思わぬ発見
3章
北の森から出た朝夏は、今度は東に向かった。東には、ブランコ・滑り台・砂場などの遊具がかたまっている。朝夏は遊具をとっくりと眺めた。少し見ただけでは、隠れる場所などないように見える。どの遊具も三百六十度の角度から見れば、そのことは容易に確かめられた。
「参ったなぁ」
朝夏の口から初めて弱音が出た。
「これじゃ、探しようがないじゃないか」
昔もよくかくれんぼをしたものだが、鬼になったとき朝夏はいつもなかなか隠れている友達を見つけられなかった。時間ばかりがむなしく過ぎていき、しまいには泣き出すという始末だった。最後にかくれんぼをしてからもう何年もたつというのに、あの頃の苦い記憶が今朝夏の頭によみがえってきたのだった。
(中学生にもなって、同じ気持ちを味わうなんてなぁ)
朝夏はため息をついた。さすがに泣き出しはしないが、少し惨めな思いだった。高茶を見つけた時の優越感や喜びはかけらもなかった。
「どうしよう」
朝夏は悩んだ。これから、どこをどう探したらいいのだろう。
「…」
ミーンミーン。四方八方からまたもや蝉の鳴き声が聞こえた。まるで、朝夏をせきたてているようだ。早く探せ、何をしている。止まるな、探し続けろ。…。
朝夏はあれこれ考えるのを止めた。とにかく、今は探さなければならない。変な言い方だが、幼い頃のかくれんぼに対する名誉挽回のためにも。なぜ輝月がかくれんぼをやろうと言い出したのかはわからないけれど、今回のかくれんぼは昔なかなかできなかったことを成し遂げるいい機会になりうると朝夏は考えたのだ。
もう一度、遊具を一つ一つ見直す。本当に、人が隠れる場所がないのか?…ブランコ、百パーセントない。滑り台も同様。砂場は…。
そこで朝夏は首を傾げた。なんだか砂場の砂の色がいつもと部分的に違う。中央のあたりが通常よりずっと黒い。夢中で掘り返した後の状態のようだ。おまけに、砂がいつもより若干高く積もっているような…。
(…! いやいや、まさかな)
朝夏は慌てて、あるとてつもない考えを頭から追い出した。だが、見れば見るほど不信な砂場だ。その考えは大いにありうる…かもしれない。
「確かめてみよう」
勢いをつけるために、朝夏は一歩二歩後ろに下がりかけた。と、そのとき右足がなにかにあたった。
石かなと思って振り返ると、なんとそこには一人の少女が立っていた。薄手のワンピースを着て、足にはサンダルを履いている。長い髪はゴムでくくり、やや目つきは鋭いが可愛い顔にはしまったという表情が…。
「夜蓮!」
「あーあ、見つかっちゃったわ」
夜蓮は心底残念そうに言った。