第9話 最強の巨人族
「おまえをこの手でぶち殺す!」
五利工場長は殺意もあらわにジャステッカーに向かって突進する。
ジャステッカーはひらり、宙に跳んで突進をかわすと鋭い蹴りを工場長の首根に見舞った。
だが、効かない。盛り上がった両肩の筋肉が首根の急所をブロックし、有効打にならないのだ。
宙を回って着地するジャステッカーに颶風のような拳圧が押し寄せてきた。
五利のストレートブローだ。
ジャステッカーは十字受けでブロックするものの、五利のパワーをまともにくらい、ふっ飛ばされた。
ジャステッカーの体がケヤキの幹に叩きつけられ、数本の枝葉が折れ散る。
9ミリパラベラム弾をくらってズタボロになったジャステッカーのラバースーツは衝撃吸収力が半減している。
両腕はじんじんとしびれ、意識がもうろうとした。
それでも、なんとか立ち上がったところへ、更なる衝撃が襲いかかる。
五利のショルダーアタックが炸裂する。
強烈なぶちかましをボディにくらい、ジャステッカーはプレハブ小屋の外壁をぶち破って内部へ弾けとんだ。
「よくもおれの職場を……」
文字通り職場を奪われた怒りがいまの五利工場長のパワーを増大させていた。
大股で半壊したプレハブ小屋のなかに足を踏み入れる。
壁やガラスの破片が散乱し、ロッカーが折り重なるようにして倒れている。
紫紺のマントの裂れ端が倒れたロッカーの透き間からみえた。
ジャステッカーが下敷きになっているのは間違いない。
「うおおおおおーーッ!」
五利は吠えた。
吠えてロッカーごと踏みつける。
ガシャン、ガシャン、ガシャン……!
折り重なったロッカーはたちまち鉄板のように薄く平たくなり、周囲に粉塵を舞いあげた。
五利の背後で残骸と化した工場がまだ火の粉を散らしている。
そのひとつが五利の肩に降りかかったとき、工場長は気がついた。
何度、踏み付けても血が流れてこないことに……。
「ロッカーに八つ当たりはやめるんだな」
その声に五利は振り向いた。
後ろにジャステッカーが平然と立っているではないか?!
「それはおまえのロッカーだろ」
「ッ!」
そうだった。ニセジャステッカーのコスチュームをこのなかに放り込んだのはおれだ。透き間にみえたのはおれのコスプレ衣装だったのだ。
「貴様ッ、警察に逃がしてもらったのか?!」
五利が憤怒の目でジャステッカーをにらみつけた。
「そうだ。おまえたちアカヒ新聞がどんなに策を弄そうと、ジャステッカーを疑うものはいない」
「権力の犬がッ!」
「前世魔族がなにをいう。
おまえたちはただの売国奴だ!」
「うおおおおおおーーッ!!!」
五利が再び吠えた。
猛烈な勢いでジャステッカーに向かって突進する。
「バナナステッカー!」
ジャステッカーが叫んだ。
つるッ!
氷上を滑るように五利がコケた。
その足元にはバナナの皮が――
派手な地響きをたてて五利が転倒する。
転んだ五利の周囲には数枚のステッカーが散らばっている。
ジャステッカーはそのなかの一枚に音声入力したのだ。
頭を打った五利がふらふらと立ちあがる。
ジャステッカーは五利の背後をとると、両腕をまわして腰を抱えた。
五利が頭を振りながらうそぶく。
「投げきれるかな、その細い体で――」
前世魔族の象徴である額の一本角が光った。
五利の体がさらに膨れあがる。
筋肉が膨張、増強し五利は3メートルを越す巨人となった。
「おれは一本角の前世魔族のなかでも最強を誇る巨人族だ。投げれるものなら投げてみろ!」
五利はまさしくゴリラのごとく胸をたたいてせせら笑う。
ズンと重みを増し、巨大な肉塊と化した五利を相手に、ジャステッカーは勝利をおさめることができるのであろうか?
つづく
冒険小説をよく読むが、アクション描写は意外とかったるかったりする。特に海外モノはその傾向が強く、うまく意訳してくれないかなあ、なんて思ったりして……(^^;




