第27話 初陣! 黒衣の戦士
宇留川中央公園を臨む高台に人権警備隊を乗せた車両は到着した。
タイガーストライプの制服に身を包んだ隊員たちがいっせいに降り立ち、移動式架台に積まれた6連装ロケットランチャーを後部ハッチから引きずり出す。
弾頭にイペリット化学弾を搭載したロケット弾が装填され、砲台は風下である眼下の中央公園に向けられた。
「全弾装填完了しました!」
隊員のひとりが隊長である美織に報告する。
双眼鏡を覗き込んでいた美織はひとつうなずくと、
「全員、ガスマスクを着用せよ!」
鋭い声で命令を発した。
イペリット化学弾の発射実験――この実験が成功すれば、宇留川市の制圧は二日もあれば足りるだろう。
美織は片頬に固い笑みを漏らした。龍国のバックアップを得て、この宇留川をわたしは手に入れる。この地域に労産主義による理想社会を築くのだ。
ガスマスクを被った美織は右手を高々とあげた。
「イペリット化学弾、全弾発射――」
「待てッ!」
美織の発射命令を途中で遮る鋭い声。
ガスマスクを着用した人権警備隊のものすべてがその声に振り向く。
一同を見下ろす四阿の屋根に何者かが立っている。
深紅の仮面を被り、紫紺のマント、黒のラバースーツに全身を包んだ異形のものだ。
「何者だッ!」
美織が黒衣の者に向かって声を張りあげた。
「天にきらめく愛の星!
絶対正義ジャステッカーーッ!!!」
黒衣の者――ジャステッカーが名乗りをあげた。
「ジャステッカー?!」
人権警備隊員の間で困惑と動揺が広がった。
突如、出現したジャステッカーとは何者なのか?!
「エレメンタルロッド!」
ジャステッカーはマントの内側から銀水晶の長棍を取り出すと、警備隊の輪のなかに自ら躍り込んでゆくのであった。
つづく




