考えるな、感じろ。
自分より馬鹿なやつだけ見ていたい。
上を見ると、到底手の届かなそうな人がたくさんいる。
下を見ると、いつか自分がこうなるんじゃないかと怯えてしまう。
だから、ちょうどいい馬鹿だけを見ていたいと、そう思うようになった。
それからだ。
僕が僕じゃなくなったのは。
外を見すぎた。
いつからか、自分を見ることを忘れていた。
鏡を見ることが嫌になった。
理由なく笑えなくなった。
人と比べるもんじゃない。
そんなことは分かってる。
自分だけの幸せを見つけるべきだって言うのも、よく分かってる。
でも、自分の幸せを得る方法なんて、習っていない。
教えられてもいない。それでいいとも、一度も言われたことはない。
だから。
なんとなく。
ただ、なんとなく。
消えたいなぁ。なんて思っている。
そんなこんなで自習の時間が終わり、学校が終わる。
部活なんてやってないし、一緒に帰る友達なんてものもいないから、さっさと階段を降りる。
靴箱を開ける。
なにかが落ちた。
それを拾い上げる。
…手紙?
思考が回る。
どうしてここに手紙がある?
存在感がまったくなければ、誰にも触れられることもないのに。
なんて、なんども考えたことを、学ばず繰り返し考える。
…現実逃避はやめにして、手紙をきちんと見る。
見ずに捨ててしまいたかったけど、やめた。
どうせ大した内容でもない。
放課後、教室に残って下さい。
そう書いてあった。
名前は書いてない。
……………?
理由が全く分からない。
僕を呼ぶ必要がない。
え。めちゃくちゃ帰りたい。
なんだこれ、怖。
怒られるようなことしたかな。
あ、そうか。
行かないといけないんだ。これ。
後から、あれなんだったんだろうって、そう思うことになるし、特に作ってない人間関係がマイナスになる可能性がある。
『…はぁ』
ぼちぼち人が来ていたので、手紙を隠す。
階段を上がる。
放課後の校舎。
僕の知らない景色。
それだけだけど。
気合いを入れるとかもなく、教室にさっと入る。
静かだ。
誰もいない。
あー、なるほど。
からかわれたのか。
僕を狙う理由が分からないけど。
そんなものなんだろう、きっと。
窓空いてるからそれだけ閉めて、さっさと帰ろう。
そうしようとしたとき。
扉が開いた。
『ごめん!遅れた!』
そういいながら、男子が入ってきた。
息が切れている。急いできてくれたんだろう。
…誰かは分からない。
いや、誰でも分からない。
『先生に呼ばれて。申し訳ない!』
勢いよく手を合わせて、そう言った。
『大丈夫。それで、どうして僕を』
『そう!あぁ、あと、変な呼び出ししてごめん!なんか、話しかけるタイミングなくて…』
『わかったから、なんで呼んだの』
『その……友達になってくれないか』
『…なんで?』
???
『…友達になるために理由を説明するなんて、初めての経験だぜ…』
『はぁ』
後先考えず行動が出来る人間なんだな。この人は。
僕より上の人間だ。
『…その、いつも、周りを見てくれてるだろ?ゴミ拾ってくれたり、休んでるやつの分の紙を机の中にいれてくれたり、黒板消してくれたり』
『はぁ』
『どんなやつなのか気になったんだ。いいやつなのは間違いないけどさ』
そんな程度で、人がいいやつかどうかなんで分からないだろ。
…僕は、僕が下にならないために、そうしてるだけだ。
『やった方がいいことは絶対にそうなんだけど、別にやらなくても誰も困らない。そういうことができる人と、友達になりたい。それだけだ』
そうだ。そういえば、友達っていうのは、理由がなくてもなっていいものなんだっけか。
『じゃあ、友達になろう』
『お!俺、佐久間』
『僕は湊』
『これからよろしく!』
『…友達ってなにをするものなのかな』
『俺は、友達と外に遊びに行ったり、体育の授業でペア組んだりしてるけど、人それぞれだと思う』
『はぁ』
『とりあえずさ。今日一緒に帰ろうぜ!』
『家の方向が一緒かどうか分からないけど』
『確かに。まぁ、とりあえず行こう!』
手を取られて、歩いていく。
いつもぐるぐる回ってる思考が、そのときだけ止まっていた気がする。
考えてばっかりはよくないぞ!
たまには現実に帰っておいで。




