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戦闘市長ジャステッカー  作者: 自由言論社
第1部 暴虐の「平和少女」を打ち壊せ!
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プロローグ

ついに解禁される禁断のヒーロー小説。

書籍化、映像化、絶対に不可能!

きみはこの笑撃に耐えられるか!?


                ①


日付が替わった深夜――

赤錆が浮いた廃倉庫にひとりの老婆が拉致されていた。

老婆を取り囲んでいるのは三人の背広姿の男たちだ。

男のひとりがペンシル型のボイスレコーダーを取り出し、老婆の口元に突きつけた。


「さあ、証言するんだ!

 若いころ、わたしは父親とともに憲兵に捕まって慰安所に送られたが、仲間とともに脱走し、宇留川公園の溜め池に潜んで官憲の目を逃れていた――と」


「冗談じゃない。確かにあたしの父親は党員で憲兵に引っ張られたけど、そのときのあたしはまだ5才だよ。慰安所なんかに送られるわけないじゃないか!」


老婆が首を振り、必死に抗弁する。


「あたしにウソの証言までさせて、あんたたち、なにを企んでいるんだい!」


「知れたこと。おれたちは宇留川公園に銅像を立てるのさ。モデルはおまえさんだ。題して『平和祈念少女像』。おまえさんは池のほとりに佇み、旧日本軍の残虐さを嘆き、世界の平和を祈って涙を流したことにするんだ」


「そんなデタラメ、だれも信じないよ!」


「それが信じるんだなあ。このおれたちの筆にかかれば」


「そうとも、愚かな大衆を騙すことなど簡単なものさ」


顎髭を生やした別の男が同調した。


「なんせ、おれたちは天下のアカヒ新聞の記者様だからな」


銀縁メガネの男が傲慢にいい放つ。

老婆にボイスレコーダーを突きつけていた男がさらにぐい、とマイクの先を押しつけた。


「さあ、証言しろ、ババア! 

 おまえの可愛い孫がどうなってもいいのか?!」


「孫? ま、まさか、あんたたち!」


「そのまさかだ。おい、連れてこい!」


縄を持った背広姿の四人目の男が現れた。縄の先にいるのは縛られた5才ぐらいの幼女だ。


「さやかッ!」


老婆が幼女の名を呼んだ。


「おばあちゃん!!」


涙交じりの声で幼女が叫び返す。


「孫の命が惜しければ証言するんだ。なあに、年代や場所の細かい矛盾点はおれたちがなんとかする」


「そうとも。捏造、歪曲は得意中の得意だからな、おれたちは」


「アカヒ新聞記者様の腕の見せ所ってやつよ」


ぐわっはっはっは!!

廃倉庫の天井にゲスな男たちの哄笑がこだました。

すると――

どこからかせつない音色の口笛が響いてきた。


「ん――?」


「見ろッ、あそこにだれかいる?!」


顎髭の男が天井の一角を指さす。

キャットウォークに何者かがうずくまっている。


「だ、だれだッ!?」


ゲスな男たち――アカヒ新聞記者の誰何に黒衣の者が立ちあがる。


「紫紺のマントに身をつつみ、赤い仮面に緑の目。

敵の攻撃はねかえす、ラバースーツが黒光る――」


朗々とした声が廃倉庫全体に響き渡り、天井の破れ目から差し込んだ月光が声の主を照らし出す。


「お、おまえは、まさか!」


黒衣の者はクロスさせた両腕を左右に振ると、左手を前に、右手を高く突きあげた。


「天にきらめく愛の星!

絶対正義ジャステッカーーーッ!!!!!!」




「ジャステッカー?! おまえが噂の!」


「本当にいたのか!」


アカヒ新聞記者4人が凝然と凍りつく。


「外国勢力と結託し、日本を貶めるアカヒ新聞記者よ、正体をあらわせッ!

ライトニングステッカーッ!!!」


黒衣の者――ジャステッカーは蛍光色のステッカーを4枚取り出してアカヒ新聞記者たちに飛ばした。


「ぎゃっ!」


「ぐえっ!」


「げやっ!」


「ごげっ!」


胸に張りつけられた記者たちは苦悶の表情を浮かべると、光り輝くステッカーにあぶり出されるようにして正体をさらけだす。


耳元まで裂けた口からのぞくおぞましい牙。目はきつく吊りあがり、額の中央からはねじれた一本の角が突きでている。


「正体、見たりッ! 前世魔族!」


ジャステッカーがアカヒ新聞記者の正体を喝破した。


「バ〜レ〜た〜か〜〜ッ!」


4人のアカヒ記者が唱和するように濁った声を発した。


「おまえたちに裁きをくだす!

エレメンタルロッド!」


エレメンタルロッドは銀水晶を棒状に高圧加工したものだ。

 ジャステッカーは真白に輝くエレメンタルロッドを振りかざし、キャットウォークから飛び降りると、幼女を人質にしたアカヒ記者の角を叩き折った。


「ぐぎゃっ!」


角を折られた記者がその場にうずくまり、塩をかけられたナメクジのように溶けだした。角は前世魔族の重要なエネルギー器官なのだ。


「さあ、ここから離れて」


ジャステッカーは幼女の縄を解くと、安全なところへ押しやった。


「動くなッ、ババアの命がどうなってもいいのか!」


ボイスレコーダーを持っていた男がそれをナイフの刃先に変えて、老婆の喉元に突きつけている。


「あたしのことはいいから、この外道どもを始末しておくれ」


老婆が悲痛な声をだし、ジャステッカーに向かっていった。


「こんな悪魔どもにいままで購読料を支払っていたなんて……。

あたしは自分のまぬけさに嫌気がさしたよ」


「ありがとう、おばあさん。おばあさんの気持ちは無駄にはしません。

ビルドステッカーーーッ!!!」


ジャステッカーは5メートル四方の超大判ステッカーを取り出すと、老婆もろとも覆いかぶせた。


「ま、待て、おまえ! それでも正義の味方か! 

 民間人を犠牲にするのか?!」


ビルドステッカーを被せられたアカヒ記者どもがくぐもった声をだす。


「ジャッジメントハンマー!!」


エレメンタルロッドの先端が巨大ハンマーに変化した。

 アカヒ記者のたわごとなど聞く耳もたぬとばかり、ジャステッカーは跳躍するとハンマーを打ちつけた。


「正義調印! 悪滅決済!」


ビルドステッカーに刻印される『滅』の文字!


「ぐぎゃぎぎゅうんわわわわーーッ!!」


アカヒ記者の断末魔の声が轟きわたり、ビルドステッカーがみるみるうちにしぼんでゆく。


「おばあちゃん!」


祖母の身を案じた幼女が駆け寄ってきた。


「大丈夫だ、ごらん」


しぼんだビルドステッカーの下から老婆が無事な姿で這い出てくる。


「このステッカーとハンマーは悪人だけに作用するんだ」


「おかげさまで助かりました。もう二度とアカヒ新聞は購読しません」


老婆がジャステッカーに向かって深々と頭をさげた。


「それが賢明です、おばあさん。彼らは前世魔族といって、人間に生まれ変わる前は魔界の眷属でした。この日本を混乱に陥れるためにアカヒ新聞に入社し日夜、捏造記事を書いているのです」


「ありがとう、ジャステッカー!」


幼女が元気な声で礼をいう。


「きみもおとなになったら新聞はちゃんと選んで読むんだ。景品に惑わされちゃいけないよ」


「うん。わかった」


「では、さらばだ。

――チャリクロン!」


ジャステッカーは紫紺のマントの内側から折り畳み式のクロスバイクを取り出した。このチャリクロンは悪をどこまでも追いかける正義の自転車なのだ。


スッシャーーッ!

チャリクロンにまたがり、ジャステッカーは廃倉庫の扉の外へ去っていった。


いつしか悪夢の夜は明け、さわやかな曙光が辺りを満たしている。

幼女は祖母に向かっていった。


「ねえ、おばあちゃん。

 ジャステッカーはなんでいちいち武器の名前を叫ぶの?」


「さあ、ひょっとしたら商品化をめざしているのかもしれないねえ」


老母と孫のほほえましい会話でこの事件は幕を閉じた。

だが、安心してはいけない。

悪のアカヒ新聞は今度はきみの祖父祖母をねらっている。

正議調印、悪滅決済!

負けるな、ぼくらのジャステッカーーーッ!!!




これは肩の凝らない娯楽作品です。特定の団体、国家、機関とは関係ありません。笑い飛ばしながらお読みください。

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