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ラジオ収録

時期はまだ冬。寒さと眠気に耐えられず、布団から起き上がられずにいた。

今日は午後からラジオの収録がある。確か、新人さんも来るんだよな。早く起きないとな……

だが、結局正午12時になるまで起きることはできなかった。


なんとか、寒さと眠気に勝ち、ベットから起き上がり自室を出てリビングへと向かう。


「おはよう~…… 」まだ、眠気を帯びた声で俺は挨拶をした。


「おはよう! もうお昼だよ? ご飯食べてラジオ行く支度しな!」元気に料理を作りながらそう言ったのは俺の父方の祖母。


「ん~…… 飯何? お腹すいたよ~…… 」


「とりあえず、昨日の残りのカレーね。これで足りる?」


「ん、大丈夫。ありがと!」


祖母が作るカレーが俺は大好きだ。いや、カレー自体が好きなこともある。1週間カレーだけと言われても歓喜する自信があるほど好きだ。その中でも、祖母が作るカレーは特に好きだった。


俺は、出されたカレーに少し醤油をたらし、頬張った。

うん。おいしい。うまい!


「やっぱし、ばあちゃんのカレーは最高だね!」


「ふふふ、ありがとう」

少し照れた表情を見せながら、祖母は返した。


俺の家は、俺・双子の弟・父・父方の祖父母の5人家族だ。

俺と双子の弟は今年受験生。と言っても、俺はすでに推薦で決まっている。

父と同じ教師になるんだ!そのためにも、決まった大学先では今までさぼってきてしまった勉強を頑張るつもりだ。

弟は、看護師になるために専門大学を狙っている。

父は先ほどの通り教師をしている。高校の数学教師だ。

父の教える数学はとても面白く、俺も将来こんな教師になりたいと、本気で尊敬している。

祖父はもうすぐ80歳になるというのにいまだに野球をやっている。思えば、俺が野球を始めたのも祖父の影響だったな。ケガさえしなければ、俺もまだ野球を続けてたかもしれないな。

祖母は温厚で優しく、料理がうまい。祖母が作るものは何でも好きだ。一番好きなのはやっぱりカレーなんだけどね。


「ごちそうさま! 今日もおいしかったよ!」

食器を片付け、俺は洗面台に向かう。


うわぁ……すごい寝癖。ちょっと伸ばしすぎたかもな……

俺の髪は父に似て直毛で少し硬い。そのためあまり短くするとハリネズミみたいになってしまうのだ。だから、いつも少し長めにしておくのだが


「今回は、伸ばしすぎたな。」


寝癖がほぼスーパー〇イヤ人のようになっている。

少しため息をつき、頭を洗い流し寝癖を直す。

ワックスをつけ、髪形を整える。


「よっし。こんなもんかな。」


髪形を整え、俺は自室に戻りラジオに行く準備を始める。

今までは推薦のため、ラジオにへ行けなかったため、今日のラジオは久々で、しかも新しいメンバーが来るとなると楽しみで仕方なかった。

いつものように、黒いジーパンにしろのYシャツ、その上に黒いカーディガンを着て黒いパーカーを羽織る。


「うっしゃ。んじゃ、いってきます!」

元気よく家を出る俺に


「気を付けて行ってらっしゃい!」

と、祖母が声をかける。


俺は、駅まで走っていった。楽しみで仕方なかったのを抑えられなかったのだ。

電車の時間より少し早く着いたため、売店で飲み物とガムを買って一息ついた。


「今日、どんな子がくるんだろうな。なかよくなれるといいな。」


楽しみと不安とが混ざる中、駅に着いた電車に乗り込み、ラジオ局へと足を運んだ。



久々に来たラジオ局。実に3か月振りだった。勉強に専念するからと言って休みをもらったのは8月からだ。8~11月は丸丸来ていなかったから、少し懐かしい感じさえした。


「お久しぶりです!圭先輩!合格おめでとうございます!」

そう、声をかけてきたのは一つ下の後輩の瑠香だ。

俺がラジオに参加し始めたころからずっと仲良くしている女の子。人懐っこくて、まさに後輩って感じがする子だ。


「おぉ!ありがとう瑠香。」

俺がそう返事すると


「おめでとうございます!」「おひさしぶりですね!」「面接どんな感じでした?」「小論文できましたか?」

と、ほかの後輩たちが次々に迫ってきた


久々だから、なんだかこんな感じがうれしかった。


「お。圭じゃん!受験お疲れさま!まってたよw」

一人、俺にタメ口で言ってきたのは同級生の悠だった。


「おう!久しぶり悠。そっちは就職内定めっとさん!」


悠は工業系の高校に通っていて、そこでいくつも資格を取っていた。そのため就職には苦労しなかったそうだ。

悠とはラジオを始めたころからずっと仲が良かった。悠とは趣味も性格もそこまで合うわけではないが、一緒にいて楽しいやつだ。


「さて、そろそろ今日撮るラジオの内容を決めるぞー」

話を切り出したのは、この高校生のみでラジオを作るという企画を立ち上げた征道さんだ。


征道さんは実際にこのラジオ局で働いていて、様々な番組のADをやっている。もちろん、俺たちのラジオのADもやってくれている。


「あ、そうだ。内容の話し合いの前に新人さん紹介するぞ。」


お、そういえば新しい人来るんだった。完全に忘れていた。


「さ、挨拶して」と征道さんはその新人さんに声をかける


「はい!瑠香さんから誘われて、このラジオに参加しました、碧唯です。知らない人と話すのは苦手なんですが、瑠香さんがやっているのを聞いてやってみたいと思いました。これからよろしくお願いします。」


とてもいい声だな、と思った。

髪はショートで黒髪。身長は少し小さめ。瑠香よりは少し大きいくらいかな。

なんか、仲良くなれそうだな。


「よろしくね!」


みんなが、笑顔で碧唯をメンバーに迎えた。


この日の収録は、いつになく楽しかった。やはり、久々ということもあったんだろう。

ラジオ収録後には、合格祝いといって悠が近くの飲食店で晩飯を奢ってくれた。その時に瑠香と新人の碧唯も同席した。

4人で受験期間中にラジオであったことや、俺の受験体験、碧唯が学校では吹奏楽をやっているなどいろいろな話題に花を咲かせた。


帰りの電車の中で、LINEのラジオグループに参加した碧唯を早速友達追加した。


「今日ラジオで一緒になった圭です。今日は本当にありがとう。楽しかったです!残り少ない期間ですが、よろしくお願いしますね。」

と、送信した。

思いのほか、既読は早く付き、返信も早かった。


「こちらこそ!とても楽しかったです。残り少ないですが、よろしくお願いします!」


うん。いい子だ。

この子とは、仲良くやっていけそうだな。次の収録も楽しみだな。


俺は電車で一人、にやにやしながら帰宅した。

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