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14 脅迫

2017.1.22 若干修正

 俺は、電車を乗り継いでXYZ製薬の前に来ていた。警備員ぐらい居るだろうが、まあ見つかっても変装しているから身元が発覚する恐れは無いので安心だ。

 スイロン(推論アプリ)が導き出したXYZ製薬の資金源となる秘密計画は、人工過密地域への出生率低下策、具体的には、卵子や精子の減数分裂を阻害させる効果のあるウィルスをばら撒き、例え受精しても流産させるという効果は高いが人道的にはどうなの?というものだった。

 だが、人口爆発とそれによる慢性的な貧困に苦しむ為政者たちは秘密裏にXYZ製薬のウィルスの購入に前向きだということが秘匿メールのやり取りでうかがえる。


 ただ、バックドアを仕掛けたXYZ製薬のサーバには肝心のウィルス製造方法等が見当たらなった。多分スタンドアローンのシステムか研究者の頭の中に保存されているのかも知れない。いずれにしても、直接交渉の必要が有るわけだが、思うところのある俺には好都合だった。


 予め今夜のシフトを調べているので勤務中の警備員に、監視カメラの視覚で変装する。数秒で変装を完了すると、俺は警備員として堂々と警備室に入った。

 「おっ、なんで俺が目の前に?夢か?」

 部屋にいた警備員が、自分そっくりの俺の姿に唖然としている。まあ、説明する気も無いので俺は飛び掛かると警備員に手刀を当てて気絶させた。騒がれると面倒なので、猿轡さるぐつわを噛ませて手足を縛り隣の部屋にある更衣ロッカー押し込めて鍵を掛けた。

 

 警備室から失敬した鍵を使って、研究室に入る。目当ての研究用スタンドアローンシステムの端末を起動する。事前に調査で判明した整備委託業者の管理者IDでログインすると、まず侵入の痕跡を消去した。これで、大手を振って調べられる。

 十数分後、ウィルス製造方法などの研究データを入手し、念のためシステム上のファイルには暗号を掛けた。それとバックアップ媒体については、南条課長のアイコラ映像で上書きしてやった。

 社内LANのメールサーバーから南条課長あてに、研究データを復旧したければ指定日時に金を持って来いとメールを出しておいた。


 翌日、俺は喫茶店で人待ちをしていた。今の姿は、通行人Aだ。南条課長が素直に来てくれるか、それともまた非合法の実力手段に訴えるのか。

 流石に、裏の資金源を無駄にする訳にはいかないと見えて南条結城は、ベージュのスーツで颯爽と登場した。しかし、寝不足なのか目に隈があるのを厚化粧で隠しきれていなかった。

「あなたですか、メールをくれたのは?」

「そうですよ、よっぽどあのウィルスが大事なんですね」

「お金は用意したから、来て頂戴。解除パスワードを確認しないと、渡せないわ」

 南条課長が強気に迫る。

「まあ、いいですよ。じゃ、場所を移りましょう。車は?」


 俺たちが店を出ると、すーと黒いBMWが止まって、運転席から降りた黒スーツの男が後部座席のドアを開けてくれる。南条課長は無言のアイコンタクトを運転手に向けると座席に乗り込む。俺が仕方なく南条課長の隣に座ると車が走り出した。

 俺たちは、走る車の後部座席で無言だった。前後に車が無くなったのを確認すると俺は、運転席を蹴破って車を止める。緊急時の五倍パワーを使ったのだ、長時間の使用はできないけどこういう時は便利だ。

「あなた、何を、まさかあなたも被検体?」

 南条課長が、驚きの声を上げる、なんか見当はずれなことを言っているが。運転手の心配もして欲しいよね、人として。俺は、運転手の息があるのを確かめると南条課長をお姫様抱っこで倉庫街に向けて走り出した。

 「きゃ、何を、離して、いやー」


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