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第1話・それは辛辣な配慮~強制された変化の呼び水~

第2章 強要された共感の共振



      第1話・それは辛辣な配慮~強制された変化の呼び水~



 皇宮呪師の所属は皇宮である。


 だから、任務の後は皇宮に戻り、報告を行う義務があった。



 任務中その他で怪我をしたり、病気にかかった場合は、皇宮の中にある神殿に併設されている医務殿で治療を受け、自宅や呪師寮の部屋、場合によっては、その皇宮内神殿の医務殿内にある病室での療養となる。



 本来であれば、インスもそうしなければならない。


 けれど、今のインスは皇帝からの勅令で夜間は主神殿の医務殿に出向している。



 なので、この期間内に限り、任務後に主神殿に直行し、翌朝皇宮にある呪師殿で報告を行ってもよいことになっていた。



「……お前は何をやっているんだ……?」



 廃離宮のある旧都から真っ直ぐ皇都にある主神殿の医務殿にやってきたステールと、その腕に抱かれてぐったりとするインスを見て、主神殿の医務殿総括・医呪神官長のシリウム=ゾナールは呆れを一切隠さない声で問いかける。



 それと言うのも、インスがアインの夜間介護を勅令で命じられてから毎日、その日の担当の皇宮護衛官によって担ぎ込まれているから。



「……私だって、好きでこうなっている訳じゃないですよ……」



 いつにも増してぐったりとしたインスが億劫そうに口を開く。



 ずぶ濡れの体はここに来るまでの間に大分乾き始めてはいたが冷え切り、青ざめて真っ白になった顔に血の気がない。



 肩の傷は小さいが貫通しており、濡れていたせいか半身が血で染まっている。



 一番の問題は痺れて指までまともに動かないこと。



 右手の爪が紫に変色していた。



 状態を確認して、難しい顔をしたシリウムは、ちらりとステールに視線を走らせた。



「……………」



 視線を受けたステールは微かに眉を顰めるが、何も言われないので口は閉ざしたまま。



「……すぐに回復魔法で治療するのはやめた方がいいな」



 ステールが何も言わないことを確認して、腕を組んだシリウムの言葉に、インスが目を丸くする。



「……え……ですが……」


「お前、体力も限界だろう?」



 反論しかけるが、遮るようにして言われて口を閉ざす。



 言われるまでもなく、連日の任務で無理を重ねて、体力どころか精神力も限界。


 魔力も一晩では回復しきらなくなってきていて正直に言えばきつい。



 けれど……



「……アイン君が知ったら、影響を与えてしまいます……」


「今更だと思うがな……」



 アインに心配させないためにも、怪我の治療くらいはして欲しい。


 言外に告げるが溜め息を返される。



 二の句が継げなくなったインスに、医療的な処置を始めた。



 確かに、インスがいくら心配させないようにと気を付けていても、元々、人に必要以上に気を使う質のアインに隠しきるのは難しい。


 はっきりとは分からなくても、薄々感づいている可能性は高かった。



「……だからと言って……!」


「ステール。そう言うわけだから、しばらくインスはこっちで預かる。夜間介護は勅令だから外せないが、それ以外の任務に就かせるのは医療的観点から見て許可できないと報告しておけ」


「「……え……?」」



 それでも反論しかけたインスを黙らせるように言ったシリウムの言葉に、二人共が目を丸くする。



「ペンティス呪師長が何を考えているかは知らないが、五日も働きづめだろう? 数日休みを取らせたって問題ないはずだ」



 言われて、確かに……と納得してしまった。



「それと、アインの、お前への依存度を下げたい。というのもある」



 続けられた理由にも納得する。



 何といってもアインはまだ見習い中の身の上で、しかも所属は一応神殿側。



 皇宮呪師としての才もあり、そちらの学習にも同時に付いてこられるだけの理解力と、努力を厭わない性質を持っているため皇宮呪師としての修業も課せられてはいるが『神官呪師見習い』と言うのが公的立場だ。



 そうなると、皇宮呪師であるインスと四六時中一緒に入られないのは当然で、退院すれば神殿側の学生呪師寮に戻ることになる。



 退院してからまた悪化したら意味がない。



 それを見越して、最初から『期間限定』であることは言って聞かせてある。



 けれど、頭で理解できるのと、心が受け入れられるのは別の話。



 実際、頭では分かっていたのに心が受け入れられなかった結果、インスの退院後アインの症状は悪化の一途を辿ったのだから。



 同じ轍を踏まないように準備しなければいけないのは当然。



「アインも体力はずいぶん回復してきているし、そろそろ次の段階に進む必要がある……利用するわけではないが、お前の方が不調であれば、ただただ甘えてはいられないと、嫌でも理解する」



 ある意味、荒療治でもある。



 インスもちょっと眉を顰めるが、反対することもできない。



「急ぎの報告があるなら、それだけステールに言伝させろ。詳細に関しては後にしておけ」



 話しながらも手早く、けれども丁寧に処置をして、右腕を胸元に沿わせるようにして固定する。



「……あの……」



 腕を固定されたインスが困惑したようにシリウムを見た。


 これでは一切手が使えない。



「回復魔法での治療ができるまでは動かすな。どっちみち、ろくに使える状態じゃない」



 言いたいことはわかるが、使わせるわけにもいかない。


 どちらにしろ、ろくに動かせもしないだろうが、無理に動かして悪化させるわけにもいかない。



 きっぱりと言い切り、ステールを見る。



「そういうわけで、しばらくインスは入院だ」


「……わかりました」



 告げられて、ほんの僅か、ステールからもホッとしたような気配が漏れた。



 けれどそれをすぐに押し隠し、頷くにとどめる。



「急ぎの報告があるなら伝えておけ。その後はここで少し休んでいろ」



 それだけ告げて、シリウムは先に部屋を出た。


第2章第1話をお読みいただきありがとうございます。


相変わらずボロボロな状態で運び込まれたインス。


呆れ果てたシリウムの「辛辣な配慮」によって、強制的に休息(という名の入院)を言い渡されることになりました。


アインとの関係性や、今後の「自立」に向けた荒療治がどう影響していくのか。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第3弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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