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ポストエッジ  作者: こいかわぎすけ
食らいつく獣をその手に
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惨殺

 非常階段は使わず、正面から向かった。

 そして戸口を叩いて、扉が開かれるのを待った。

 重たいドアが、開くと同時に、僕は馬鹿正直に一太刀浴びせた。最期まで理解できなかったんだろうな、用心棒らしい大男は切り伏せられ、そのまま二度と立ち上がることはなかった。

 心臓を切り損ねたからだろう、血が大量に流れ出し床を染め上げる。

 そのとたんに、悲鳴が走った。

 なので、僕は意外に思った。

 唐突だったから、現状に理解できず何人かは凍るかと思ったのだ。だが、現実は予想とは違うらしい。ただ、悲鳴を上げた女とは裏腹に、男たちの対応は予測の通り素早いものだった。

 彼らは拳銃を携えていた。

 どうやら、僕か他の誰かの襲撃を見越していたと見える。

 拳銃を所持していること、荒事に長けていそうな用心棒を雇っていたのがその証拠だろう。

 だから、僕は内心焦った。


 拳銃を相手にするのは、コレが初めてだった。


 銃弾を斬るなんて絶技を、僕が出来るはずもない。

 銃口から弾道を推理するなんて器用なことも、無理そうだ。よって、僕は撃たれるより早く、僕は銃を構える奴の手首を切り棄てるしか、回避方法を思いつかなかった。

 銃を取り出したのが一番早かった男。

 そいつの手首を剣道のコテのように切り捨てる。骨ではなく、間接を狙ったのもあるが、難なく咎獅子は彼の手首を刎ねた。

 痛みに、彼は顔をゆがめ腕を抑える。

…だから、守りが手薄なんだよ。

 僕は返す刀で、切り上げを放ち、彼の上体を分解させた。

 鎖骨、胸骨、肋骨、その他もろもろの骨と臓器を切り裂いて、彼の上半身は切り取られた。真っ二つとはいかないが、拳銃持ちを一人殺した僕は、二人目を切ろうとしたと向きを変える。

 しかし、敵の発砲の方が早かった。

 聞いたこともない発砲音とほぼ同時に、ガラスの灰皿が背後で砕け散る。

 僕は弾丸が外れた僥倖に感謝しながら、そいつの喉笛を切り裂く。

 動脈を絶ったからだ、血飛沫が激しい。

 おかげで視界の一部を駄目にした。

 最期に残った構成員は、唯一冷静な様子で、視界を奪われた僕に発砲する。当りはしなかったが、ただの偶然か。鍔に弾丸が突き刺さり、すさまじい威力を与えただけで、僕の手を抉らずに終わった。しかし、当然、手から咎獅子は零れ落ちる。

 武器を落としたからといって、拾わせる馬鹿なんていない。

 奴はやたらめったら、発砲する。

 僕は、仕方がなく、すでに絶命し倒れている、切り捨てた二人目を踏みつけて越えて移動する。そのまま一人目の肢体を強引に持ち上げる。

 いくら拳銃とは言え、人体は中々貫通しないらしい。

 死体ごしとは言え、鉄材で殴られたかのように衝撃が走るが、腕を振るう阻害にはならなかった。発砲する奴の目の前まで、死体を押して突進した僕は、そのまま死体を突き飛ばした。

 いきなり盾を棄てたのには理由がある。

 弾切れを起こした敵の作業を中断させること、そして武器を拾う時間稼ぎだった。僕は、咎獅子を拾うなり、下段から一気に刀を振り上げ、胴に一閃を入れた。

「が、ぁ!」

 他の奴と違い、踏み込みが浅かった。

 だから絶命し損ねたソイツは、断末魔の叫びとやらをあげた。けれど、腹を割ってやったんだ、臓器が零れ落ちてくる。

 はらわたを戻そうとする姿が、見苦しかったから、僕は首を刎ねた。

 そうして、くるりと、振向くと腰を抜かしたホステスが二人残っていた。

…全員切れと言われていたか?

 思い出せないが、斬っておくべきか?

 僕は腕を振るったが、その迷いは、太刀筋を曇らせた。化粧を施したキャバ嬢は、自分の血を浴びて絶命する―――はずだったのだが、僕は斬り損なった。頭から両断するつもりだった一刀は、女の服を裂くにとどまる。

 多少、肌に切れ目が入ったが、血がにじむ程度だ。

「……」

 ふと見ると、彼女、涙と鼻水は垂れ流し、先ほどの恐怖のためか、失禁もしていた。

 当然か、目の前で何人斬ったと思っている。

 僕は事後処理を依頼するため、下で待つ、女の携帯電話を呼び出した。

 


 

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