、勝手に馬刺し取らないでください。信じらんないなあ」
「で、何が聞きたい、容疑者か、それとも動機か?」刑事は美味そうに俺の馬刺しをほおばった。
「いえ、世間話ですよ。弟さんは、ある製薬会社にバイトで入ったんですが、経理に確認したら働いていた事実が無いというんですよ。新薬の治験のバイトに入ったのは確かな筋からの情報だったんですがね、いつのまにか事実が変化している。こうなったから、言いますけどお姉さんは、弟さんが急に百万もの大金を持って来たから心配で俺に調査を依頼したんです。それが、製薬会社のバイトでしたが昨日まであったその事実が今日消えてしまったんですよ。ミステリーでしょ、探り入れて貰えないかな?馬刺し分で」
「せこいなあ、飲み代持つとか言えないのか?」
「あ、利益強要しましたね。はい、音声ばっちり取れましたよ。さて、写メも撮っておくかな」
「おい、やるよ、わかったら今回の情報教えてやるから。ICレコーダーの記録と写メを消去しろ!」
「はい、じゃあ今日は奢りますよ。おっちゃん、冷もう一杯、この人に出してね。俺には、軟骨とつくね、てっぽう、あとシロはタレね」
「よく食うなあ」
「はは、事件解決の前祝ということで」
うーん、お腹が空いてきた。