表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞③~重なり合うのは悪意《おもい》の欠片~  作者: norito&mikoto
第6章 幼く拙い敬慕《まどろみ》の揺籃《ゆりかご》
30/32

第4話・目隠しするのは誰のため?~気づいてしまった可能性~

第6章 幼く拙い敬慕まどろみ揺籃ゆりかご



     第4話・目隠しするのは誰のため?~気づいてしまった可能性~




「……続けるぞ……」



 不承不承ではあるがアインが頷くのを確かめて、シリウムは話を続ける。



 若干声に疲れが滲んでしまったのは致し方ないだろう。



「アインの方も、数日以内に胸の怪我の治療を完了させる……先にお前を退院させて呪師寮に戻し、問題がないと分かったらインスにも退院して皇宮に戻ってもらう」


「……ぇ……」



 目を見開いたアインが微かに吐息を零すのを見て、「やっぱり、分かっていなかったか。」と確信した。



「アイン」



 シリウムに呼ばれて、びくりとアインが肩を揺らす。



 その動きが怪我に響いて、直後に腕を押さえ、痛みを堪える悲鳴が零れた。



「アイン君!?」



 インスが急いでスプーンを置いて、そっとその小さな体を抱き寄せる。



 シリウムはそっと溜め息を吐いて、あえて感情を見せない、冷淡な表情で口を開く。



「……忘れているかもしれないが、お前は『神殿所属』の神官呪師見習いで、インスは『皇宮所属』の皇宮呪師だ。インスがお前の介護で医務殿に来ていたのは出向で、お前が退院すればお前は神殿の呪師寮に、インスは出向が終了して皇宮に戻る……期間限定だといったはずだが?」



 知っている。分かっていた。忘れてもいない……



 けれど、どうしても心細さが先だって、反射的に声を漏らしてしまった。



 もうすぐ、この優しいヒトと、離ればなれにならなければいけないのだと、改めて突き付けられて、動揺する。



「……はい……」



 そんな、動揺を押し殺して、何とか返事をするけれど、微かな震えは止まらなくて、抱きしめて、そっと撫でてくれる腕に縋りつく。



「……アイン君が退院したら、次は最初の授業ですね……」



 インスが宥めるように撫で続けながら、優しく囁けば、ピクリと反応したアインが小さく「……授業……?」と繰り返す。



「……はい。アイン君が、これまで通りに魔法を使えるか、確かめる授業です……」



 あえて、インスは優しく告げる。



 そこに負担を感じさせないように、そこにある、本当の課題に気付かせないために。



「……授業、続けること、できますか……?」



 そして、アインも気づく。



 皇宮側での……皇宮呪師としての授業が続けられれば、またインスと一緒に居られる時間があるのだと。



「もちろん。……アイン君が、魔法を使えれば、続けられますよ……」



 当然。インスもそれを分かっている。



 むしろ、そこにアインの注意を引き付けるために話している。



 そして、乗り越えられるようにと――願って。



「……わかりました……頑張ります……」


「はい。無理はしないで、頑張ってください」



 以前にも行ったやり取りを、その時とはまた、少し違った気持で、願いと、祈りを込めて繰り返す。



 ふわりと微笑むインスに、アインも少しだけ笑顔を見せて……様子を見守る大人たちが、何とも言えない顔をしていることに、インスは気づいていて、アインは気づいていない。



 これも、以前なら、アインもちゃんと、気づいていた。



 人に……他人の言動に、その心の動きに……ものすごく敏感に反応して、自分が相手の邪魔にならないように、相手に不快に思われないように……許された居場所に、必死に縋りついて、子供らしさを無くした子供。



 それが今までのアインの様子で、だから五歳ぐらいとしているが……



(((……もしかしたら……)))



 実はアインは、それよりも本当は幼いのかもしれない。



 そんな思いがよぎって……ちらりと、三人の視線が一瞬交わる。



 実際に、体格だけで言えば、アインは五歳の子供よりもずっと小さい。



 けれど、受け答えや理解度などは五歳の子供よりもずっと上。



 だから小柄な五歳児……として扱っていたのだが……



 考え直す必要があるかもしれないなと、年長者たちが考えているとも知らずに、今度はアインがスプーンを手に取って、インスに食べさせ始める。



 一瞬きょとんとしたインスは、けれどすぐに極上の笑顔で、差し出されたスプーンを口に含んだ。


第6章第4話をお読みいただきありがとうございます。


退院という言葉と共に突きつけられた、インスとアインの「所属」の違い。


神殿と皇宮、それぞれの場所に戻らなければならない現実に怯えるアインですが、インスが「授業」という未来の約束を優しく提示します。


そして、「アインは本当はもっと幼いのではないか?」という疑問。


周囲に気を使いすぎていた「完璧な子供」の仮面が剥がれ、インスに甘える姿を見せるようになったからこその気づき……。


アインの驚異的な理解力と、本来の年齢の乖離に関する疑念。


重苦しい現実やシビアな考察が飛び交う一方で、ラストの「スプーンの逆転」。


食べさせてもらっていたアインが、今度はインスに「あーん」を返す。


そんな何気ないやり取りの中に、二人の対等になりたいという願いや深い信頼が凝縮されている気がしますね。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日昼と夜、1日2話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第3弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ