表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポストエッジ  作者: こいかわぎすけ
食らいつく獣をその手に
33/52

予感


 しかし、全身血まみれだ。

 惨殺した死体が転がる部屋は検分しているから、隣の部屋を探す。と、ダブルのスーツとコートを見つけた。サイズが微妙だが、とにかく着替えて、トイレで頭だけ洗うと、少しはマシになった。

 そして、ビルを出た。

 女は、後始末があるからと残った。

 僕は残ろうとも思わなかった。


 ホストみたいなトレンチコートとスーツを着て、僕は表に出た。

 あまり考えたくないが、人身売買の現場に居合わせたいとは思わないからだ。

「さむ…」

 知らない、街だった。

 そして、車も足もない、だから公共交通機関を利用して帰ることにした。

 家に帰るため、僕は電車の切符を買う。改札を抜け、人の少ないホームで電車を待つ。機構に電話をすれば、迎えをよこしたのだろうが、僕はどうも頼る気にはならなかった。


…菊花機構の目的は、マレビトの退治とは言っているが、本当だろうか?

 

 この組織が何を考えているのか、僕はよく解らない。

 僕はマレビト殺しの別に目的があると思うのだが、ここまで僕ら七支にそれを明かした事はない。そのことを見ると、機構は何を目的に動いているのやら。

 しかも、現在進められている草薙計画にしたって、54組(沢田と芹澤さんが含まれる)新造の応化儀杖と担い手で、何かをやっている程度しか僕はわからない。 

 制約が多く量産には向かない応化儀杖で行う、草薙計画とは何なのか?

 応化儀杖を使うには、色々な制約が付きまとう。

 例えば、武器と担い手の性別が一致すると契約が不可だとか、そもそも武器となり得る人材の確保が困難だとか。その他様々な問題が在る上に、かなりの時間が製作に必要となる。

 そこに魔術的な問題も含まれるらしく…

 一組作るのにも大変な労力が掛かるそうだ。

 

 ただし、その分、性能は折り紙つき。


 こんな僕が振るっても、熊崎はマレビト退治には覿面だから頷ける話だ。

 貨物列車が通過するらしい、そんなアナウンスが入る。

――けどさ、そんな素晴しいものでも、拳銃…いや自動小銃には絶対に勝てない。

 武器の強度や長さ、それと使い手の技量など、飛び道具の前には無意味だ。僕は拳銃相手には勝てたが、自動小銃等を装備した歩兵を相手に勝つ自信はない。

 現代において、刃こぼれしない、研ぐ必要がない刀は無用の長物だ。

 そんな白兵戦だけしか出来ない、魔法の道具なんて誰が求める?必要とする?

 マレビトを殺すため以外に、僕らは何の意味もない存在だと言うのに。


 けれど、草薙計画では、その無用の長物が重要な役割を占めている。

 それは何故か?


 重要なのは、契約して僕が出来るようになったことだろう。

 こうして、僕は熊崎と契約したわけだけれど、伝奇小説にお約束の、式神を操ったり、呪文を唱えて火柱!とかの、陰陽術や魔術が使える様にはならなかった。

 しかし、一朝一夕では習得できない剣術・体術を得たのは、紛れもない事実だ。

 ここから推測するに、草薙計画とは、契約すれば無双となれる剣を生み出すためではないだろうか?契約した瞬間、宮本武蔵、柳生十兵衛に匹敵する、剣士を生み出す魔法の剣…ではないか?

 だが、僕はこれでも納得できない。

 銃弾の時代に、白兵戦で最強を誇って何の意味がある?


 無意味じゃないか―――

 そう思った瞬間、目の前を貨物列車が走りぬけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ