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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第3部 アカヒ新聞の逆襲! ジャステッカー抹殺指令
34/65

第10話 偽りの正義



「どうした? 投げれるものなら投げてみろ」


体長3メートルの巨人に変貌した五利の体はおそらく300キロを超えているだろう。背後をとって腰を抱えたジャステッカーだが、その場に固まってしまった。


「どうだ。投げれまい!」


「いや、それはどうかな」


なぜかジャステッカーが余裕の声で応じる。


「ムッ!」


五利は気づいた。ジャステッカーが地面に落ちた2枚のステッカーを両足で踏んでいることに――


「バウンドステッカーーーッ!!」


音声入力されたステッカーは五利を抱えたジャステッカーを宙高く跳ね上げた。


「きっ、貴様ッ!」


「おまえの負けだ、ニセジャステッカー!」


ジャステッカーは反転すると五利の頭を下に向け、縦軸方向にスピンした。


「ローリングシュートーーッ!」


ズガガガガガガーーーーン!!!


巨大なドリルとなって五利の頭部が大地に激突した。

地面は深くえぐれ、五利の巨体がクレーターの底に埋没している。

激突の衝撃で額の一本角は根元から折れ飛び、五利の体が縮みだした。

悪のエネルギー器官である角を折られた前世魔族は死から逃れられない。

 あるものは即死し、またあるものは徐々に衰弱して1、2ケ月を目処に地獄へもどってゆく。


ファンファンファン……。


サイレンを鳴らしながらパトカーがやってきた。

ジャステッカーは五利がせめて2ケ月生きることを望んだ。そうすれば公判にまで持ち込んで、ヤツの悪行を世間に暴くことができるだろう。


「ご苦労様です」


パトカーから降りた警官二人がジャステッカーに敬礼して、倒れている五利のもとに駆け寄る。


「よし逮捕だ。23:50分」


「23:50分、ニセジャステッカー確保!」


手錠をはめられた五利はまるで抜け殻のようだ。さしたる抵抗もなくパトカーの後部座席に放りこまれ、そのまま連行されてゆく。

多分、五利工場長は2ケ月も保たないだろう。留置所か拘置所のなかで死を迎えるに違いない。ゆえにアカヒ新聞の企みが公になることはないのだ。


「チャリクロン!」


ジャステッカーはバックパックを開いてクロスバイクを取り出した。引き上げようとサドルにまたがった、そのとき――


「?!」


周囲に異様な殺気を感じた。

いつの間にかジャステッカーの周りを工場の作業員たちが取り囲んでいた。

みな、目が血走っている。地獄のような長時間労働から解放された礼をいうわけではなさそうだ。


「おいっ、よくもおれたちの職場を奪ってくれたな」


作業員のひとりが目をつりあげて怒鳴った。

A4ラインにいた馬面の男だ。

まさに口火を切った格好だ。作業員たちが口々にジャステッカーを非難する。


「せっかくありついた仕事だったんだぞ!」


「これからどうやって食ってきゃいいんだ!」


「仕事を返せ!」


「返せよ、バカヤロー!」


ゴツッ、と音がして仮面に石を投げられた。


「なにが正義だ。この偽善者ッ!」


「おまえは悪魔だ!」


「死ねッ、悪魔ッ!!」


作業員たちが次々とジャステッカーに向かって石つぶてを投げてきた。

ジャステッカーは逃げた。

必死にペダルをこいだ。

文字通り職場を失った作業員たちが追いかけてきて、執拗にジャステッカーのマントに怒りの石をぶつける。

背中の痛みとともにジャステッカーは思い知らされた。

自分は正義の名のもとにこのひとたちの生活を奪ってしまった。

偽りの正義の仮面をつけていたのは自分自身だったのだ。

だが、この戦いをやめるわけにはいかない。

やめれば更なる災厄が人々を襲うだろう。

めげるなジャステッカー。

戦え、我らのジャステッカー!!



第3部逆襲編 完


タオヤメさんはひと足先に帰られた模様です(^^;

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