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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第3部 アカヒ新聞の逆襲! ジャステッカー抹殺指令
31/65

第7話 怒りの潜入調査


ジャステッカーは、茂みのなかにいったん隠れると装着を解除し、ワイシャツにズボン姿の舞鶴光太郎の姿にもどってプレハブ小屋の一角に向かった。


幸い、小屋にはカギがかかっておらず、なかは無人だ。

そこはどうやら作業員たちの控室のようであった。

壁際に長方形のロッカーがずらりと並んでいる。

光太郎はそのなかのひとつ、カギのかかっていないロッカーを開けると、作業着を一枚拝借した。

網棚に置いてあるメガネケースを開け、セルフレームのメガネもしばし頂戴する。

髪をくしゃくしゃにしてメガネをかけ、鏡の前に立つ。注意深く観察しなければ市長であることはバレないだろう。


さえない作業員に扮した光太郎は工場の勝手口から内部に侵入した。

轟音をたてて輪転機がまわっている。

印刷機械を操作するオペレーターや断裁、製本の作業員たちがそこかしこで忙しく立ち働いている。どうやらここは印刷工場のようだ。


そのとき、ビー! というベルが鳴って作業員たちがいっせいに作業を中断した。

工場内に響き渡っていた駆動音が止んで辺りが静寂につつまれる。


「休憩に入ってください」

「休憩!」


各所で休憩を告げる声が響く。光太郎のいる1階のフロアでは五つの区画ラインに別れ、それぞれ作業員たちを束ねるチームリーダーがいる。


「休憩時間は5分」


光太郎のすぐ近くにある『A−4』と記された区画のチームリーダーが周囲の作業員たちに告げた。


「10分間じゃないんですか?」


作業員のひとりが疲れた顔をくもらせてきく。


「進行が遅れているんだ。5分休めるだけでもありがたいと思え!」


チームリーダーらしき男が口調を一変させて怒鳴った。


「やれやれ……」


質問した男はその場にへたりこみ、口をつぐんだ。無駄な体力は消費しまいと心に決めたようだ。

ここにいる作業員たちは全員派遣労働のバイトだろうか?

20代も若干混じってはいるが、30代から40代とおぼしき中高年たちが多い気がする。

みな生気を失い、表情は暗く閉ざされていて使い古されたロボットのようだ。


 光太郎はなにげないふうを装い、パレットの上に積み上げられた刊行物の一冊を手にとってみた。


『残虐日本兵、南金で百人斬り競争!』


『元従軍慰安婦の70歳女性、強制連行を国連で証言!』


案の定だ。アカヒ新聞発行の検定外教科書をこの秘密印刷工場で刷り上げ、日狂組の発言が強い学校現場で使用させていたのだ。


「あんた、なにしてんだ。勝手に読んだら怒られるぞ」


床にへたりこんだ作業員のひとりがいった。先ほど質問した男とは別の馬面の男だ。


「すみません……でも、デタラメばかり書いてあるから」


光太郎が馬面の男に向かって憤慨してみせた。


「そんなのどうだっていいんだよ」


馬面は怒る気力すらないとみえて力なく手を振った。


 しかし光太郎は怒りがおさまらず、持っていた検定外教科書を平手でパン、と叩いた。


「日本刀で百人も斬れるわけないし、70歳のおばあさんが証言したっていうけど、じゃあ当時は一体何歳なんですか? ツッコミ所満載だ」


「だからどうでもいいんだって……カネさえもらえりゃいいのさ。アカヒのデタラメぶりはいまにはじまったことじゃない」


「そうそう。こいつらは日本の悪口を書くことで金儲けをしているのさ。おれたちはそのおこぼれをもらうだけだ」


馬面の隣の蟹のような平べったい顔の男が同調する。


「でも……」


光太郎は納得できない。検定外教科書の最終ページには『土下座修学旅行の勧め。広島セララ高校につづけ』とある。

イギリスでもフランスでも長い植民地の歴史はあるが、教育の場でそれを悪だと弾劾してはいないし、『すみませんでした』とわざわざ現地に生徒たちを引率して土下座を強要するケースは皆無だ。


ぐしゃり。

怒りを制御できず、光太郎は手に持った検定外教科書を握り潰してしまった。


「おい、そこ。なにをしている!」


チームリーダーが光太郎の行為を見とがめてとんできた。

しまった! と思ったがもう遅い。


「おまえ、どこのラインだ? 見たことのないツラだな」


チームリーダーが光太郎の顔をのぞき込む。

光太郎が顔をそむけた。


「おまえ……どこかで……」


メガネをとろうと、光太郎の顔に向かって手を伸ばしてきた。

あやうし光太郎!

果たして光太郎はこの危機を逃れることができるのだろうか?!



つづく


ご声援ありがとうございます。この小説は朝〇新聞出版社から初版10万部で全国書店で一斉発売されることになりましたっ(オオウソ)(^^;

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