表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/32

第3話・宿る純度のその理由~高きものの別意なき~

第1章 遭遇するのは貴き碧



       第3話・宿る純度のその理由~高きものの別意なき~



 廃離宮西の塔の出入口は、元々は北側に存在していた。



 東側は廃離宮と小島を繋ぐ方角で、人工的な小路で繋げられている。



 元は、その両端に門があった形跡があり、長い年月の間に朽ちたのか、残っているのは柱の跡のみ。

 


 塔自体は西端の方に寄せぎみに建てられていて、池があるのは南に面した場所。



 戦いの余波で崩れた壁と言うのは西寄りの南。



 だから、塔の中をその崩れた壁から見ようとすると、南側にある池を通り過ぎる形になる。



 更に言えば、北側に存在する本来の出入り口は塗り固められていて、今では使用不能。



 もし、壁の破壊に成功していなければ、魔族によって魔法で中に連れ込まれたジャンヌたちも外に出られないところだった。



 できうる限り塔から遠ざかり、南の端の方から池の様子を観察するインスは、以前来た時同様、いや。それ以上に清涼な水の魔力を感じて微かに眉を顰める。



 やはり、何かがおかしい。



 どうしてこれだけ近くに……塔の内部に籠っているとはいえ……濃密な魔力が複数混ざって存在している場所で、これほどまでに『清い』のか?



 しばらく池を見回したインスは、その場でしゃがんで池の水を手で掬う。



 指の間を、キラキラと光を反射しながら通り抜ける水をじっと見つめて、ほんの僅か、手に残った雫にまで清涼な水の魔力が宿っているのを確かめた。



 これも、前回来た時にはなかったもの。



 確かに、この池の周囲の魔力は清涼に保たれてはいたが、それでも雫の一つにまで宿っているのが分かるほど強くはなかった。



 もし前回もこれだけ強い力が宿っていたら……反射的ではあったが……ステールに水をひっかけた時に多少なりとも効果が見られたはず。



 明らかに、純度が増している。



「……一体、どうして……」



 小さく呟いた、その瞬間――



「っ!? ぅわっ!?」



 いきなり何かが足を掴み、池の中に引きずり込んだ。



「インス!!」



 ステールの声が聞こえたが、返事をする余裕はない。



 消して深いわけではないが、浅いと言い切れるほど浅くもない池に全身が浸かってしまう。



 当然、水面に顔を上げようとするが、池の水が絡んで浮上できない。



 そう。比喩でも何でもなく、水そのものが体を絡めとり、水中に閉じ込められてしまった。



(……っ!)



 一体何が起きているのか確認しようとするが、その前に首筋を何かに噛まれる。



 痛みはないが、そこから魔力を吸われているのが分かった。



 「……っは……」



 ようやく水の上に顔を出せたが、噎せるインスをいまだに水中に引き込もうとする力が全身を押さえ込んでくる。



「インス! 無事か!!」



 いつの間にか池の西側にまで引きずられていて、ステールの声は聞こえるけれども姿は見えない。



 抵抗しながら、ギっと池を睨んだインスが口の中で呪文を唱え……



裂波空激ブディンク・ベヌン!」


「きゃんっ!?」



 魔法で絡みついてくる水を弾き飛ばすと、高い声の悲鳴が短く響いた。



 その隙に岸に上がって、息を整える。



 それでも視線は池に固定したまま。先ほどの声の主を見つけようと感覚を研ぎ澄ます。



「……精霊……?」



 ややあって、水に溶け込むように存在しているそれに気づく。



「違うよ?」



 ザパリと音を立てて水が立ち上がった。



 池の水の上に、水の塊が浮かんで、形を成す。



「……まさか、聖霊……?」



 水そのものにしか見えない、透き通る半透明の存在を目にしたインスが息を飲む。



「うん。そう!」



 嬉しそうに笑って頷いたのは、男でも女でもない、水でできた子供のような姿をした聖霊。



 聖霊と言うのは普通の精霊とは違い、純度の高い、神族にも匹敵するほどの力を持つ最高位の精霊のこと。



 精霊ではあるが純度が高すぎて、力が強すぎて人には制御が難しい……ほぼ不可能な……存在だ。



 人前に姿を現すことさえまれ。



 そんな最高位の存在が、無邪気に笑ってそこにいた。


第1章第3話をお読みいただきありがとうございます。


異常なほど澄んだ水の正体は、高純度の魔力そのものである『聖霊』の仕業でした。


一般的な「精霊」とは一線を画す、人には制御不能な高位存在。


池に引きずり込まれ、魔力を吸われ、またしても散々な目に遭うインス。


謎が解けたと思ったら、さらに大きな謎(と危険)にぶち当たりました。


相手が悪意を持っていない分、余計にタチが悪いこの状況をどう切り抜けるのか。


インスの明日はどっちだ!?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「聖霊が可愛かった!」「インスが災難すぎる」と思った方は、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第3弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ