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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第4部 ビギニング! 戦士の誕生
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最終話 龍魔王の復活



そして現在――


龍国総領事館の大ホールに日本を代表する売国ビッグ5の面々が参集していた。


アカヒ新聞社主 赤陽根津三あかひねつぞう


日呆労(渋谷公共国営放送労組)中央委員長 村中哲郎むらなかてつろう


赤弁連会長 宇都宮幻痔うつのみやげんじ


民貧党(民衆党改メ)代表 蓮砲れんほう


日狂組総書記 石越東馬いしごえあずま



時刻は深夜2時。それぞれの団体が設けた龍連部(龍国中央対外連絡部)ホットラインからの直接の呼び出しであった。


「一体、なんの用かしら、こんな夜更けに……」


吊りあがった剣呑な目が特徴のショートカットの女がぼやいた。民貧党の代表に就任した蓮砲である。


「さあな、都知事選の失敗でも責められるんじゃないか」


「せっかくの分裂選挙だったのに、なんであんなやつを立てたんだ」


「党内の反対を押し切って病み上がりのイロボケ老人を担ぎだすとはね」


 赤陽も村中も宇都宮もここぞとばかり民貧党のセンスのなさを責め立てる。

蓮砲と仲のいい石越東馬は黙って苦虫を噛み潰すばかりだ。


「それは前任者にいってください。わたしの責任ではありません!」


細い首筋にくっきりと太い動脈をたてて蓮砲がわめいた。


「ご静粛に。私語は慎んでいただきたい」


いきなり背後から冷気を伴った声がかけられた。

5人の売国奴がいっせいに振り向く。


そこにいたのは血のような鮮烈な赤をまとった三人の紅衛兵レッドガードであった。

 三人とも頭部を深いフードですっぽりと覆い、眼孔と口孔だけを刻んだ黒い仮面をつけている。


「して、我らになんの御用ですかな」


売国ビッグ5を代表して赤陽根津三が紅衛兵にきいた。


「お喜びください。龍魔王の復活の刻がきました」


「おおっ、ついに、ついにあの方が復活なされるのか!!」


抑揚を欠いた紅衛兵の声とは対称的に、売国ビッグ5が揃って歓喜の声をあげた。

三人の紅衛兵のうち二人が左右に別れ、中央のひとりが背後を指し示す。

そこに鎮座するのは北金ぺきんの毛主席紀念堂にあるはずの毛沢山マオ・ズーシャンの冷凍保存カプセルであった。

この冷凍カプセルは日本のトウシバ製で、毛沢山の死後40年が経ったいまでも驚異の保存技術を発揮している。


「称えよ龍魔王――ドラゴン・マオ!」


紅衛兵が金属音のような声を発すると、売国ビッグ5の面々が揃って唱和した。


「ドラゴン・マオ!」


「ドラゴン・マオ!」


「ドラゴン・マオ!」


まだ40代(といっても後半だが)の蓮砲を除いて、みなインチキの毛沢山語録を読んで育った世代である。毛沢山を称える彼らの顔は揃って紅潮し、両の目から涙をあふれさす莫迦もいる。


ギシ……。


柩が軋むような音を発して冷凍保存カプセルのフタが開いた。

ひんやりとした白い冷気を伴って人民服を着た、樽のような体型の固太りの男が立ちあがった。


「おおっ、我らが偉大なる盟主、毛沢山主席!」


売国ビッグ5がいっせいにひれ伏し、復活した毛沢山を称揚した。


毛沢山――大躍進政策で自国民5千万人を殺し、文化大革命でさらに2千万人を殺した人類史上最悪の大虐殺者である。


毛沢山は冷凍保存カプセルの壇上から自らの足で降り立つと、大ホールの隅々にまでに響き渡るような大音声で布告した。


「刻はきた。日本占領計画を発動せよ!」


「ははーーっ!!」


売国奴たちは歓喜に討ち震え再び叩頭した。

民意を無視し、独善的な世論誘導を繰り返した日々が報われる刻がきたのだ。


同時刻――

北金ぺきんに龍華世紀壇と名付けられた円筒形の巨大なモニュメントがある。

その円形の壁には57個の升目があり、かん民族からはじまって台湾の高砂族にいたるまで、56の民族のシンボルが彫像されている。

そしていま、長らく空白のままとされてきた最後の升目が埋められた。

そのシンボルは日の丸。龍国労産党は日本を32番目の省に内定し、日本国民を龍華に属する倭族としてモニュメントに刻んだのだ。

かの国において日本占領はすでに既定のものとして認識された証左である。



時をさかのぼること1993年。

オーストラリア首相ポール・キーティングが龍国を訪れた際、当時の首相であったリホウは彼に対し、


「日本という国はあと30年もすれば消えてなくなるだろう」


と語ったという。

日本滅亡まで残された年はあと7年。


リホウの“予言”は現実のものとなるのであろうか?



戦闘市長ジャステッカー 完


戦闘市長ジャステッカーは今回で完結しました。ご愛読ありがとうございましたm(__)m

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