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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第1部 暴虐の「平和少女」を打ち壊せ!
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第3話 完成! ブサイクロボ


金山福次郎はロボット工学の世界ではそこそこ知られた存在であった。

金山はいま、非常に満足していた。

ある勢力から送られた資金で、自分の思いどおりのロボットを造ることができたからだ。


「博士、頼んだものは完成したか?」


ノックもせずに背広姿の男がふたり、づかづかとラボに入ってきた。


金山は牛乳便の底のような丸型メガネをずりあげ、男たちをみた。


「なんだ、あんたたちか。ほれ、このとおり完成だ」


汚れた白衣の裾を翻して金山は被せてあったビニールシートを剥いだ。


そこには、身長3メートルの女の銅像があった。

おさげ髪に刺し子の野良着、野暮ったいモンペ姿からして戦前の少女を模したものとはわかるが、問題は顔の造形である。

 唇は分厚くエラが張り、目は陰険で、どうみてもオッサンが女装した姿としかみえない。


「なんだこれは、全然かわいくないじゃないか!」


「しかもデカすぎるぞ!」


男ふたりは口々に不満の言葉を吐いた。


「アイドルじゃないんだ。かわいくする必要があるか」


思わぬ不評に金山が口をキツツキのように尖らす。


「可愛い少女が迫害弾圧されてこそ同情が集まるんだ。こんなオッサンみたいなブス、ほっとけってなるだろ!」


「それは差別発言だな。人権にひと一倍厳しい天下のアカヒ新聞がそんな口をたたいていいのか、え? 上村さんよ」


上村と呼ばれた背広姿の男――アカヒ新聞の記者は同僚の本多記者を振り返り、肩をすくめた。


「だめだ、この男に美的感覚はない」


「まあいい。とにかく『平和祈念少女』像は完成したんだ。あとはこれを宇留川中央公園に設置するだけだ。さっそく手配するとしよう」


本多記者はスマホを取り出すと運送業者を呼び出し、運び出しの手配をした。


「しかし、勝手に公園に置いていいものだろうか?」


心配性の上村記者が眉間をくもらせる。一抹の不安は拭えない。


「議案が市議会を通ってからでもよくないか」


「労産党のウスノロ議員なんかに任せておけるか。こういうのは既成事実が大事なんだ。

 お隣の国では大使館前に像を置いてるだろ。明確なウィーン条約違反だが、だれもなにもいわない」


「それもそうだな。市がなんかいってきたらプロ市民を集めてシュプレヒコールさせればいいか」


「そういうことだ。おい、例の機能はバッチリ取り付けてあるんだろうな」


本多記者が金山に向かっていった。


「もちろんだとも。超高感度の集音マイクとCCDカメラを口元と額のホクロに取り付けてある。アカヒ新聞の悪口をいう市民がいたら、そいつの顔写真つきでデータを本社に転送できるようセットしておいた」


アカヒ新聞は批判を許さない。

 批判を口にするものがいたら密かに拡張員を派遣してそいつの家に火をつけてしまうのだ。


運送トラックのエンジン音が響いてきた。

上村と本多の両記者は不細工な少女像を見あげるとニヤリ、この上もない邪悪な笑みを交わすのだった。


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