表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第4部 ビギニング! 戦士の誕生
35/65

第1話 真夜中のコール


これは舞鶴光太郎が、まだ白坂光太郎であったころの物語――。



強烈なリターンショットを相手コートの左隅に決めて、白坂光太郎しらさかこうたろうは夏の大会における男子シングルスの出場権を勝ち取った。


「完敗だ。おめでとう」


相手プレーヤーの城島渡じょうじまわたるがネット越しに右手を差し出してきていった。


「ありがとう」


光太郎と渡ががっちりと堅い握手を交わすと、二人は互いの健闘を称えあった。


「なあ、女子のコートを見にいかないか?」


部室へもどろうとした光太郎を渡が呼び止める。


「気になるだろ? 彼女の様子」


「うん……まあ」


光太郎はなんとなく気乗り薄だ。


「いこうぜ。おまえの顔みたら美織も頑張るって」


渡は半ば強引に光太郎を引きずるようにして女子のコートに向かった。


東京都三鷹にあるここ吉祥高校は都内でも有名なテニスの名門校である。将来はウィンブルドンや全米オープンを目指す生徒たちが全国から集まってきている。

そんななかで学内選考会を勝ち抜き、大会に出場することは至難の業であった。光太郎は早々と出場権を獲得したが、光太郎と同じ有望株の北条美織ほうじょうみおりはここ最近ショットが乱れ、調子を落としていた。


「もう、はじまってるな」


女子のコートでは一方的なゲームが展開されていた。

美織はすでに第1セットを落とし、つづく第2セットも5−2と敗色濃厚になっている。

動き出しが遅く、テークバックがおおきくなってつまらないミスショットを連発するその姿は、かつての美織にはみられなかったプレーだ。

美織も光太郎と同じ3年生だ。夏の大会を逃せばもう、公式の大会はない。

負ければひと足早い引退を決められたも同然であった。


「苦戦してるな」


渡がぽつりといった。

苦戦なんてものじゃない。光太郎の目には美織がテニスそのものを忘れているとしか思えなかった。


「なあ、ここだけの話だけど……」


渡がさもいいにくそうに口を開いた。


「美織の家、かなりヤバイようなんだ」


「ヤバイ?」


「おれの親父、信金の貸し付け係やってんだけど、美織の家、抵当にとられてるんだってさ」


「ッ?!」


初耳だった。最近、様子がおかしいと思っていたら家の事情がからんでいたのか。


「聞いてないか、美織から」


光太郎は首を振った。


「まあ、いえないよな、恋人には……」


渡がつぶやくようにいう。


「ゲームセット、ウォンバイ竹中、ゲームカウント6to2」


主審が相手プレーヤーの名をコールして美織の大会出場権は消失した。

負けた美織に笑顔はなく、結果を当然のように受け止めてバックにラケットを仕舞うと足早にコートをでてゆく。

光太郎がその姿を目で追っていると、脇腹を渡に小突かれた。

目が『声をかけてやれ』といっている。渡が顎をしゃくった。

光太郎は軽くダッシュすると、美織のもとへ駆け寄った。


「美織……」


「ごめん。ひとりにして」


美織が顔をそむけるようにしていった。


「今夜、電話するから……」


低い声でそういうと逃げるように駆け出してゆく。

光太郎はその背中を見送るしかなかった。

美織はいま、とてつもなく重いものを背負っている。

コートにいるときも、コートの外にあるものと戦っていたのだ。

詳しいことはなにもわからない。

でも、すべてを話してほしいと光太郎は思った。

その夜、光太郎は美織からの電話を待った。

しかし、いくら待っても美織から電話はかかってこなかった。


(今日は疲れて眠ってしまったのかもしれない……)


光太郎がそう思ってベッドに入った、そのとき――

光太郎の携帯が鳴った。

着信表示は『美織』。

時計の針は深夜2:00を差していた。


つづく


「ビギニング」はじまりました…というのも微妙な言い回しですが、光太郎がいかにしてジャステッカーになったのか? これは発端のお話です。ご期待くださいm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ