プロローグ・無茶ぶり過ぎる采配と~正論過ぎる棘を刺し~
序 章
プロローグ・無茶ぶり過ぎる采配と~正論過ぎる棘を刺し~
最近……具体的には一か月半ほど前の事件で主神殿の医務殿に長期入院した後、半ば強制的に皇宮に連れ戻されてから……
実は皇宮呪師長のキプラ=ペンティスは、自分を殺したいのではないかと思う時がインス=ラントにはある。
以前から多少無茶な要求が多かったのは確かだが、ここ数日その要求難易度が一気に跳ね上がった。
別段嫌われているとも思わないし、不興を買ったとも思えない。いや。むしろ、どちらかと言えば気に入られている節がある。
その『気に入っている』がどういう意味なのかをあまり考えたくもないのだが、その結果なのかどうなのか、割り振られる任務の難易度が上がって以前より大変になったのは確か。
毎日ぐったりするほど魔力を使う破目になるし、本気で命の危険を感じたことも一度や二度では済まない。
なぜ、夜間の主神殿・医務殿へ特別介護要員としての出向が決まってから、たった五日の間に十回以上も死にかけなければいけないのか……
(……悪意を感じる……)
そう思ってしまうのも致し方ないといえよう。
まさかキプラが、それでも生還してくるのを見て密かに悦んでいるとは知らないインスだが、流石にこれ以上はキツい。
しかも、そんな様子をインスが夜間介護を命じられた……まさかの皇帝陛下からの勅令である……事件から一か月以上たってもまだ治療中の神官呪師見習い・アインに気づかれるわけにもいかなくて、アインが寝るまでの間、気を張り詰めているので、そちらでもかなりの疲労をため込む破目になった。
「今日は無理です」
「しかし、そろそろ一度は見ておくべきでは?」
「最初の調査隊の派遣から、次に私が二回目の調査として派遣されるまでに二十日以上空いていたのでしょう? それからまだ一週間ほどですよ?」
皇宮呪師長室で言い合っているのはインスとキプラ。
内容は皇都西方にある旧都の廃宮殿の定期見回りに関して。
旧都・アンヴァにある廃宮殿の西の塔跡に魔族が巣くい、皇孫皇女であるジャンヌを始めとして神剣の使い手として契約を結んだ専属護衛騎士団長のファン卿ディアス。
護衛騎士団の一員で、神官呪師の護衛官でもある神殿護衛官のクロード。
そして神話に『赤毛の魔女』と記されたことから忌み嫌われる赤髪を持って生まれたせいで捨てられ、神殿孤児院で育ったジャンヌの親友《悪友》のリオンの四人が、強制的に連れ込まれ、干戈を交えた事件。
一般的には「魔物の発生が確認され、退治されたが、まだ危険があるかもしれないので近づかないように。」とされている事件ではあるが、皇宮呪師長であるキプラはもちろん、様々な理由からどっぷりと巻き込まれることになったインスも真相をすべて知っている。
確実にその『魔族』の消滅を確認できたわけではないが、報告された内容から、討伐に成功している可能性ありとみなされてはいる。
だが、この戦闘のせいか、現場となった廃離宮西の塔の内部に濃密な魔力が入り混じって残留していた。
最初に派遣された調査隊は『魔族の出現』自体は情報共有されていた。
それが「倒されたと思われる。」と言ったところまで。
しかし、そこで行われた戦闘に、ジャンヌが封印を解いた『神剣』が使われていたことや、相手の魔族が五年前に皇太子宮を襲撃し、当時の皇太子夫妻……現皇帝の息子夫婦。ジャンヌとその弟であるジョンの両親……をはじめとして多くの被害を出した襲撃犯であることは知らなかった。
結果、状況を甘く見た討伐隊から派遣された皇宮呪師三名が魔力に充てられて発狂。
魔法を暴発させ、その火消しのために追加人員が送り込まれることになった。
その後、並みの者では調査すらできないとの結論からインスが退院するまで待ち……退院の許可が出ている筈なのになかなか戻ってこないインスを半ば強制的に呼び戻し……調査を命じたのが第二回目の調査。
その調査に先立って主神殿の浄術神官に護符の作成を依頼しておいたインスは、完成を待って調査に赴き、残留魔力の悪意に操られた皇宮護衛官のステール=ベルンに襲われることになった。
流石に、そこまでは想定していなかったインスだが、幸いステールに持たせていた護符に魔力を流し込むことで操る魔力を跳ねのけることに成功。
何とか生きて帰ってきた後、報告を受けたキプラがインスに命じたのが定期的な見回り。
その第一回目にそろそろ行くようにと言われていた。
「確かに初回の調査隊派遣から、二回目の調査隊派遣までに二十日以上空いたのは事実です」
その件に関しては間違いないことなので、キプラもすんなりと頷く。
「けれどその時、貴方もあの場所で魔法を使ったのでしょう?」
「……っ!」
少し困ったような表情で告げたキプラの言葉にグッと詰まる。
正確に言えば、護符の効果を引き出すために『魔力』を流し込んだだけで『魔法』を使ったわけではない。
けれど、自身の持つ魔力の殆どすべてを無理やり注ぎ込んで発動させたのは事実で……しかもインスは魔力を『魔力のまま』使うことのできる『見者』ではないので、使い方としては『魔法』と同じだ……その結果、あの場所に新たに魔法の痕跡が残ったであろうことも疑いようはなかった。
「一週間ほどと言いますが、一週間を過ぎてもいます……何も問題がないなら良いですが、遠目からでも確認はしておくべきでしょう」
「……………」
遠目からの確認だけで済むはずもない。
けれど、これ以上ごねるのは無理だ。
そっと、気づかれないように溜め息を飲み込んで、インスは了承を告げた。
番外編第3弾・序章をお読みいただきありがとうございます。
退院早々、ブラックすぎる職場(皇宮)に引き戻された不運なインスの受難の日々、いかがでしたでしょうか。
命の危険がある調査の合間に、皇帝直命の夜間介護までこなすという、まさに過労死ライン真っ青なスケジュール。
しかも上司のキプラは、ボロボロになって帰還するインスの姿を見て楽しんでいる節もあり……。
前途多難すぎる彼の物語が再び幕を開けます!
次回もお楽しみに!
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【第2部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】
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【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
【番外編・第2弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞②~滞留するのは魔力の残滓~
(https://ncode.syosetu.com/n6684lr/)
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【第3弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




