大団円
エピローグ
こうして、かくれんぼ大会は無事(?)幕を閉じた。公園で輝月が「閉会の言葉」を述べて解散である。その後は各自帰路についた。夜蓮はにこにこしながら、 高茶は眠たげに、木鈴はまだいがみ合っている輝月と羽吹の仲裁をしながら。
朝夏も皆と別れ、一人物思いにふけっていた。
(結局、私は幼い頃の名誉挽回ができたのかな?)
この問いが朝夏の頭の中でぐるぐると回り続けていたのである。
確かに朝夏は、全員を見つけることができた。だが、よく考えてみるとそれは夜蓮が手を貸してくれたから成し得たことであり、朝夏一人でしたことではないのだ。もし一人で探していたら、三十分以内に全員見つけることはできず、幼い頃と同じように一人涙に暮れていたかもしれない。現に、公園で一度絶望しかけたではないか。色々と思い出してみれば、これは名誉挽回でもなんでもない。
でも、と朝夏は考えた。どのみち、幼い頃できなかったことを今できたことには変わりない。いや、ひょっとしたら「支えてくれる人がいたから成し遂げることができた」とプラスに考えてもいいのかもしれない。朝夏はそうだそうだと一人で強く頷いた。
このことは、なにもかくれんぼだけに限らない。多分、朝夏は今も昔も一人では何もできないのだ。だがおそらく、頑張ろうという意気込みだけはある。
(夜蓮にも、夢中になってたって言われたしな)
またいつか、かくれんぼや他のことをした時に誰かに助けてもらう時が来るかもしれない。それとも、自分が救いの手を差し伸べるのほうに回るのかもしれない。意気込みの他に何か強味を持っていれば、後者になれるかもしれない。未来は未知数だ。
(まだわかんないけど、色々と経験を積んでいこう)
朝夏は決心して足を速めた。
そういえば、今回のかくれんぼで、朝夏は高茶を見つけた直後、羽吹と夜蓮の二人に計略を仕掛けられている。あそこをもう少し注意しなければ。
(一人見つけて油断してたのが良くなかったんだ。気をつけよう)
意気揚々と歩く朝夏の後ろを追いかけるように蝉の声が響いている。夏は今、真っ盛りだ。