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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第2部 日狂組の野望を砕け!
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第6話 激闘! ジャステッカーVS狂犬巻枝



狂犬巻枝とジャステッカーの影が空中で交差した。

ビリッとなにかが裂ける音がしてジャステッカーが着地する。


「これはッ!」


ジャステッカーがマントの裾をみた。

強化アラミド繊維のマントが真っ二つに裂けている。

狂犬巻枝が犬の姿勢のままマントの裂れ端をペッと吐いた。

ガルル……とジャステッカーに向かって唸る。


(あの牙に噛まれたら危険だ)


ジャステッカーは一瞬怯む己を感じた。


ダッ!


巻枝が再び、地を蹴って飛びかかってきた。

ジャステッカーがエレメンタルロッドを下から突きあげる。


「なにッ!?」


巻枝は空中で方向を変えると、エレメンタルロッドの突きをかいくぐり――


がぶりッ!!


ジャステッカーの左腕に噛みついた。


前腕部は超弾性ゴム素材に加えて鉄鉱石を繊維化した高分子ポリマーに守られている。それでも巻枝の牙が積層構造の壁をぶち破って底層部に到達していることをジャステッカーは実感していた。


(いかん! このままでは左腕を噛みちぎられる)


ジャステッカーは左腕を振って土管に巻枝の体を叩きつけた。

土管が粉塵をあげて粉々に砕ける。

それでも、巻枝は噛みついた左腕を放そうとしない。


ジャステッカーはエレメンタルロッドを捨て、巻枝の額の角をつかんだ。

前世魔族にとって額の角は悪のエネルギーが詰まった重要な生命器官である。

巻枝は首を振ると、ようやく左腕から口を放し、前足と化した右腕でジャステッカーの体を突き飛ばした。


巻枝とジャステッカーの体が離れ、再び距離をとった。


グルル……。


巻枝が前よりも低い姿勢に構えた。

目は赤く充血し、だらりと垂れた舌先からはよだれがポタポタと垂れている。

まさに狂犬のそれだ。今度、左腕を噛まれたら、素肌に牙が到達してなにかの病気を感染うつされてしまうかもしれない。


ザシッ、ザシッ……。


四つん這いの巻枝が後ろ足と化した左足で地をかいている。

いつでも飛びかかれる態勢だ。


そのときだ、ジャステッカーの脳裏にひらめくものがあった。


(そうだ、巻枝に勝つにはこれしかない!)


ジャステッカーはベルトのサイドホルスターから一枚のステッカーを取り出した。


「ボーンステッカー!」


ジャステッカーが骨のマークが入ったステッカーを宙に放り投げた。

音声入力されたそれはたちまち、おいしそうなスペアリブとなって巻枝の後ろに飛んだ。


「わん!」


哀しい犬の習性か、おいしそうな骨付き肉をみると目の前の敵をわすれてしまうようだ。巻枝は体をひるがえしてスペアリブを追った。


「いまだッ、ビルドステッカー!」


ジャステッカーが超大判のステッカーを巻枝に覆いかぶせた。

投網を被せられた獣のごとく巻枝はスペアリブを目の前にして四肢の自由を失った。


「ジャッジメントハンマー!」


エレメンタルロッドの先端が巨大なハンマーに変化する。


トゥ


ジャステッカーは宙高く跳躍すると、巨大ハンマーをビルドステッカーの上から叩きつけた。


「ぎゃいん!」


巻枝がまさしく犬のような悲鳴をあげた。

そして、ビルドステッカーに刻印される『滅』の文字!


「正義調印! 悪滅決済!」


「ぐぎゃぎゃーーッ!!」


紅蓮の業火につつまれて日狂組の悪の狂師は消滅した。


ヒュウウウウウウ……。


戦いが終わって一陣の風が吹いた。

ジャステッカーはベルトのホルスターから3枚のステッカーを取り出した。

3枚のステッカーにはそれぞれ違った少年のイラストが描かれている。


「バリアブルステッカー、リコード!」


音声入力されたステッカーがそれぞれの少年を実体化させた。

巻枝によって自爆テロの道具にされた石川亮太、佐藤敦、鈴木賢介の三人の子供たちだ。


「あれ、ぼくたち、どうしてここに?」


「あっ、ジャステッカーだ!」


「ジャステッカーがぼくたちを守ってくれたんだね」


ジャステッカーは宇留川市を守る伝説のヒーローとして子供たちの間で強く信じられている存在だ。


「本当にいたんだ……」


「ありがとう、ジャステッカー!」


「ありがとう!」


子供たちから憧れと感謝の眼差しでみつめられ、ジャステッカーがゆっくりとうなずく。

あのとき――

光太郎は傾眠作用のあるジュースを子供たちに飲ませて眠らせると、それぞれの体からC4爆薬と信管を外した。

 つづいてバリアブルステッカーのなかに子供たちを縮小化しておさめ、アプリカード内に保護。その後、スピーカーから爆発音を響かせ、黒煙を焚いてスプリンクラーを誤作動させたのである。

すべては巻枝を油断させ、黒幕をあぶりだす作戦であった。


「きみたちを死に追いやろうとした教師は永遠・・に退職した。明日から安心して学校にいきなさい」


「はい! そうします」


「さよなら、ジャステッカー!」


「さようなら!」


「気をつけて帰るんだよ」


ジャステッカーは手を振って子供たちと別れた。



「やはり、黒幕は置石議長でしたか……」


土管の影から北条美由紀があらわれた。

美由紀も巻枝をこっそり尾行して置石西造との通話をきいていたのだ。


「どうします? 置石も始末しますか?」


美由紀がノンフレームの眼鏡の奥を光らせてジャステッカーにきく。その瞳の底には抑えきれぬ怒りの炎が渦巻いている。


「いや、ぼくに考えがある」


「考え?」


プシューッ、と圧搾空気を漏らして仮面の前後を割ると、光太郎はジャステッカーの仮面を脱いだ。


「もう少し芝居をつづけようじゃないか」


珠の汗を光らせて光太郎は笑みを浮かべた。


  つづく


ジャステッカーのスーツの素材のイメージはバットマンスーツです。あの無骨さがなんかいいですね!(^^)!

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