第1話 悪の編集会議
ここは築地にある悪の総本山、アカヒ新聞社屋13階の大会議室。
外国勢力と結託し、日々日本を貶める記事を捏造する悪の編集会議が今日も開かれていた。
「『平和祈念少女像』の設置計画は進んでおるのか?」
左右に居並ぶ幹部社員たちを前にして、アカヒ新聞社主・赤陽根津三が胴間声をだした。
「そ…それが、ジャステッカーと名乗る、か…仮面の怪人に阻止されてしまいました」
下座に立たされた社会面のデスクが、顔からしたたり落ちる滝のような汗をハンカチで拭いながらしどろもどろになってこたえた。
「ジャステッカーだと?!」
「本当にいるのか?」
上級幹部の間から驚きの声が湧き起こる。
「ジャ…ジャステッカーなる仮面の怪人は確かに存在いたします。今月だけでも第一編集局の記者8人がヤツに倒されました」
「して、その正体は?」
押し殺した低い声で赤陽社主がきく。
「わかりません。すべては謎につつまれており、神出鬼没の怪人としか……」
「我らを魔界の闇につつめ!」
赤陽社主が鋭い眼光を放って脇に控える美人秘書ふたりに命じた。
美人秘書たちは分厚いカーテンで窓を閉ざし、いっさいの光を遮断した。
空間の軋む音が響き、異空の闇が混じりあう。
すえたような悪臭が充満し、幹部社員たちは恍惚の表情を浮かべると、人間の皮を脱いだ。
居並ぶ幹部たちの額の両脇や側頭部から一対2本の角が生えている。
アカヒ新聞の主だったものどもはみな、前世魔族だったのだ。
本来の姿を現した部下たちを前に赤陽根津三が立ちあがった。
ヤツの側頭部には一対2本、そして額の中央部に男根のような形の角が一本、計3本の角が生えている。
前世魔族にとって角の数は権威の象徴である。三本角の赤陽は指導者の地位にある上級魔族なのだ。
「我らの聖なる呪文を唱えよ!
ゴケン、ジンケン、キュージョー、ヒブソー、チャイ!」
「ゴケン、ジンケン、キュージョー、ヒブソー、チャイ!」
幹部社員たちがいっせいに唱和する。
「ジャステッカーの正体を暴けッ!
そして一刻も早く、宇留川中央公園に『平和祈念少女像』を設置するのだ。
我らが偉大なる龍魔王のために!」
「我らが偉大なる龍魔王のために!」
「ゴケン、ジンケン、キュージョー、ヒブソー、チャイ!」
意味不明の呪文を数度斉唱して悪の編集会議は終わりを告げるのであった。