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第4話・繰り返される夜の騒めき~彼らの知らない、彼らの共鳴~

第2章 強要された共感の共振



    第4話・繰り返される夜の騒めき~彼らの知らない、彼らの共鳴~



 ああ。やっぱりな……と思いながら、インスは目を開く。



 深夜の病室に、苦し気に呻くアインの、途切れがちな謝罪の声が微かに響いていた。



「……………」



 目を開けて、そっと左手を上げ、合図をする。



 無言で部屋の片隅に控えていた看護要員の神官呪師が歩み寄り、インスの求めに応じて上体を起こした。



「……………」



 いつもなら抱きしめて眠っているので、そのまま抱いていられるのだが、今夜はインス自身の怪我のせいでそれができない。



 だから、体を起こして貰って、並べて貰ったクッションに背を預ける。



 それから、ふわりと浮かびあげられたアインを、膝の上に乗せてもらい、そっと、左手で包み込む。



「……アイン君……」



 それから、囁くようにその名を呼んだ。



 胸の傷に響かないように気を付けて、軽くポンポンと撫でるように叩いて落ち着かせていく。



 しばらく苦し気に呻いていたアインだったが、それも徐々に落ち着いて、やがて寝息にも落ち着きが戻ってきた。



 ホッとしたように室内の緊張が解けていく。



 インスも息を吐いて、体の力を抜いた。



「……ラント呪師……」



 声を押さえてインスを呼んだ看護要員の神官呪師に頷いて、元のように横並びになる。



 ただし、今度は腕枕をして、できる限り距離を近づけた。



 いつもと同じように抱きしめては寝られないと分かっていたから、今夜はこの体勢で眠ることを最初に提案した。



 だが、インスの怪我を気にしたアインが断ってきて、だからただ横に並んで眠ったのだが……



 案の定、アインは悪夢にうなされ、苦し気な様子で謝罪の言葉を繰り返し始めたと言う訳だった。


 起きた時に驚くだろうな。と思いながら、インスももう一度夢路を辿る。



 眠りに落ちたインスは知らない。



 彼自身も、アインと同じようにうなされている時があるのだと。



 二人そろってうなされて、二人そろって落ち着いて、そうして朝を迎えていることを。



 まるで、見えない何かで繋がっているかのように。



 静かに眠る二人の様子を見守りながら、看護要員の神官呪師はそっと、息を吐く。



 シリウムはアインの依存度を下げると言っていたが、同じか、それ以上の依存をインスもしている。



 そしてそれを、おそらくインス自身もきちんと理解していて……



 けれど、アインの自立も望んでいるから、そっと背中を押して、手を離すことも厭っていない。



 アインが自分でちゃんと立てるようになって、その上で、まだ護ろうとも思っていそうで……



(……正直、危うい……)



 その認識はシリウムにも、そして二人を見守るこの病室を担当している神官たちにも共有されてある。



 インスが、アインに向けている『感情』の正体が把握しきれない。



 今はうまくかみ合っているが、どこかでそれがズレた時に、修復しようのない何かを引き起こしそうで何とも言えない不気味さを感じる。



 ただ、今は……



 身を寄せ合って眠る二人を、その眠りが穏やかなまま朝を迎えてくれることを密かに祈る。




 どうか、暁の女王(ディエル)よ。



 宵闇に潜む悪しき夢を払い、健やかなる眠りの先、夜明け(あなた)曙光(ひかり)に世界が満たされる、その時まで。



 重き宿命(さだめ)に翻弄される、いまだ幼い二人の子らをお守りください。




 そうして、静かに夜は更けて……




 間近にあるぬくもりに、甘えるようにすり寄って、びくりと震える気配にアインの意識が浮上する。



「……ぇ……?」


「…………ぁ……」



 パチパチと、瞬きし合うインスとアインが顔を見合わせた。


第2章第4話をお読みいただきありがとうございます。


怪我をしているのに無理をして、結局アインを抱き寄せてしまうインス……。


彼の過保護(?)っぷりと、アインの健気な遠慮がせめぎ合う夜の攻防に、ハラハラしつつも癒やされました。


ですが、本人たちが知らないところで「二人そろってうなされている」という事実は、単なる仲の良さ以上の、どこか運命的な繋がりを感じさせます。


周囲から見れば「危うい」と感じられるほどに、互いを求め、深く共鳴し合っている二人。


そんな彼らの知られざる夜の様子と、ちょっと驚いたような朝の目覚めのギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【番外編・第2弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力ちからの残滓~

(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第3弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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