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第5話・萌芽の兆しと違和感と~狭間で忌避する胸中の~

第2章 強要された共感の共振



      第5話・萌芽の兆しと違和感と~狭間で忌避する胸中の~



 朝、目が覚めたら、いつも通りインスの顔が間近にあって、いつも通りに挨拶されて、何かがおかしいな……と首を傾げたアインが、腕枕されて寝ていたことに気付いて悲鳴を上げたのが少し前。



 インスが怪我をしていて、だから並んで眠っていたはずなのに、いつの間にこんな、べったりと甘えるような体勢になっていたのか……



 驚きのあまりに声を上げ、急に動いたせいで怪我に響いて、ベッドに突っ伏して痛みに呻くことになった。



 インスや、看護要員の神官たちが慌てて動き出し、涙目になって痛みを堪えるアインに処置が行われる。



 色々と……本当に色々と朝から心配されて、自己嫌悪に陥ってしまったアインがズーンと沈んだ様子であるのを、朝食後に朝の診察で来たシリウムが、話を聞いて若干呆れたように笑いを零す。



「……ゾナール神官長……」


「……いや。悪い……」



 落ち込んでいるというのに、追い打ちをかけるようなシリウムに、眉を顰めたインスが咎めるように呼びかける。


 何とか笑いを堪えて、シリウムはアインの頭を撫でた。



「わ……!?」



 びっくりしたアインが顔を上げると、手を止めて覗き込む。



「それで? お前はどうしたいと思ったんだ?」


「……僕は……」



 問いかけられて、ちょっと口籠る。



「……インス様に……ううん。皆さんに、心配かけないようにしたい……」


「……そうか」



 真っ直ぐにシリウムを見つめて答える。



 深紫の、黒にも見える瞳にちゃんと光が宿っていることを確かめて、シリウムは満足げに頷いた。



 アイン自身に意識が芽生えれば、少しずつでも改善されていくのは明らか。


 回答を聞いてインスも、看護要員の神官たちもホッとする。



「なら、今日から少しずつ始めればいい。失敗したって構わないからな」


「……はい……」



 言われて、こくりと素直に頷く。



 アインの方の診察を終えると、シリウムはインスを連れて一度部屋を出る。



 別の部屋に移り、実際のところどうなのかを問いかけた。



「報告は受けていらっしゃるのでしょう? 昨夜も悪夢にうなされて、また謝っていましたよ……抱いていると、落ち着いてくれるのですが……」



 そっと溜め息を漏らしたインスの言うように、夜間を担当している看護要員の神官呪師からは報告を受けている。



 それなのにインスにも聞いているのは、インスの認識を知るため。



 それと、一つ気になることがあったから。



「……お前の様子がいつもと違ったと報告があった。怪我のせいではないだろう?」


「……………」



 言われて、インスは軽く目を見張る。



 気づかれた? いつ?



「……お前な……こっちは医療者だぞ? 患者の些細な変化に気づけなければ仕事にならない」



 様子から、うまく隠せていたつもりだと気づいて脱力する。



 インスの方は「それはそうだ。」と納得し、若干居心地悪そうに顔を顰めた。



 ちょっと視線を逸らして口籠る。



「……言えない理由が?」


「……今はまだ、ですね……正直、思い出したくもない。という個人的な気持ちもあります……」



 問われて曖昧に頷く。



 昨日、廃宮殿の西の塔で……塔のある小島の池で……遭遇した水の聖霊にアインが見ている悪夢を見せられた。


 内容的に皇宮側にしたい報告でははないが、神殿側……特に医務殿の総括であるシリウムには共有するべきではある。



 ただ、詳細を聞かれると……正直思い出したくもない。という個人的な感情が先に来てしまう。



 それに、何があったかを先に皇宮に報告し、それからでなければ言えないという制度上の問題もある。



 インスが最初に調査に行った時に、皇宮への報告前に何があったのかを神殿側で話したのは、それを伝えなければ正しい処置ができないから。



 悪意の籠った魔力に体を操られてインスを襲ったステールから、その悪意の籠った魔力をきちんと取り除くためには必要な情報であった。というだけ。



 今回は、インスがアインの見ている悪夢の内容を知ってしまったからと言って、それでアインへの処置が変わるわけではないし、インス自身への処置も変わらない。



 だから先に話すわけにはいかないというのもあった。


第2章第5話をお読みいただきありがとうございます。


朝から悲鳴を上げたり自己嫌悪に陥ったりと、アインの等身大の可愛さが爆発する回でしたね(怪我に響いたのは災難でしたが……!)。


自立を促そうとするシリウムと、それに応えて「心配をかけないようにしたい」というアイン前向きな言葉に、少しだけホッとさせられます。


しかし、その裏でインスが抱え込むことになった真実はあまりにも重く……。


医療者としてのシリウムの目からは逃れられなかったものの、制度の壁と個人的な感情の狭間で揺れるインスの心中が切ないラストです。


アインが覚えていない「地獄」を肩代わりしてしまった彼は、果たして独りで耐えきれるのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第3弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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