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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第3部 アカヒ新聞の逆襲! ジャステッカー抹殺指令
29/65

第5話 罠に落ちた英雄


ハゲ支店長を人質にとられたジャステッカーは身動きができない。

ニセジャステッカーが高らかに勝利宣言をしてあざ笑う。

――と、そのときだ、後方からヘリのローター音に混じって風切り音が聞こえてきた。


シュルシュルシュル……。


なにかが後ろから近づいてくる!

――と思ったときにはウージーを持つ右の二の腕が切り裂かれていた。


「痛ッ!」


ウージーを落とし、切り裂かれた二の腕を押さえる。


「逃げろッ、支店長!」


ジャステッカーにいわれて、ハゲ支店長は脱兎のごとくニセモノから逃げだした。両腕にボストンバックを大事に抱えながら。


「貴様!」


ニセモノがホンモノをにらむ。

ジャステッカーの手の中には戻ってきたくの字手裏剣があった。

ジャステッカーは名乗りをあげる前に、小型ブーメランの一種であるくの字手裏剣を飛ばし、ニセモノの背後から虚をつく作戦を立てていたのだ。


トゥ


給水タンクから飛び降りると、ジャステッカーはエレメンタルロッドをニセモノの仮面に叩きつけた。

ニセモノの仮面にひびが入る。

クラッシャーが外れ、黄ばんだ乱杭歯がみえた。


脳天に強烈な一撃をくらい、ニセモノががくんとひざをつく。


「ライトニングステッカーッ!」


ジャステッカーが蛍光色のステッカーをニセモノの胸に貼り付けた。


「ぐ…うう……ぬおっ……」


ニセモノが悶え苦しむ。

まばゆい光にあぶりだされるようにしてニセモノが正体をあらわす。

口元からは鋭い牙が生え、ひび割れた仮面の一部を突き破って一本の角が出現した。


「おまえも前世魔族だったのか!」


ジャステッカーがとどめの一撃を加えようとした、そのとき――


背後から何者かが凄い力でジャステッカーを羽交い締めにした。


「支店長!」


首だけねじ向けてみると、そいつはハゲ支店長であった。


「まんまと罠にはまったな、ジャステッカー。実はおれも前世魔族さ」


ハゲあがった頭頂部からはねじれた一本の角が生えている。


「おれの銀行をちょっと調べればわかることだ。龍華人民弾圧軍のフロント企業に不正融資していた口座があるはずだ」


「そうか、すべてはわたしをおびきだす罠だったのか!」


「今更、気づいてもあとの祭りだ」


ニセモノが足元に落ちているウージーを拾いあげた。


「さらばだ、ジャステッカー」


9ミリパラベラム弾を至近距離から全弾浴びせる。


「ぐわああああああーーーッ!!」


排莢がチャリンチャリンと乾いた音をたてて転がった。

ぐったりとなったジャステッカーをハゲ支店長は乱暴に突き飛ばす。

そのままうつ伏せに倒れ、ジャステッカーはぴくりとも動かない。


「……死にましたか?」


ハゲ支店長がニセモノにきいた。


「いや、まだだ。こいつがまとっている黒スーツは超弾性ゴム素材のバイオラバーだ。肋骨の一、二本は折れただろうが、命には別条はない」


ニセモノがウージーに新たな弾倉を装填する。


「ボストンバックをこいつの顔の横におき、札束を手に握らせるんだ」


ハゲ支店長がニセモノのいわれた通りにする。


「……しました」


「ご苦労」


ニセモノがハゲ支店長に向かってウージーを連射した。


「えっ……?」


角が根元から折れ、疑問の形に目と口を開いたままハゲ支店長は倒れた。

ニセモノは絶命したハゲ支店長のそばに屈み、その手にウージーを握らせる。


「おまえは奪われたカネを取り返そうとジャステッカーを撃った。そして名誉の戦死を遂げたのだ」


「警察が1階フロアに突入して制圧した模様です。もうすぐ、ここまで駆けあがってきます」


ヘリの操縦士がいった。この操縦士もアカヒ新聞を中心とする前世魔族の一味なのだ。


「あいつら、あっけなく踏み込ませやがって」


ニセモノが吐き捨てた。黒覆面の二人は路地裏でリクルートした不良どもだ。前世魔族ではなく、ただのチンピラである。


「これから、とっくりとこいつのツラを拝んでやろうと思ったが、まあいい、

逮捕されたら、アカヒが紙面に載せるだろう」


ニセモノがヘリに乗り込む。このヘリはアカヒ新聞がチャーターした報道ヘリなのだ。


カシャカシャカシャ……。


ニセジャステッカーはデジタルカメラを構えると、飛び立つ機内から倒れたジャステッカーとハゲ支店長の姿を記録媒体メモリーカードにおさめ、操縦士に進路を指し示した。


屋上に多数の警官が駆けつけ、ジャステッカーとハゲ支店長の周りを取り囲んでいるのがみえる。


「正義の仮面を被った悪のヒーロー逮捕!……フフフ、明日の見出しはこれで決まりだな」


ひび割れた仮面のニセモノはそううそぶくと、ヘリとともに西の空に姿を消すのであった。


つづく


肩の力を抜いて書き始めた本作だが、いつの間にか肩こりになっていた。なぜだろう( ;∀;)

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