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僕の人生を変えた恋人11

コユキのデビュー戦は半馬身差の2着だったけど、後方で足を溜められれば、末脚を爆発してくれる事がわかった。


次は、どこを使うのかな?


凛ちゃんのブログには、やんちゃなコユキの弟君、ユキの2013の事が書いて有った。


子離れもうまくいったそうだ。


聞かん坊のくせに寂しがりやで、馬房に入れて行こうとすると泣くらしい。


あいつ、噛み付くからな。


ぶーニャンはユキの馬房に行くのが好きで、ユキと仲良くしている写真が載っていた。


ぶーニャンて、僕がつけたんだけど、変な名前かな?


うちの変な名前の子と言えばテツだよな。


リビングの窓の向こう、テラスの奥に、ライオンが飼えるような檻に入っているのが秋田犬のテツ。


本当の名前は、鉄五郎。


親父がつけたんだけど、五郎と言う名前の猫が強いので、強い子に育つように、鉄と五郎で鉄五郎。


五郎は、真っ黒な猫なんだけど、ケンカが強いんだ。


五郎と言う名前は親父がつけたんだけど、皆んなはゴロと呼んでいる。


ラブちゃんは、女の子だと思って母がつけた名前なんだけど、この子が太ってて、僕の友達には大人気なんだ。


でも、優しい子で、ケンカが弱くて…


ゴロは罠にかかったらしくて、手の先を無くして帰って来てからケンカはしなくなったんだけどね。


ラブちゃんが他の猫にやられてるのを助けに行ったりするんだ。


自分に引きつけておいて、ラブちゃんを逃がすんだよね。


もう年寄りだし、あんまりケンカはしなくなったんだけど、家族を助けるときは頑張るんだ。


やっぱり、ゴロは強い。


そんなわけで、秋田犬の名前は鉄五郎になった。


これが、散歩に行くと途中で歩かなくなっちゃって、抱っこなんだけど、仔犬でも重いんだよな。


今は大人になって、夜になると檻から出て家の周りを歩けるようにしてあるんだ。


しっかり番犬の仕事をしている。


10月20日、駿さんと薫さんに次女が産まれたと、連絡が有ったんだ。


秋華賞の時期なので、女の子が生まれたら、名前は華ちゃんと決めていたそうだ。


そして、10月の終わり、コユキは阪神競馬場で、芝1600m牝馬限定未勝利戦に出走する。


「これで勝ち上がれたら、華ちゃんは勝利の女神だね」ってメールの返信をした。



次に更新されたブログに、華ちゃんの写真が載っていた。


タイトルは「勝利の女神?」


未勝利戦はまだなのに、これは勝たなくてはね、コユキ。


【阪神競馬場 パドック】


コユキは、やっぱり少しチャカついている。


これで走るんだから、大人しい方が心配かもね。


【馬主席】


「おや、馬を1頭だけ持ってはる、なんやったかしら?葉月さんでしたかいな」


「こんにちは。ご指導頂いた通り、後2頭ほど買いました」


「そうでっか、たった3頭な」


「最後まで面倒みてやりたいので、あまり増やしたくないんです」


「これから走るんでっか?」


「ええ」


「勝てたらよろしな」


「有難うございます」


「ほな」


行ってしまった。


前に嫌味を言われた人って、今の人かな。


「美浦に預ければ良かったかしら?」


うちの親戚は殆ど関西に居るから、関西大好きなんだけどね。


お姉さんは、関西弁で嫌味を言われたら、ちょっと嫌だったかな?


東京と京都の馬主協会に入ったんだ。


「やっぱり、スタンドに行きましょう」


「うん」


【スタンド】


本馬場入場だ。


コユキが来た。


厩務員さんが放したら、弾けるように飛んで行った。


「今日は、かかってないな」


「なんの事?」


「かかる、って「引っかかる」ジョッキーの言う事を聞かないで、行きたがる事だよ」


「行きたがったらいけないの?」


「無駄にスタミナを消耗するからね」


落ち着いて輪乗りをしている。


ファンファーレが鳴った。


コユキは、少しゲート入りを嫌がったけど、なんとか入った。


ゲートが開きスタート!


「あっ!」


1頭出遅れ!


って芦毛…コユキだ。


またやった…


また出遅れだ。



出遅れと言えば、アドマイヤグルーヴのオークス。


桜花賞は、少し距離が短かったけど、オークスでは勝ってくれるだろうと思っていたら、大きく出遅れた。


本人(?)も「あ、やっちゃった」という感じだった。


慌てて馬群に追いつく姿が可愛いかったけど、結果負けてしまった。


あれだけ好きな馬だと、勝つ事よりも、とにかく無事に回って来てほしい、と思うだけだったな。


コユキは出負けしたけど、すんなり馬群の後方につけて脚を溜めている。


「今日は、一番後ろじゃないけど、それにしてもあんなに後ろで良いの?」


「牧場でも、一番後ろを走っていて、気がつくと皆んな追い抜いているような仔だったからね」


「大丈夫かしら?」


「見ている方は、ハラハラするよね」


スイープトウショウみたいに、馬群を割って行ければ良いんだけど…


4コーナー、ジョッキーは大外を回した。


まだ経験が浅いから、馬群に突っ込むのは避けたんだね。


直接に向いても、まだ後ろ…


かと思ったら、伸びて来た!


「コユキ!頑張れ!」


馬主席じゃなくて良かったよ。


やっぱり、大声で応援してしまう。


「もう少しよー」


1頭脚色が違っている。


大外一気!


届け!


「抜けた」


「勝った?」


「うん、勝ってる」


「本当?」


頭差ぐらいで勝っている感じだ。


掲示板が上がった。


「1着、17番」


「コユキは何番?」


「17番だよ、勝ってる」


「わー、本当?」


馬番を覚えていなかったらしい。


僕も、最初の頃はそうだったな。


誰が乗ってるとか何番とか、全然わからなかった。


ただ、彼女だけは、顔を見ればわかるから、彼女の姿だけを目で追っていたんだ。


アドマイヤグルーヴも、顔が小さくて美人な所はママ似だね。


彼女も、顔を見ればすぐにわかった。



「口取り行って来て」


「口取り?」


「コユキと一緒に記念撮影だよ」


【ウイナーズサークル】


コユキは「何でこんな所に連れて来られたの?何するの?」って、キョトンとしているのが可愛い。


お姉さんは、嬉しそうに口取りをしている。


僕は、写真を撮った。


凛ちゃんに送るんだ。


お姉さんは、恐る恐るコユキの鼻を撫でている。


「良い仔ね、頑張ったわね」


さっきまでキョトンとしていたコユキも、褒められて嬉しそうだ。


凛ちゃんに写メを送ったんだけど、中々返信が来ない。


「菱ちゃん、何食べたい?」


「お好み焼き」


「え?お好み焼きで良いの?京懐石とかじゃなくて?」


「本場のお好み焼き、美味しいだろうな」


「そうね、お好み焼きにしましょうか」


【お好み焼き屋】


と、言う事で、お好み焼き~


「菱ちゃんは、何にする?」


「僕は、豚玉~」


「ミックスは、イカが入ってそうね…じゃあ、私はエビ玉にしようかな」


ビールで乾杯だ。


初勝利は、アロース・コルトンのはずだったんだけど、新馬戦負けた日に呑んじゃったからね。


お好み焼きには、ビールが合うな。


「イカじゃないから、半分ずつね」


それで、エビね。


僕がイカアレルギーだから、半分ずつ食べられるように、エビ玉にしてくれたんだ。


「外がカリカリで、中がモチモチ。キャベツが沢山入ってるのね 」


「本場のお好み焼きは、美味しいね」


辛子マヨネーズが美味しいし、ソースも違うな。


「来て良かったわ」


凛ちゃんからメールが来ていた。


コユキの勝利に、牧場は大騒ぎになったらしい。


「うちで生まれた仔が中央で走るだけでも嬉しいけど、勝ってくれて皆んな大喜びよヾ(●⌒∇⌒●)ノ 」だって。


「華ちゃんは、本当に勝利の女神だね^ ^」と、返信した。


今頃は、牧場の人達も祝杯を挙げてるだろな…


と、思ったら、その様子が写メで送られて来た。


未勝利勝ちでこの騒ぎだ。


これが重賞だったりしたら、大変な騒ぎだろうな。



翌日の凛ちゃんのブログは、コユキの初勝利の記事だった。


僕が撮った写真が載っていた。


そして、全弟のユキの当歳にも期待がかかる。


勝利の女神、華ちゃんの可愛らしい写真も載っていた。


「華ちゃん可愛いね(≧∇≦)」って、凛ちゃんにメールした。


「本当に子供が好きなのね、早く結婚すれば?」と、返信が来た。


「相手が居ませ~ん(^◇^;)」と、返した。


「お姉ちゃんの事、好きなんじゃないの?」って、えっ?ええっ?!


これは、何て答えたら良いんだ…?


「好きだよ。舞ちゃんも凛ちゃんも」と、返信した。


他に答えようがないよな…


思いっ切り否定するのも舞ちゃんに失礼だしね。


好きって言っても、色々有るし…


僕はまだ、あの人の事が忘れられない。


でも、あの人にはときめいた事がないんだよな。


苦しいほどの恋だったけど…


ただ切なくて胸が痛かった。


魂が激しく求めたんだ。


そんな恋も有るのだと知った。


僕の方から好きになったのは初めてだったから、忘れられないのかな?


舞ちゃんと凛ちゃんには、ドキドキさせられるけど…


今はまだ、あの人のせいで、女の人は懲り懲りな感じなんだよな。


【菱の部屋】


今日は、慎二と毛針を作っているんだ。


カゲロウに似せて作るんだけど、僕は不器用で中々上手く出来ない。


「俺、今度北海道に行ったら、凛ちゃんに告白するぞ」


ええっ?!


「痛っ」


「あー、血が出てるぞ」


凛ちゃんに告白?


「俺が巻いてやる、貸してみろ」


紅茶を飲んで、落ち着け僕。


「お前は、舞ちゃんに告白しないのか?」


「ゲホッ」


「大丈夫か?」


「ゲホッ、ゲホッ」


僕が告白するの?


舞ちゃんに?



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