第4話 人質を守れ!
人質をとり、銀行に立てこもった強盗一味は、逃走用のヘリとクルマを警察に要求した。空と陸に分散して逃げるつもりなのだ。
「おまえたちは包囲されている。速やかに人質を解放してでてきなさい!」
警官隊が銀行の玄関前を十重二十重に取り囲むなか、拡声器を持った刑事がテンプレな言葉を発して投降を呼びかける。
むろん、内部からはなんの反応もない。
警官隊の目からは、玄関口のガラスドア付近にひと塊となって座らされている人質たちの姿がみえる。
数にして20数人といったところか、無理に突入すれば、真っ先に犠牲がでるのはこの人質たちだ。
「こうなったら持久戦か……」
拡声器を持った現場指揮の刑事が思わずつぶやいた、そのとき――
バラバラバラバラ……。
ヘリのローター音が頭上から響いてきた。
「だれだ、ヘリを呼んだのは?」
現場指揮の刑事が傍らの警官にきく。
「いえ、本官はなんの連絡も受けてません!」
ローター音にかき消されまいと警官が大声を張りあげた。
ヘリは銀行がテナントとして借りている12階建てビルの屋上に着陸した。
刑事は不審な目で見上げると、至急確認するよう部下に命じた。
「ヘリが到着したようです」
目出し帽を被った覆面の男がジャステッカーの仮面をつけた男にいった。
強盗一味の人数は3人。覆面の男二人にジャステッカーだ。
「人質を見張ってろ」
ジャステッカーは覆面二人に命ずると、
「立て、ハゲ!」
頭頂部から後頭部にかけてきれいにハゲあがった中年男を立たせた。
「おまえはおれと一緒にくるんだ!」
札束の詰まったボストンバックを持たせ、襟首をわしづかむ。
「ど、どこへゆくんですか?」
「支店長!」
人質となった行員のなかから声があがった。
「黙れッ、騒ぐと撃つ!」
覆面の男がトカレフの銃口を行員に向ける。
支店長に声をかけた行員は貝になった。
他の人質たちもただ怯えすくむばかりで抵抗の兆しはない。
「安心しろ支店長、おとなしくしてれば殺しはしない」
右手に短機関銃ウージーを持ったジャステッカーは、支店長ひとりを人質にとると、エレベーターに乗り込んだ。
最上階の12階フロアから短い階段をのぼって屋上にでる。
ヘリはローターを回転させたまま、駐機している。
ジャステッカーは支店長の背中に銃口を突きつけ、ヘリへと向かわせた。
「待てッ!」
ジャステッカーと支店長の頭上から鋭い声が響いてきた。
二人が声の方向へ振り仰ぐ。
給水タンクの上に黒衣の者が立っている。
「おまえはッ!」
ジャステッカーが自分と同じ姿をしたものに向かって怒声を放つ。
「天にきらめく愛の星!
絶対正義ジャステッカーーーッ!!!」
紫紺のマントを翻した黒衣の者――正真正銘ジャステッカーが名乗りをあげた。
「きたな、ジャステッカー」
ウージーを持ったニセジャステッカーが余裕の態で笑い声を漏らす。
「動くなッ、このハゲ支店長が死んでもいいのか!」
ニセジャステッカーが支店長のこめかみに銃口を突きつけた。
「助けてくださいジャステッカー! わ、わたしには家族が、家のローンだってまだ残っているんです」
支店長が頭部をテカらせてジャステッカーに懇願する。
「くっ!」
ジャステッカーはその場を動けない。敵が銃を持っている限り、ビルドステッカーを被せることも危険だ。
「ぐわははは、おれの勝ちだ!」
ニセジャステッカーが高らかに勝利宣言をした。
どうするジャステッカー?!
ハゲ支店長の命と家族とローンを守れッ!
つづく
桜の季節に思うこと。花粉症さえなければなあ(*_*;




