第7話 ブサイクロボは強かった!
「ビルドステッカーッ!」
取り出した手のひらサイズの一枚のステッカーが、ジャステッカーの音声入力によって5メートル四方の超大判サイズに拡大する。
ジャステッカーはそれを投網のように広げてブサイクロボに覆いかぶせた。
「うががががーーッ!」
動きを封じられたブサイクロボがくぐもった声をあげた。
「ジャッジメントハンマー!」
構えたエレメンタルロッドの先端が巨大なハンマーに変化する。
「くらえ、正義の鉄槌!」
ジャステッカーが巨大ハンマーを振りかぶった、そのとき――
「うがーーッ!!」
ビルドステッカーを引き裂いてハンビームがハンマーを粉砕した。
その衝撃でジャステッカーが後方にふっ飛ぶ。
ハンビームを発射した破れ目から指をかけたブサイクロボがビルドステッカーをびりびりと引きちぎり、再びそのごつい顔をあらわす。
ブサイクロボは鋭い眼光で地に伏したジャステッカーをにらむと、ダッと大地を蹴って突進した。
立ちあがろうとしたジャステッカーに強烈な頭突きを見舞う。
ジャステッカーが昏倒したところをブサイクロボが踏みつける。
まるで路地裏のゴロツキのようなケンカ殺法だ。
腹を押さえ、体を折り曲げたジャステッカーをブサイクロボはサッカーボールのように蹴りあげた。
ジャステッカーの体がバウンドして地面に転がった。
「いまだ、トドメを差せ!」
本多がブサイクロボに向かって叫んだ。
いわれるまでもないとばかり、M2の銃身が突き出て12.7ミリ弾がジャステッカーの体を引き裂いた。
「やったか?!」
辺り一面に立ち込めた弾幕が風に吹かれて晴れてゆく。
本多の期待もむなしく、そこにあるのはぼろ布と化したマントだけだ。
「クソッ、ヤツはどこに消えた?!」
本多が辺りをきょろきょろと見回す。
「上だッ!」
金山が上空を指さした。
宙高くジャンプしたジャステッカーがエレメンタルロッドを振りかぶり、ブサイクロボの頭部に叩きつけた。
ごつい顔にひびが走る。
だが、ブサイクロボは頑丈だ。ジャステッカーの首を両手でわしづかみ、ギリギリと締めあげる。
「ぐ……う……」
仮面に隠れて表情はみえないが、宙をかく手足が苦悶をものがたる。
「いいぞ、そのまま首の骨をへし折れ!」
本多に命じられたわけではないが、ブサイクロボは地獄のネックハンギングでさらに高くジャステッカーを吊りあげた。
このままだと、扼殺は時間の問題だ。ジャステッカーは右足をブサイクロボの顔面に向かって蹴りあげた。
ブサイクロボが首をひょいと傾けてかわした。
「バカが、そんな攻撃が通じるものか!」
本多がせせら笑った、そのとき――
ドガッ!!
振りあげて戻した踵落としがブサイクロボの脳天に炸裂した。
「ぐおおおおおおッ!!」
ブサイクロボが奇妙なうめき声をあげた。
両手を離してジャステッカーを解放すると、頭を抱え、苦鳴をあげながらのたうちまわる。
「どうしたんだ、一体?」
本多が傍らの金山にきいた。
「度重なる頭部への攻撃で電子頭脳の一部が壊れたようだ」
金山が痛ましげに眉根を寄せていう。
ブサイクロボが四方八方にハンビームを乱射しながらジャステッカーとは反対の方向に向かって走りだした。
「完全にバーサーカーと化している。まずいぞ、これは」
「元々暴走モードだったろうが!」
本多が金山の独り言にツッコミを入れた。
「とにかく回収しなくては!」
金山がブサイクロボの後を追う。
「お、おい待て!」
と、追いかけようとした本多だが、ふと立ち止まり、後ろを振り返った。
ジャステッカーが地面に大の字になって倒れている。
これは千載一遇のチャンスだ。
本多の口の端が悪魔の角度に吊りあがる。
額の真ん中がモコモコと盛りあがり、表皮を破ってねじれた一本の角が突きでてきた。
本多は人間の皮を脱ぎ、前世魔族の正体をあらわにした。
「ジャステッカー、おれがこの手でトドメを刺してやる!」
本多が背広の内ポケットから、隠し持っていた刃渡り20センチのサバイバルナイフを抜いた。
ジャステッカーは完全に気を失っている。
残忍な本性をさらして本多はべろり、刃先をひとなめするとジャステッカーに向かってゆっくり近づいてゆく。
危うしジャステッカー!
立ちあがれジャステッカー!
つづく
やあ、今回のジャステッカー、どうだった?
ピンチの連続でハラハラしたね。ジャステッカーは一体、どうなってしまうのかな?
さあ、次回もみんなで読もう!!