直江の独白
2
僕は、くらすめーとに恋をしました。
彼女の名前は芹澤さん、こんな僕でも話しかけてくれる女の子。黒い艶々としたセミロングが、とっても似合ってる。お洒落な眼鏡をした子だ。ちなみに優等生。
劣等生の僕とは違ってる。
僕と彼女の出会いは、特別でもない。ただ、席が隣になったこと。今は離れてしまったけれど、その時はチョコチョコ会話できた。きっと、彼女の行動は社交辞令に過ぎない。でも、僕は彼女が話しかけてくれると嬉しくて、そんな彼女が何時しか気になっていた。
何時も、ボクに話しかけてくれる彼女の存在が、僕にはとても眩しくて。
いつしか僕は彼女に恋をしていた。
そう、恋だ。
こんな世界の片隅、ちっぽけな島国。その学校での、隅っこの、芽生えだって、恋は恋だ。僕の胸を熱くさせ、心臓が勝手に動く。つまりさ、彼女の事を考えてる僕が、いるんだ。
恋煩いで悩んだり、彼女の事を思う僕もいる。
嗚呼、恋ってなんて、素晴らしいんだろう!
けど、そんな僕にも不幸な事はある。……僕は元来、内気な性格だ。人と話すのが怖い。それに、僕の趣味はありふれたものなんだけど、外見の偏見で言われもない差別にいつもあう。
やり返したいけれど、暴力を振るう利点を見出せないから、結局僕は出来ずにいた。いや、喧嘩は売れる自信はある。しかし、ただでさえ悪い学校での評価を下げたくないので、喧嘩が出来ないだけである。
しかし何故だろう、僕は誰にも迷惑をかけていないはずなのにな?
そんな風に、僕を馬鹿にする奴らの、一番。
頭の悪そうな連中のボス猿、沢田。
奴も、芹澤さんを狙っていると言うのだ。
―――沢田は、嫌な男だ、勉強をしない僕と同じ馬鹿の癖に、喧嘩が滅法強い。いつも同じような馬鹿な仲間とつるんで、とっても馬鹿なことしている。喧嘩で勝った自慢を何時もしているし、モラルも低い。ゴミを平然と捨てるし、威張り散らしている感じだと思ってほしい。もっとも僕の偏見かもって思う。
そんな嫌な奴が、芹澤さんに告白しようとしている――僕は、それが気にいらなくて、苛立っていた。けれど、奴に対して色々考えると、何も言えないでいた。
芹澤さんに恋するまで、だが。
僕の毎日は、芹澤さんと出会うまで、モンモンとしていた。
毎日に興味が湧かず、運動もすばらしくなく、何も才能も無かった。だから、当然だった。ついでに、彼女なんて出来た試しもなかったし、滅茶苦茶友人が多いわけでもなかった。友人も大喧嘩で一人無くしていたし。
おまけに、僕は自分が、飛び切りの弱虫って、わかってた。
だから、いつも、教室の隅で、地味に生きてきた。
でも、それも弱い自分は二ヶ月前までのはずだった。
僕は、芹澤さんに告白するつもりでいたんだ。なけなしの、勇気を振り絞り、彼女が通ると聞いていた通学路で、僕は彼女に告白しようとしていた。
それだけだったし、それ以外の何物でもなかった。
たとえ、失敗しても、いい。
僕は、そう覚悟していたのに、現実はもっと奇怪だった。