第2話 標的は市長!
舞鶴光太郎は宇留川中央公園の献花台に白百合の花束を供えると、長い黙祷を捧げた。
「市長、そろそろ公務におもどりください」
北条美由紀の声が背後から届いてきた。
「もう少し待ってくれ」
光太郎はスーツの内側から慰霊のステッカーを取り出すと、血痕の残った地面に貼った。
ひざまずき、鎮魂の経文を唱える。
慰霊のステッカーは地面に溶け込むように透明化してゆき、やがて見えなくなった。
「ご自分を責めるのはおやめください。市長は精一杯、ご自分の“職務”を果たされました」
「それでもこうして犠牲者をだしてしまった。本当はあのロボットがあらわれる前から、ヤツらの企みに気づくべきだったんだ」
光太郎は美由紀を振り返った。
髪をアップに巻き上げた、いつも通りの濃紺のスーツ姿の美由紀がそこにいた。
ノンフレームの眼鏡越しにまっすぐ光太郎を見つめている。
「とにかく庁舎におもどりください。ご報告したい案件が山積みです」
「……わかった。もどろう」
光太郎と美由紀は公園の車止めに向かって歩きだす。そこに黒塗りのワゴン車を待たせてある。
「いいか、あの背の高い男が市長の舞鶴光太郎だ」
献花台から少し離れた木立の下に、巻枝と3人の生徒たちがいた。
巻枝は市長公用車であるワゴン車に乗り込む光太郎を指さし、
「あいつが標的だ」
と、にらみつけた。
「え? それって」
父親が自衛官の石川亮太が聞き返す。
「市長をやるの?」
「そうだ」
あっさりとうなずく巻枝に、あとの二人、佐藤敦と鈴木賢介も驚愕の態だ。
ひるむ3人のおちこぼれ生徒に巻枝はいった。
「いいか、あの市長は教育委員会に圧力をかけて学校の式典に国旗掲揚や国歌の斉唱を強要しているんだ。こんなことが許されるか。日の丸の赤は血の色、国歌は主権在民に反する歌だ! そもそも国旗と国歌はだな……」
また、長々と巻枝の演説がはじまった。自分の意見や考えを一方的に押し付ける日狂組狂師の特徴をいかんなく発揮する。
余談だが、筆者の年配の知人は北海道出身で、小学生のころ、教師に北部半島国家の労働歌を歌わされたそうだ。もっともらしい理屈をつけて現在の国歌を否定しても、代わりに歌わされる歌がこれではお里が知れるというものだ。
「……そういうわけだから、あの舞鶴市長は抹殺せねばならん。計画はこうだ」
巻枝は3人を自分のもとにかき集めると、声をひそめて計画を明かした。
生徒たちの表情が次第にくもり、泣きださんばかりの顔色になってゆく。
そんな子供たちに巻枝はいい放った。
「おまえたちは偉大なる少年兵だ。崇高なる使命のために命を捧げる革命戦士となるのだ」
つづく
教師が問題を起こすたびに「こんな先生ばかりじゃない」という弁護の声が聞かれるが、問題教師を放置している体制そのものが問われていることにいい加減気づいてもらいたいものだ"(-""-)"




