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〜音無奏の場合2〜

 微妙な沈黙が二人の間を流れる。


「はぁ〜あそうですか死神ですか。そんな設定おもしろくねぇからもうちっとひねり加えて出直すんだな自称死神君」


 優しい爽やかスマイルひっさげて毒ポロリ。

 ………猛毒かもしれないとさえ感じる。


「…お…信じる信じないのはお前の自由さ。とりあえず自称死神きどりなゼロ様で話を進めようか。…この俺は知ってるぜ?狂おしいほど愛しくも大切なカノジョ、四鏡響子<しかがみきょうこ>に、まだ自分の体の事を知らせてないことを」


 してやったり、とイヤミったらしい笑顔を全開にするゼロ。

 奏は平静を保っているつもりらしいが“彼”には小賢しいマネは通じない。先ほどから軽い調子で話をしているが、彼の瞳は奏の心を見透かすような強さがあった。


「…どうやって調べたのさ?」


 訝しげな表情でじろりと彼を一瞥する奏。

 彼はまだゼロの事を信じてはいない。


 コイツハ俺ノ事ヲ玩具カナンカト思ッテルダロウ


「悲しぃねぇ、いつからヒトはそこまで疑り深い存在になったよ?きっと有り得ない事象がおきても精一杯否定するんだろーな。科学なんて、所詮『仮学』でしかないのにな」


 長い時を駆けてきたゼロの脳裏に一つの姿が浮かび、彼にとっては珍しい物憂げな表情を見せる。そして、その顔を見られたくないのかバイクと共にふわりと空に舞う。

 そこには、超常現象に対するトリック云々の言葉を、力任せにねじ伏せる圧倒的な説明力があった。


「ふぅ…いい加減信じろよ?別にとって食うわけじゃない、お前と…四鏡響子を導きに来ただけさ。……ほら?もうすぐ彼女がお前に会いにやってくるぜ?」


 なぜそんなことまでわかる!と口に出しかけた言葉はゼロの姿と共に霧消する。


「…?どこいったよゼロ!響子になんかしたんだろう!?口出しとかしたんだろう!?余計なことをするんじゃねぇ!!このクズ野郎が!!」


 彼は姿が見えないゼロに向かって、奏はありったけの声と怒りをぶつける。

 

 刹那、頭の中に声が響いた


『は。自分でカノジョに会うのをためらうヤツのために、自分で伝える機会があるくせに行動しないヤツのために。わざわざ俺がセッティングしてやったんだ。むしろ感謝してほしいねぇ』


 姿が見えなくても─やはりあのニヤニヤ笑いが脳裏に復元される。

 

 イヤミったらしい。鬱陶しい!

 

 しかし何故こんなにもゼロに怒りを覚えるのか、薄々奏も感づいている。

 

 分かっている。

 俺は先送りにして逃げていただけさ。

 心の準備ができてないとか何とかいって、自分をごまかしていただけさ。


 だが、そう易々とヤツの思い通りになりたくない!と、詰まらないプライドが彼の邪魔をする。


『フ、無駄だっつ〜の。俺がカノジョに“連絡”をして置いたからな。あと、十分くらいでここにつくはずさ。』


「え」


 自分の顔が引きつるのがイヤでもわかる。


『精々今のうちに、カクゴと話すコトバを固めておくことだ。それではカナデ君頑張り給え』


 声しかないというのに、憎々しいほどの笑顔がリフレインされる。


「ちっくしょ。………やっぱ腹くくるしかないか」


 彼の顔には複雑そうな表情が貼りついて、尚且つ少しばかりのカクゴが見え隠れしていた───

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