11 安息
2017.2.18 誤字修正
ふう、やはりどうやら緊張していたのか肩が凝っているようだ。俺は心のオアシスへ向かって足早に急ぐ、さあて今日は何を食おうかなあ?
ガチャン、「あ、いらっしゃいませ」俺がドアを開けると秘書が笑顔で出迎えてくれた。
「いつも綺麗だね。留守中来客はあったかい?玲子ちゃん」
「今日も茶店のお客様だけよ、うちに来ていただいたのはね。あら、なんか疲れてるみたいねこういう時は、ビタミン補給よ任せといて飲み物はコーヒーでいいのよね?」
「ああ、敏腕秘書にお任せだ」俺は、秘書に信頼の笑みを向ける。
「じゃーん、特製フルーツサンドよ!これで、元気出しなさい」
「おお、美味そうだ!こりゃあ、愛をびんびんに感じるぜ!」
「馬鹿言ってんじゃないわよ」レシートを置いて行ってしまった愛しい人が、笑顔を残して。
うー、生クリームたっぷりの甘さと数種類のフルーツの酸味が絶妙のハーモニーを奏でる。愛が成せる業か匠の技か、いずれにしろ俺に至福の時間を提供してくれる、この瞬間は無敵かも。
糖分が脳細胞を活性化させたのか、様々な疑問点が氷解していく。なぜ、XYZ製薬が違法な実験に踏み込んだのか?なぜ、北条由紀さんが死なねばならなかったのか?なぜ、弟の北条哲也君が死なねばならなかったのか?
貧乏くじを引いたのは誰か?得をするのは誰なのか?単純な図式だった。ただ、あそこまで情報を隠蔽されていなければ解らなかっただろう。
これは、たかが研究成果を盗んだだけの事件ではないようだ。朧気ながら真相に近づいたような気がしてきた、今日の成果はここだろう。あとは、データの裏付けがあれば探偵の直感が真実へと誘うのも時間の問題だ。
ここ2週間の株価の変動データ、穀物相場、金の相場、ヒトゲノムの解析データ、天体の運行データ、近隣の中高生の試験データ、地質調査衛星の画像データ、他愛のない恋占い、競馬予想データ、宅配便の運行データ、偵察衛星のデータ、ビッグデータに至るものまでもが、相関するもの、無関係なものをひたすらに解析していく。
砂漠の砂から、ボルトを探し、模型を組み立てるようなある意味一見不毛な作業を流れに逆らい、あるいは従い遷いながら続けていく。
よし、今日はここまでだなあとは、クラウドサーバに与えた指示で自動実行させるか。
俺は、ネグラ、親父の残した家に戻って寝ることにした。