3.魔女と骸骨
あの狼に会ってから、訪問者が増えた。
特に人間社会に片足突っ込んだ奴等からの訪問だ。
そしてどいつもこいつも私のことを、“墓守骸骨”と呼ぶ。
正確には私が作っているんだけども。
どうやら冒険者ギルドなるところでは、私は噂話に出るくらいには有名となっているらしい。
気にはなるが、墓を離れるワケにもいかなければ、この姿で人間社会に溶け込めるはずも無い、加えて今の私は他の魔族と違って戦う術を知らない。
何をするにも準備不足だ。
さて、どうしたものかといつものように魔女の森を見回り、死体が無いかと歩き回る。
最近では活動範囲を少し広げ、魔女の森のほぼ半分くらいは歩き回るようにしている。
さすがに半分も回れるほど小さな森でもないので、ほぼ半分だ。
しかし今回は収穫なし、喜ばしいのかそうでないのかは良く分からないが。
素直に墓に戻り、手入れでもしようと考えていると、見知らぬ人影が中央の岩の上にいる。
何者だろうか?あの形は完全に人だが、今日は少し日照りのいいせいで上手く見えない。
私は墓に近づく、するとその人影は岩から降り、こちらに向かってきた。
おかげで確証が出来る。
人だ。しかも女性。しかしただの人ではない。
黒の帽子、ドレスのような黒色の服、そして箒。見た目からして完全にそれと言っているようなものだった。こいつは
「貴方が墓守骸骨さんかな?」
正真正銘、魔女だ。
「受肉すればいいのよ」
「(受肉?)」
「そう、受肉。元は神様が肉体もつ意味だけど魔族でもやること変わらないでしょ」
魔女は何か特殊な魔法で俺の思考を読み取り、会話を成立させている。
私は魔女に、自分がどんな状況下にあるか調べたいと相談を持ちかけると、今さっきの受肉という提案を出してきた。しかしそう簡単に出来るものなのか?
「簡単簡単。私にかかればね。しかも貴方人間の骨だし、やり易いかも」
「(是非頼めないか)」
全然OKと気前よく返事をしてくれる魔女。どうやら実験も兼ねているらしい。
しかしそこで魔女が気難しい顔をする。
「受肉だからそれこそ肉が必要なのよねー。何を媒体にするか・・・。埋めた死体の肉なんか腐ってるから使いたくないし・・・」
周りの墓を見てナイナイと考えを改める魔女。
確かに私も腐った肉で受肉は嫌だ。
「うん。じゃ、狩りに行きましょう」
「(狩り?何を狩るんだ)」
「ん?それは勿論。に・ん・げ・ん」
それもそうか、人間の骨に受肉を行うなら人の肉を使ったほうが早い。
しかしそんな都合よく人がくるのだろうか。
「ま、今回は私が狩りに行くから貸し一つって事で」
私がどうするか考えていると魔女はそれだけ言って飛び去ってしまった。
死体をかき集めていた私にとっては残酷な事しか想像出来なかったが、案外良いヤツなのかもしれないと魔女に対しての評価を考え直していた。