第11話 苦い結末
ブサイクロボが龍国総領事館に突入した瞬間、耳をふさがんばかりの爆音が轟き、ロボの首だけが門外に弾き飛ばされ転がった。
龍国は日本政府のような甘い対応はしない。
館内に駐留している人民弾圧軍の特殊部隊が迷わずロケットランチャーを放ったのだ。
金山が首だけになったブサイクロボに歩みよる。
「ハラボジ、あんた、酔っ払うと日本の演歌を歌ってたよなあ」
首を拾い、孫は祖父を抱きしめた。
「本当の敵は目の前にいるというのに……ごめんよ、ハラボジ……」
熱い滴が首の上にしたたり、それは目の部分に垂れてロボの涙となった。
ジャステッカーはその光景を橋の上でみつめていた。
思いもよらぬ幕切れに傷の痛みも忘れてたたずむ。
――と、そのときだ、ひしゃげた門のなかから弾圧軍の兵士がでてきた。
ロボの首を抱えた金山の両脇を固め、館内へと連行してゆく。
「やめろ!」
ジャステッカーが駆け出そうとしたとき、仮面の内部で美由紀の声が響いた。
『間に合いません。あきらめてください』
先ほどとは打って変わった冷静な声だ。
美由紀は市庁舎地下深くにある第2市長室にもどって、ジャステッカーの動きをモニターしているようだ。
『無理に館内に突入すれば外交問題になります』
総領事館の内部は治外法権が認められている。
金山の処遇は龍国の自由裁量に任されることになるのだ。
金山は指導部によってブサイクロボの量産化を命じられ、それはまず南シナ海の各埋め立て基地に配備されるだろう。
平和を祈念したはずの少女の像が戦争の道具にされるとは、これ以上の皮肉な結末はない。
「ぐ……う……」
痛みがぶり返してきた。ジャステッカーは左脇腹をおさえると、再びチャリクロンにまたがった。
「美由紀、これより帰投する」
『宇留川中央病院の裏口を開けておきました。装着を解除してそこから入ってください』
「ありがとう、恩に着る」
ジャステッカーが来た道をもどってゆく。
ぼろぼろの体を引きずるようにして、傷だらけのヒーローは夕陽のなかに走り去ってゆくのであった。
つづく
北条美由紀役は大政絢さんにやってもらいたいなあ(だから映像化は無理だって)。




