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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第3部 アカヒ新聞の逆襲! ジャステッカー抹殺指令
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第2話 検定外は想定外


第2市長室へ降りた美由紀と光太郎を待っていたのはテーブルに平積みされた四六判の教科書の山であった。

タオヤメがいつもの胸の谷間を強調したフェミニンなファッションで現れる。


「これが牛塚ルートで手に入れたブツのすべてよ」


美由紀がそのひとつを手にとってパラパラとめくる。


「なんの変哲もない歴史の教科書のようだけど……あッ!」


美由紀があるページに目をとめ、声をあげた。そこには――


『日本軍、南金で30万人を大虐殺!』


『半島国家の各所で20万人を性奴隷として強制連行!』


アカヒ新聞が渋々誤報とみとめた『慰安婦』や龍国の反日プロパガンダである『南金大虐殺』が既成事実として掲載されていた。


「ひどい……これは……」


「検定外の教科書だな」


光太郎が裏表紙の隅に小さく印刷された『アカヒ新聞出版』の文字をみつけた。


「おそらく日狂組の発言の強い学校現場では、文科省の検定済みを使わず、この検定外を正規の教科書として使用しているのだろう」


「いわゆる『慰安婦強制連行』は証言した吉田濁次の虚偽が暴かれてますし、『南金』にいたっては、そもそも30万人ものひとは住んでいませんでした。死んだのは住民に扮した国民党軍のゲリラ兵であることが明らかになっています!」


美由紀が柳眉を逆立てて憤慨する。


「……わかっている。戦前の日本軍の蛮行を捏造することによって、国民に贖罪意識を植え付け、大陸や半島国家のいいなりにさせるのがヤツらの狙いだ」


「こんな間違った教科書で教えられているなんて……」


美由紀が悔しげに唇を噛んだ。

光太郎は教科書からタオヤメに目を移すといった。


「宇留川の公立小中高の各校で配布、使用されているとみていいんだな」


「そのとおりよ、若様。洗脳物質のダマシタールも検出されたわ。しかもアカヒ新聞の3割増し」


洗脳物質ダマシタールはアカヒ新聞が開発した合成麻薬である。このダマシタールが染み込んだ紙面を読んだものは、どんな荒唐無稽なウソ記事も真実と信じこまされてしまうのだ。


「……早急に対策を立てねば。タオヤメ、この検定外の教科書がどこで印刷されているか、突き止めてくれ」


「了解よ、若様」


タオヤメが胸をぷるんと震わせてエレベーターに乗り込み、秘密の出入り口に通ずる地上へとでていった。


「スパイにしては少々目立ちすぎるんじゃないかしら」


タオヤメの姿が消えてから美由紀が軽い非難の言葉を口にした。


「あの胸を強調した格好は視線誘導だよ。男にとっては有効だ」


光太郎がタオヤメを弁護する。

その態度に美由紀が眉をしかめた。


「市長にとってもそうですか?」


「いや…ぼくは……それほどでも……」


光太郎がしどろもどろになって言葉に詰まる。


「それほどでも?……たく、男ときたら、どいつもこいつも!」


美由紀がプンスカ怒ってエレベーターに乗り込む。


「おいおい、どこへゆくんだ。この教科書、データ入力してくれないか」


「ご自分でどうぞ!」


そういうやいなや、エレベーターのドアが閉まって、美由紀は本来の職場へと戻っていった。


「……やれやれ。女は扱いづらいな」


仕方ない、やるか……と、つぶやいて光太郎はひとり、第2市長室に閉じこもって検定外教科書のデータ入力をはじめるのであった。




「このアイスキャンデー、おいしいね」


「おいしいね」


団地の公園の砂場で小さな男の子が二人、母親からもらったアイスキャンデーをペロペロなめていた。

すると、そこへ――


「おい、そのアイスキャンデー、おれによこせ!」


ドスのきいた声でガニマタ歩きのジャステッカーがあらわれた。


「おじさん、だれ?」


「知らねえのか? おれは自由と平和の戦士ジャステッカー様だ!」


というが早いか、男の子二人の手からアイスキャンデーを取りあげてしまった。


「返してよう、ぼくのだよ」


「返してよう」


「ええい、うるさい、黙れッ」


ジャステッカーは左手に2本のアイスキャンデーを持つと、右手で仮面のクラッシャー(顎の部分)を外し、持っていたアイスキャンデーをなめる。


「おお、確かにうまいわ、これ」


「うえーん」


「うえーん」


「ちょっと、あなた、なにやってるんですか?!」


子供たちの泣き声を聞いてそれまで井戸端会議に花を咲かせていたママ友二人がとんできた。


「そんなヘンなカッコして、子供たちのアイス横取りして恥ずかしいとは思わないんですかッ!」


「警察に訴えますよ!」


ママ友二人がヒステリックにがなり立て、ジャステッカーに謝罪を迫る。

ジャステッカーはキレた。


「返しゃいいんだろ、ババア!」


2本の食いかけのアイスバーをママ友二人の口にねじこみ、砂場に突き倒す。


「ママーーッ!」


「うえーん!」


子供たちがさらに火がついたように泣き叫ぶ。

ママ友二人は口にアイスバーを突っ込まれたまま言葉を失っている。


「ハハハ、もっと泣け! もっとわめけ!」


ジャステッカーは、さも愉快げに哄笑をあげるとガニマタ歩きで公園から立ち去ってゆくのであった。



つづく


龍国は架空の大陸国家です。南金はその一地方都市であって、実在の「南〇」とは関係ありません(^^;

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