進入禁止
いてもたってもいられなくなった、僕は、すぐさま文庫本を持って玄関まで戻った。
どうして彼女がセンタータワーズのことを知ったのか分からない。
けど、 センタータワーズに行かなくては、その考えしか頭になかった。
本なんて、不確定な可能性にアイツは賭けたのだ。
僕はアイツの事は嫌いだ。
が、そんな不確実なやり方でも僕を必要としているアイツの言葉を蔑ろには出来ない。ぼくはへそ曲がりだ、あんな書き方したら行くしかないだろう・
僕は、GSRにまたがると、セルを回した。
…あいつが、どんな手段でセンタータワーズに向かったなんてわからない、けれどあの染みが乾いていないなら、時間は致命的なまで経過はしていない。
間に合わせるしか、ない。
水温は低いまま。
エンジンは痛めるが、所詮モノだ。
僕は、急発進で走り出した。
アクセルは全開。
法規速度は完全に無視していた。帰宅する車の流れを完全に無視して、先を急ぐ。
赤信号でも構わず突撃。対向車が目障りだが、強引なハンドルさばきとアクセルワークでかわしながら、先を急ぐ。
センタータワーズとは最近、オープンした高層ビルの名称である。
--何故、ここに、アイツが向かったのかなんて解りもしないが、行かねばならない。竹河が止めたに向かっているのだ、何が起こるか、わからない。
…もしかしたら、皆が言う【敵】とやらが来ているのかも知れない。
けれど、行かねばならなかった。
熊崎を死なせたら僕は、この思いをどうしていいかわからない。
道を、急ぐ。
僕は、加速を緩めなかった。
クラクションの嵐に、死にたいのか!なんて罵声も聞こえる。
しかし、気に留める暇も余裕もない。僕はただ、現状の速度を落とさないこと、そして目的地まで最短でたどり着くことだけを考えていた。
車間距離を縫うように、車線を次々と変えながら、センタータワーズを目指す。
目的のセンタータワーズ周辺への侵入は出来た。
…ただ、ここから先は渋滞が多くなり、歩行者も増える。ぶつけたり、轢いていては時間のロスだ。僕は歩道に向けハンドルを切ると、エンジンブレーキと、前後ブレーキによる急制動をきかせた。
わざとリヤタイヤをすべらせた僕は、シフトとスロットルに最新の注意を払いつつ、後輪を流す。
悲鳴のようなスキール音に仰天した、サラ―リーマンたちは僕の前に道を空ける。
もちろんこの時、ホーンスイッチから指を離さない。
僕はそうして生まれた道をバイクで走り、クラクションを鳴らしながら入り口を目指す。階段をバイクで強引に駆け上がった僕は、迫る自動ドアにぶつかる前に、左足を地面につけ、右足でリアブレーキを限界まで踏んで後輪をロックさせた。
強引に車体をターンさせて、ガラスを突き破った。
…ガラスをぶちまけつつ、炎上を恐れた僕はキルスイッチでエンジンを切りつつ、タワーズに突入した。
回転式の扉の残骸を抜けると、タワーズには、まだ多くの人間が残っていた。
だから、僕のような蛮行をした人間は自然注目を集める。
フロントの受付嬢など、単車で暴走して突っ込んできた僕をおびえた目で見ていた。防犯ベルは、まだ押されていないらしい。
…けど、僕はそれどころではない。
熊崎を止めなければ。
あの行動から考えるに、アイツは何をしでかすか解らない。
そして敵の襲来なんて危うい状況に、さきほどの竹川からの電話。
…彼女を捕まえないと!
そう僕が思っていると、いきなり正面玄関のシャッターが降り始めた。
「…?!」
どうなってる?!
そう思うより早くだ。
僕目掛けてではないが、人が降ってきた。
「!」
人が降るなんて普通はあり得ない。
降ってきた方を仰ぎ見ると、そこには槍を携えた人間がいた。吹き抜けの一階から三階までを繋ぐエスカレーターの中継系地点に立つ、坊主頭の男。
知らない男だ。
イレギュラーなのか、敵対する組織の人間かは判断できない。
---しかし、今は間違いなく敵だった。
梵字だろうか、一部分だけ髪を青く染めた男は、手槍を振りながら降りてくる。悲鳴はもちろん上がっているのだが、そのたびに奴は叫び声を上げた奴を突き殺しては投げ捨てていた。
…徒手空拳で挑める相手ではない。
コートのポケットに、最悪の手段を装備はしているが、武器がなければ意味が無い。僕は、咄嗟に逃げる群衆に溶け込むように、紛れ込んだ。