第23話 異母兄
「それはどういうことですか?
さっき妻子がいるとおっしゃったでしょう。跡継ぎなら正式な子供に継がせればいいじゃないですか?」
光太郎は市長の意外な「交換条件」に驚きながらも、“正式な”という言葉に力をこめて反発した。
舞鶴市長はやや顔をうつむけ、沈んだ声でいった。
「息子は死んだ。15年前にね」
「!!」
「高校3年のときだ。居眠り運転のトラックに轢かれたんだ」
「…………」
光太郎に返す言葉はない。存在も知らなかった自分の異母兄が亡くなっていた。そのことをどう捉えたらいいのか、正直かなしみは湧いてこないが、“父親”である市長の苦衷は察することはできる。
「慶太郎……というんだが、あのコはきみと同じ高校に通学していた。きみの先輩でもあるんだ」
「三鷹の……吉祥高校ですか?」
「ダンスが得意なコでね。自分でつくった創作ダンスに夢中になっていたよ」
「ダンス?」
――と聞いて、光太郎は眠っていた記憶の断片が掘り起こされる感覚を感じた。
「そこのキャビネットの書棚に写真立てがあるだろう。そこに写っているのがきみの“兄”だ」
光太郎はソファから立ちあがってキャビネットへ歩み寄った。
写真立てに写っている快活そうな少年をみた瞬間、光太郎は雷に撃たれたかのような衝撃を感じた。
「こっ…このひとは……?!」
10年前の、あの公園でのできごとがまざまざと脳裏によみがえる。
それは白日夢かと思われる空間で光太郎にうるるんダンスを教えてくれた“青いバンダナの男”であった。
つづく
無責任な言動を信じて後で激しく後悔するのは日本もイギリスも同じだなあ・・・と思ったりして(-_-;)




