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ポストエッジ  作者: こいかわぎすけ
だから少女は少年の手より
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インターバル2




 酷く汗臭くなったが、仕方が無い。

 とりあえず制服に着替えてはみたものの、なんとなく体が粘つく。それが不快でタオルでゴシゴシと拭っていると、4限が始まった。

 内容は英語である。

 しかも、あの教師が担当するリーダーだった。

 彼女が性悪なのは前回のやり取りで理解していた僕は、とりあえず英語を訳すフリをしながら、青い鳥を読んでいた。

 これは、教師という権力を横暴に振りかざす、奴への反抗である。

 と、格好いい言い訳を胸に秘めながら、教科書にサンドして読むことにした。

 しかし、未来の王国まで読み進めたのだが、出てくる発明が物質的な事ばかりで驚いた。メロンくらいの葡萄だなんて、食べ辛いだろう、と思ってみる。しかも、死の征服だとか、不正の駆逐だとか、現代では、まだ実現し得ないことばかり書かれていた。

 死だの公平だの、正直、現代人では(宇宙人でも疑問だね)取り掛かれない深遠な事を扱いすぎだと、僕は思う。

 だけど、多分、この考えは著者の理想なのだろう。

 不平の無い幸福な世界で、老いも死にもしない人間が知を求めて暮す。

 公平な世界には偽りもなく、全てが真実だ。なるほど、すごく羨ましい世界だ。

 が、僕は絶対生きられないだろうとも思う。


 僕は思い切り俗物だ。

 

 努力が嫌いで、贅沢好き。

 そのくせ放蕩三昧したら、きっと、やることが何も無くなる。そんな貧弱な器の持ち主である。なーんて自己評価を下したところで、欠伸が出た。こうして小説を読んでいても、疲れる。

 大方、先程の体育と昨日のアルバイトの疲れが抜けないのが原因だろう。

 が、しかし体力が無い。本当に、軟弱な学生だと思う。

…死ねばいいのに。

 だから、死に等しい眠りを貪っても、文句はあるまい。

 そうして居眠りを開始した僕は、終礼まで安眠を妨害される事無くすごせた。きっと日ごろの行いがいいから、あの阿婆擦れに見付からなかったに違いない。やはり日々、善人で過ごす事は大切なのだろう。

 僕には出来ないけれどさ。



 起きて見れば終礼も終わり、生徒は仲のいい友人と机を並べて、食事を始めていた。がやがやと、楽しそうである。

 そんな光景を見て、僕は、とりあえず購買へ買いに行こうかと、教室を出た。

 何処の高校にも購買はあると思われるが、僕の高校にもあった。あんまり美味くないくせに、結構買いに来る連中が多い、変わった購買である。そして、売る気が無いのか、在庫を残したくないのか知らないが、割と直ぐに売り切れる嫌な所も、特徴だった。

 僕も割合、早く行ったのだが、購買にはロクなものが残されていなかった。

 今日はご飯の気分だった僕は、菓子パンしか残されていないのを確かめた瞬間、一気にテンションが下がった。

 なので、校則違反だが学校を抜け出してコンビニまで買いに行く事にした。

 下駄箱で上履きから履き替えた僕は、駐輪場へと歩いていく。堂々と校門から出ようかと、思うんだが、今朝指導部に説教を受けたばかりなので自粛する。校門から出られないなら、普通でない方法で抜け出すしかない。僕は、駐輪場の脇の、緑色のフェンスに足を引っ掛け飛び越えた。

 タン、と着地は成功。

 僕は、そのままコンビニに向けて歩き始めた。

 近所のファミリーマートの自動ドアに、近くに学校が多いからか万引きは犯罪!と書かれたポスターが貼られているのを発見する。たしか、フランチャイズの店の場合、万引きされた商品代金は店長が自腹を切るという話しだったか。

 人間、生活かかっていると、こんな物も貼るらしい。

 もっとも、モラルの低い万引きの常習犯の大半が、ゲーム感覚で、戸棚から菓子を取り出す心算でやっているそうだから、劇的な効果が無いと僕は思う。本当に万引きを止めさせたいなら、万引き犯の指を切り落とせばいいし、本屋とかレンタルビデオ店に設置されるような、商品の持ち出しを防止する機器を設置すればいいのだ。

 けれど、設置費がかかるうえモラルの壁があるから、意味が無いか。

 僕は紙パックの烏龍茶とコンビニ弁当を買い込む。店員は、僕が学校を抜け出てきた事なんて知らないから、別に普通にレジを通してくれた。僕は、レジ袋を左手にぶら下げて、高校に戻った。

 本当はサボって帰りたかったが、問題行動はこれ以上不味い為、しかたがない。

 何の為に通学しているのやら。



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