第10話 本当の敵
ブサイクロボは出動した警官隊や機動隊を蹴散らし、大量の屍を築いて北上した。
いま、ロボの目の前には川幅50メートルの宇留川が滔々と流れている。
宇留川の対岸には宮殿と見まごうばかりの壮麗な建築物があった。
10万坪の広大な敷地にでんと居を構える大陸国家の総領事館である。
大陸国家の正式名称は龍華人民弾圧国――略称『龍国』。
CCDカメラの光学レンズをズームしてみると、前庭に龍国のかつての指導者『毛沢山』の銅像が立てられてある。
ブサイクロボの電子頭脳がヒートアップした。
ロボの記憶回路に当時の民謡が流れた。
♪♪イジムン河、遥か遠く
祖国を分かつ非業の河よ
だれがはじめた戦いなのか
鳥よ、故郷よ、こたえておくれ
ブサイクロボは川底に身をひたすと、ザブザブと水をきって渡河してゆく。
対岸にあがった。龍国総領事館は目の前である。
あの戦争での戦死者の数は南北併せて400万人。民間人だけでも130万人が犠牲になっている。
祖国統一を妨げ、大量の犠牲者をだしておきながら一片の謝罪もない。
また、祖国もそれを要求しない。
ブサイクロボは本当の敵がだれなのかを確信した。
「やめろ、ハラボジ(爺さん)!」
金山が橋を渡ってきて叫んだ。
ブサイクロボに祖父の人格をコピーしたのが間違いだった。
祖父は日本人が嫌いだったが、それに倍して龍国人が大嫌いだったのだ。
金山の制止も届かず、ブサイクロボがハンビームを総領事館に向かって放った。
派手な音をたてて毛沢山の銅像が粉々になる。
『チャンケソムミョル! チャンケマルサラ!』
ブサイクロボはブローニングM2を乱射しながら龍国総領事館の門扉を突破し内部へと乱入してゆくのであった。
つづく
おれ、こんなこと書いて殺されないかなあ(まあ埋もれているから大丈夫か)。




