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タイトル未定2026/01/15 02:11

私、橋本絵里香、28歳。港区女子。


六本木、麻布、西麻布、赤坂。このあたりが私の主戦場。


週末は高級レストランでディナー、会員制バーでシャンパン、ホテルのラウンジでアフタヌーンティー。


インスタのフォロワーは5000人。ハイブランドのバッグとシャンパンの写真で埋め尽くされた、キラキラの毎日。


私、可愛いと思う。


つけまつげバッチリ、カラコンでデカ目、シェーディングで小顔。毎日のメイクには1時間かける。


だって、私の武器は「見た目」なんだから。


……まあ、実際は商社の一般職で、年収は400万くらいだけど。


服とバッグは全部ローン。GUCCI、PRADA、DIOR、CHANEL。ロゴが見えないと意味がない。


カードの支払いは毎月カツカツ。貯金はほぼゼロ。


でも、見た目への投資を惜しんじゃダメ。


28歳。港区女子としては、正直ギリギリのライン。


この世界、25歳過ぎたら「おばさん」扱いされることもある。


だから、そろそろ本気で「上がり」を決めないといけない。


つまり、結婚。


もちろん、相手は誰でもいいわけじゃない。


年収2000万以上。できれば医者か弁護士か、経営者。


港区に住めるレベルの男じゃないと意味がない。


私くらい可愛ければ、それくらいの男を捕まえて当然でしょ?



同じ会社に、佐藤美咲っていう子がいる。


私と同期で、同い年の28歳。


地味。本当に地味。


黒髪をひとつに結んで、化粧っ気がなくて、服もシンプルなワンピースとか。


「美咲」って名前なのに、全然美しく咲いてない。


私は密かに「地味咲」って呼んでる。



もう一人、中村彩音っていう後輩がいる。


私の3年下、25歳。同じ一般職。


「橋本先輩、今日も素敵ですね」


「ありがと、彩音」


彩音は私のことを慕ってくれている。港区女子仲間にも誘ってあげた。


「先輩みたいになりたいです」


「彩音もセンスいいから、すぐなれるよ」


後輩に慕われてる私。悪くない。



「佐藤さん、もっとメイクしたら?せっかくの顔がもったいないよ」


私は親切心で言ってあげる。


「え、うん……でも私、あんまりメイク得意じゃなくて……」


「つけまとか、カラコンとか、やってみなよ。全然変わるから」


「うーん、肌荒れしそうで怖いかな……」


肌荒れ?


確かに、佐藤さんの肌はやたら綺麗だ。毛穴が見えない。


「何使ってるの?高い美容液とか?」


「ううん、特に何も……普通のドラッグストアのやつ」


「え、そんな安いので?」


信じられない。私なんて毎月美容代に5万はかけてるのに。


まあ、どうせ元が良くないと意味ないけど。



佐藤さんは便利だった。


「佐藤さん、この資料まとめといて。私、今日早く上がらなきゃいけないから」


「え、でも橋本さんの担当じゃ……」


「お願い。今日大事な予定があるの」


大事な予定っていうのは、六本木のパーティ。でも、そんなこと言わない。


「……分かった」


佐藤さんは渋々引き受ける。いつもそう。断れない性格なのだ。


「ありがと〜。じゃ、お先に〜」


私は颯爽と会社を出る。佐藤さんは残業確定。


隣で彩音が見ていた。


「先輩、佐藤さんによく頼んでますね」


「だって、私がやるより佐藤さんの方が丁寧だし。適材適所でしょ」


「なるほど〜。さすが先輩です」


彩音は感心したように頷いた。


まあ、私がやるより佐藤さんがやった方が丁寧だし。適材適所ってやつ。



ある日、佐藤さんがいい匂いのハンドクリームを塗っていた。


「それ、いい匂い。何?」


「あ、これ?イソップっていう……」


「へー。ちょうだい」


「え、でもこれ……」


「いいじゃん、減るもんじゃないし」


私は佐藤さんからハンドクリームを受け取って、たっぷり塗った。


「ありがと〜」


イソップ?聞いたことないけど、まあドラッグストアのやつでしょ。


彩音が横で見ていた。



別の日、雨が降ってきた。私は傘を持っていなかった。


「佐藤さん、傘貸して」


「え、でも私も……」


「佐藤さん、駅近いでしょ?私、遠いから」


「……うん、分かった」


佐藤さんは渋々、傘を渡してくれた。


紺色の、シンプルな傘。地味だな、佐藤さんらしい。


「ありがと。明日返すね」


私はそう言って、傘をさして帰った。



翌日。


「佐藤さん、ごめん。傘、電車に忘れちゃった」


「え……」


「ごめんね〜。でも、どうせ安い傘でしょ?また買えばいいじゃん」


佐藤さんは何か言いたそうだったけど、結局「うん……」と頷いただけだった。


本当、この子はチョロい。


彩音が後で言った。


「先輩、あの傘……」


「ん?」


「いえ、何でもないです」



「佐藤さん、充電器貸して。私の忘れちゃった」


「あ、うん……」


「ありがと〜」


その充電器、結局返してない。まあ、安いやつでしょ。



ある日、同期の男子たちと話していた。


「橋本さんと佐藤さん、同期なのに全然タイプ違うよね」


「でしょ?私は港区女子だから」


「佐藤さんは地味だけど、なんか雰囲気あるよね」


「え、どこが?」


「なんか、清潔感あるっていうか……肌綺麗だし」


私はイラッとした。


「佐藤さん、化粧もしないし、服も地味だし。女子力ないよね」


「そうかな……俺は嫌いじゃないけど」


は?何言ってんの。


私の方が絶対可愛いのに。



私はその日、いつもより気合いを入れてメイクした。


つけまつげを2枚重ねにして、シェーディングを濃くして、リップは真っ赤。


「橋本さん、今日メイク濃くない?」


「え、そう?これくらい普通でしょ」


「なんか……顔が怖い」


……は?



週末、合コンがあった。


相手は広告代理店の男子。なかなかのスペック。


私は佐藤さんと彩音を誘った。佐藤さんは数合わせで。


「え、私も行くの?」


「いいじゃん。人数合わせたいの」


「でも、私そういうの苦手で……」


「大丈夫大丈夫。佐藤さんは横にいてくれればいいから」


彩音にも声をかけた。


「彩音も来なよ。勉強になるから」


「はい、先輩!」


会場は西麻布のダイニングバー。


私は完璧なコーディネートで臨んだ。GUCCIのワンピース、CHANELのバッグ、DIORのピアス。


佐藤さんは……相変わらず地味。


ベージュのニットに、シンプルなスカート。ブランドロゴは一切見えない。


「佐藤さん、もうちょっと気合い入れてきてよ」


「え、これじゃダメかな……」


「だって、ブランド物一個も着けてないじゃん」


「うーん、私、あんまりロゴが目立つの好きじゃなくて……」


ロゴが目立たないと意味ないでしょ。


彩音が横で見ていた。



合コンが始まった。


私は一番イケメンの男子に狙いを定めた。


「お仕事は何されてるんですか?」


「クリエイティブディレクターです」


「すごーい!かっこいい!」


私は最高の笑顔を振りまいた。


隣で佐藤さんは大人しく座っている。


私がいい男を独占している間、佐藤さんは残り物の男子と話していた。


お通夜みたいなテンション低い男。あれは明らかにハズレ。


まあ、佐藤さんにはお似合いでしょ。


彩音は空気を読んで、私の邪魔にならないようにしていた。



「ねえ橋本さん、あの佐藤さんって子、どんな子?」


イケメンの男子が、佐藤さんのことを聞いてきた。


「え、なんで?」


「いや、なんか雰囲気あるなと思って」


私はイラッとした。


「佐藤さん?うーん、あんまりお勧めしないかな」


「そうなの?」


「なんか、ちょっと変わってる子で……男癖悪いって噂だよ」


「えっ、そうなんだ……」


「あくまで噂だけどね。私は関わらない方がいいと思う」


嘘だけど、まあいいでしょ。


イケメンは佐藤さんへの興味を失ったみたいだった。


よし。


彩音が横で聞いていた。



結局、その合コンで私はイケメンの連絡先をゲットした。


佐藤さんは、残り物の男とも連絡先を交換しなかったみたい。


まあ、そうでしょうね。


「今日はありがとね、佐藤さん」


「うん……」


「次も誘うね」


佐藤さんは微妙な顔をしていたけど、断らなかった。


本当、便利な子。



帰り道、彩音と二人になった。


「先輩、今日もすごかったです。一番いい人ゲットしてましたね」


「まあね。彩音も学んどいてよ」


「はい!」


彩音は素直に頷いた。



ある日、佐藤さんが言い出した。


「私も婚活パーティ、行ってみようかな」


は?あんたが?


「え、佐藤さん、婚活するの?」


「うん、そろそろ真剣に考えようかなって」


「へー。どんな人がタイプなの?」


「優しい人がいいな。価値観が合う人」


「年収は?」


「そんなに気にしてないかな……普通に生活できれば……」


私は呆れた。


年収を気にしない?


この子、婚活なめてるでしょ。


「佐藤さんが婚活かあ。頑張ってね」


「うん、ありがとう」


まあ、佐藤さんのスペックじゃ、高望みできないよね。



彩音に報告した。


「佐藤さんも婚活始めるんだって」


「え、そうなんですか」


「年収は気にしないとか言ってた。甘いよね」


「そうですね〜」


彩音は同意した。



ある週末、ハイスペック限定の婚活パーティに行った。


彩音も連れて行った。「勉強になるから」と。


会場は六本木の高級ホテル。参加費は女性1万円。


男性の参加条件は「年収1000万以上」。


私はいつも通り、完璧なコーディネートで来た。


ワンピースはCELINE、バッグはDior、靴はJimmy Choo。


メイクもバッチリ。つけま、カラコン、シェーディング、ハイライト。


会場に入ると、驚いた。


佐藤さんがいた。


しかも、いつも通りの地味な格好。


紺色のシンプルなワンピース。ブランドロゴは見えない。バッグも小さくてシンプル。


髪は一つに結んで、メイクは薄い。


場違いにもほどがある。


「先輩、佐藤さんもいますね」


彩音が言った。


「ほんとだ。あの格好で来たんだ」



私は近づいていった。


「佐藤さん、このパーティ来てたんだ」


「あ、橋本さん!うん、ちょっと奮発して……」


「へー。でも、もうちょっとお洒落してきた方がよかったんじゃない?」


「え、そうかな……」


「だって周り見てよ。みんなブランド物着てるでしょ?」


「私、あんまりブランドとか詳しくなくて……」


「それじゃあ男の人に相手にされないよ?第一印象が大事なんだから」


私は親切心で言ってあげた。


実際、こんな地味な格好でハイスペ男性に相手にされるわけがない。



パーティが始まった。


最初は全員と短時間ずつ話す、回転式のトークタイム。


私は完璧な営業スマイルで、男性たちと会話した。


「お仕事は何されてるんですか?」


「年収はおいくらですか?」


「どこにお住まいですか?」


「港区なんですか!素敵!私も港区に住むのが夢なんです〜」


こういうのは慣れてる。


男は単純だから、笑顔で褒めておけばいい。



フリータイムになった。


一人の男性が、佐藤さんに話しかけていた。


見た目が地味な男だった。


背は普通、顔も普通、スーツも普通。


プロフィールカードを見ると「IT企業勤務」とだけ書いてあった。


年収の欄は「記載なし」。


……ハズレじゃん。


私は佐藤さんを引っ張って、離れた場所に連れて行った。


「ねえ、あの人やめといた方がいいよ」


「え、どうして?」


「だって見るからにハズレでしょ。スーツも安物だし、時計もダサいし」


「そうかな……私は話してて楽しかったけど……」


「年収だって記載なしだよ?書けないってことは、大したことないってこと」


「でも、年収が全てじゃないし……」


「甘いよ、佐藤さん。結婚は現実なんだから。あんな地味な男と結婚しても苦労するだけだよ」


私は親切心で忠告してあげた。


だって、本当のことだし。


佐藤さんは困った顔をしていた。


「でも、まだ話してみないと分からないし……」


「いいから。私、男を見る目あるから。あの人は絶対ハズレ」


彩音が横で聞いていた。



私は会場に戻って、他の男性陣にも声をかけた。


「あの紺色のワンピースの子いるでしょ?あの子、ちょっとメンヘラっぽいんですよね」


「え、そうなんですか?」


「会社の同僚なんですけど、ちょっと変わった子で……あんまり関わらない方がいいかもですよ」


男性は困った顔で頷いた。


別の男性にも。


「あの地味な女の子?うーん、男癖悪いって噂ですよ」


「え、本当ですか?」


「元カレをストーカーしたとか……あくまで噂ですけど。気をつけた方がいいかも」


嘘だけど、まあいいでしょ。


だって、佐藤さんみたいな地味な子がハイスペ男性と付き合っても、うまくいくわけないし。


私は親切心で、男性陣を危険から守ってあげたのだ。


彩音が近くで見ていた。



パーティの終わり、私に声をかけてきた男性がいた。


すごくイケメンだった。


身長180cmくらい、細身でスーツの着こなしが完璧。髪型もお洒落。


時計はロレックス。靴はベルルッティ。


私の全身チェックレーダーが反応した。この人、絶対金持ち。


「さっきから気になってたんですが、お話しできますか?」


「あ、はい!もちろんです!」


私は最高の笑顔で答えた。


「橋本さん、でしたよね。すごく素敵ですね」


「ありがとうございます!あの、お名前は……」


「高梨と言います。医療関係の仕事をしています」


医療関係。医者ってこと?


キタ。キタキタキタ。


「お医者さんなんですか?」


「まあ、そうですね」


高梨さんは謙虚に笑った。


完璧じゃない?


イケメン、高身長、医者、お金持ち。


私の求めていた理想の男性。


「良かったら、この後お茶でもどうですか?」


「はい、ぜひ!」


私は二つ返事で答えた。


彩音に目配せした。


「先輩、すごいです!」


彩音は感心していた。



帰り際、佐藤さんとすれ違った。


「あ、橋本さん。帰るの?」


「うん。ちょっと用事できて」


私は高梨さんをチラッと見せた。佐藤さんの目が丸くなった。


「あの人と?」


「うん。お茶に誘われちゃって」


「そうなんだ……すごいね」


「佐藤さんは?あの地味な人と、まだ話してたの?」


「うん……連絡先、交換したよ」


「え、マジで?私あれだけやめとけって言ったのに」


「うん、でも……話してみたら、すごくいい人だったから……」


佐藤さんは照れたように笑った。


本当に見る目がないな、この子。


「じゃあね、佐藤さん。頑張って」


私は高梨さんと一緒に、会場を後にした。


彩音が後ろから「先輩、お幸せに〜」と手を振っていた。



それから、私と高梨さんは付き合い始めた。


佐藤さんも、あの地味な男——山田さんと付き合い始めたらしい。


私たちは、よく会社で彼氏の話をした。


「昨日、高梨さんと青山のフレンチに行ったの」


「へー、いいな」


「コース2万円だったよ。高梨さんが全部出してくれた」


「すごいね」


「佐藤さんは?山田さんとどこ行ったの?」


「えっと……駅前のカフェで、ご飯食べた」


「カフェ?」


「うん、すごく美味しかったよ。隠れ家みたいなお店で」


……インスタ映えしなさそう。


「ていうか、佐藤さん、もうちょっといいとこ連れてってもらいなよ。彼氏なんでしょ?」


「でも、私はあそこ好きだよ。落ち着くし」


「カフェでデートとか、学生かよ」


私は呆れた。



彩音に報告した。


「佐藤さん、カフェでデートだって」


「え、それはちょっと……」


「でしょ?私は青山のフレンチだったのに」


「さすが先輩です!」



週末、高梨さんとドライブに行った。


車はポルシェ。真っ赤なやつ。


「わあ、すごい!ポルシェ!」


「気に入ってくれた?」


「うん!インスタに載せていい?」


「もちろん」


私はポルシェの写真を撮りまくった。


「彼氏のポルシェでドライブ❤️」


投稿したら、すぐにいいねがたくさんついた。


港区女子仲間からも「すごい!」「羨ましい!」とコメントが来た。


彩音も「先輩すごいです!!」とコメントしてくれた。


最高。



翌週、佐藤さんに聞いた。


「山田さんって、車何乗ってるの?」


「えっと……普通の国産車だよ。何だったかな……」


「え、国産車?」


「うん。でも、運転丁寧で安心するよ」


国産車て。


「佐藤さん、彼氏に車くらい買い替えさせなよ。デートでダサい車とか恥ずかしくない?」


「え、私は気にならないけど……」


「甘いよ。男は見栄張ってなんぼでしょ」


佐藤さんは困った顔をしていた。



彩音に言った。


「山田さん、国産車だって」


「え……」


「ポルシェと国産車じゃ、格が違うよね」


「そうですね……」


彩音は頷いた。



付き合って1ヶ月目。


高梨さんとの2回目のディナーは、銀座の高級寿司屋だった。


「ここ、予約取れないって有名なんだよ」


「えー、すごい!高梨さんって顔広いんだね」


「まあね」


お会計は、たぶん5万円くらい。


でも、最後に高梨さんが言った。


「ごめん、財布忘れちゃった」


「え?」


「今日、俺が出すつもりだったんだけど……立て替えてもらっていい?後で返すから」


「あ、うん……」


私はカードで5万円を払った。


まあ、たまにはいいか。後で返してくれるって言ってたし。



同じ頃、佐藤さんは山田さんとジムでデートしたらしい。


「昨日、彼と一緒にジム行ったんだ」


「ジム?デートで?」


「うん。一緒にトレーニングして、その後プロテイン飲んで」


「……地味すぎない?」


「え、楽しかったよ。彼、体作りに詳しくて、フォーム教えてくれたし」


「デートでジムとか、信じられない」


私は呆れた。


「普通、高級レストランとかでしょ」


「でも、私は楽しかったよ」


佐藤さんはニコニコしていた。


楽しいって、ジムでしょ?


価値観が合わないわ。



彩音に報告した。


「佐藤さん、デートでジムだって」


「え……デートで……?」


「ありえないよね」


「ちょっと……」


彩音は微妙な顔をしていた。



付き合って2ヶ月目。


高梨さんから連絡が来た。


「実は、いい投資の話があるんだ」


「投資?」


「うん。俺の知り合いがやってるやつで、絶対儲かるって言われてて」


「へー」


「でも、ちょっと元手がいるんだよね」


「いくら?」


「30万くらい」


「30万……」


「俺も出すから、一緒にやらない?将来のためだと思って」


将来のため。


私たちの将来。


結婚したら、このお金も二人のものになるし。


「……分かった。出すよ」


「ありがとう。絶対に損はさせないから」


私は30万円を高梨さんに渡した。



彩音に自慢した。


「高梨さんと一緒に投資始めるんだ」


「え、投資ですか?」


「将来のためにね。二人で資産形成」


「すごいですね、先輩……」


彩音は感心していた。



同じ頃、佐藤さんは山田さんと家デートしたらしい。


「昨日、彼の家でご飯作ったの」


「家デート?」


「うん。一緒に料理して、一緒に食べて」


「……それ、デート?」


「うん。すごく楽しかったよ。彼、料理上手なんだ」


「男が料理とか……」


佐藤さんは嬉しそうだった。


家デートで料理って、お金ないの?


「ていうか、もっといいとこ連れてってもらいなよ。彼氏なんでしょ?」


「でも、私は家で一緒に作るの好きだよ。落ち着くし」


「貧乏くさいデートばっかりだね」


私は笑った。


佐藤さんは「そうかな……」と首を傾げていた。



彩音に言った。


「佐藤さん、家デートで料理だって。お金ないのかな」


「そうですね……」



付き合って3ヶ月目。


高梨さんから電話が来た。


「実は、親が入院しちゃって」


「え、大丈夫?」


「うん、大したことないんだけど……ちょっとお金がいるんだよね」


「お金?」


「入院費とか、色々かかって。20万くらい、貸してくれない?」


「20万……」


「すぐ返すから。お願い」


困ってるなら、仕方ない。


私は20万円を高梨さんに渡した。



同じ頃、佐藤さんは山田さんから誕生日プレゼントをもらったらしい。


「彼からプレゼントもらったんだ」


「何?ブランドバッグ?」


「ううん、アクセサリー」


佐藤さんが見せてくれたのは、シンプルなネックレスだった。


小さなダイヤが一粒ついてるだけ。ロゴはない。


「……地味じゃない?」


「え、私は好きだよ。シンプルで」


「ブランドじゃないでしょ、それ」


「うーん、どこのだろ……彼、『君に似合うと思って』って言ってた」


「ロゴもないやつ?ダサ」


私は笑った。


私の彼氏は、ティファニーのネックレスをくれた。ロゴばっちり。インスタに載せた。


彩音が「素敵です先輩!」とコメントしてくれた。



付き合って4ヶ月目。


高梨さんから相談された。


「俺たち、そろそろ一緒に住まない?」


「え、本当?」


「うん。いい物件見つけたんだ。港区のタワマン」


港区のタワマン!


夢みたい!


「でも、頭金がちょっと必要で……」


「頭金?」


「50万くらい。俺も出すから、一緒に出してくれない?」


「50万……」


「同棲の準備だから。将来への投資だと思って」


将来への投資。


一緒に住むんだ。結婚も近いってことでしょ。


「……分かった」


私は50万円を高梨さんに渡した。



彩音に報告した。


「来月から高梨さんと同棲するの。港区のタワマン」


「え、すごい!おめでとうございます先輩!」


「でしょ?夢みたいでしょ」



同じ頃、佐藤さんは山田さんと旅行に行ったらしい。


「箱根に行ってきたの」


「箱根?」


「うん、温泉旅行。すごく良かったよ」


「どこ泊まったの?高級旅館?」


「ううん、こぢんまりした宿。でも、ご飯すごく美味しくて」


「……安い宿?」


「高くはなかったかな。でも、すごく居心地よかった」


安い宿か。


「私だったら、星野リゾートとか行くけどな」


「うーん、私はあそこが好きだったよ」


佐藤さんは幸せそうだった。


格安旅行で幸せって、価値観が違いすぎる。



私は周りに自慢しまくった。


「彼氏、医者なの。年収2000万超えてるって」


「え、すごい!」


「ポルシェ乗ってるし、時計はロレックス。この前は銀座の高級寿司連れてってもらった」


「いいな〜!」


港区女子仲間にも自慢した。


「私の彼氏、マジでハイスペ。港区にタワマン買うって言ってる」


「やばい、勝ち組じゃん!」


「でしょ?私くらい可愛ければ、これくらい当然だけど」


彩音も「先輩、憧れます!」と言ってくれた。


みんなが羨ましがる顔が気持ちよかった。



親にも報告した。


「お母さん、私、医者と付き合ってるの」


「本当?良かったじゃない!」


「来年には結婚するかも」


「やっと安心できるわ。ちゃんとした人見つけて」


お母さんも喜んでた。


近所にも言いふらしてるらしい。「うちの娘は医者と結婚するの」って。



特に、佐藤さんの前で自慢するのが楽しかった。


「私、来月から彼と同棲するんだ。港区のタワマン」


「そうなんだ、すごいね」


「佐藤さんは?山田さんとは進展あった?」


「うん、彼、『結婚を前提に』ってうちの親に挨拶してくれたよ」


「へー。年収も分からないのに、よく親に会わせたね」


「うーん、年収は聞いてないけど……誠実な人だって分かってもらえたみたい」


「誠実ねえ。でも、結婚ってお金も大事だよ?」


「それは分かってるけど……私は彼がいいの」


佐藤さんは照れたように笑った。


本当、この子は甘い。


まあ、山田さんみたいな地味な男と結婚しても、苦労するだけだと思うけど。



ある日の昼休み。


彩音が駆け寄ってきた。


「先輩、これ見ました?」


スマホを見せてきた。


『株式会社ブライトテック、東証グロース市場に上場』


「IT企業が上場したって。社長がめっちゃ若いらしいですよ」


「へー」


ITとか興味ないんだけど。


「それが……この社長の写真、佐藤さんの彼氏に似てません?」


「え?」


私はスマホを奪い取った。


写真には、スーツを着た男性が写っていた。


……山田さん?


「え、待って」


記事を読んだ。


『代表取締役CEO 山田翔太(32)。大学在学中に起業し、10年で東証上場を果たした若き経営者——』


山田翔太。


佐藤さんの彼氏。


あの地味な男が、上場企業のCEO?


「資産100億超えらしいですよ」


彩音が言った。


「嘘でしょ……」


「本当です。この写真、佐藤さんの彼氏ですよね?」


「いや、でも、あの人……スーツも時計も安物で……」


「あ、この記事に『愛用の時計はパテックフィリップ』って書いてありますよ」


「パテック……?」


「高級時計です。1000万以上するやつ」


1000万の時計?


あのロゴもない地味な時計が?


「車も書いてあります。『移動は国産のセダン。派手な車は好まない』だって」


「国産車……」


「あえて国産車らしいです。『無駄なものにお金を使わない主義』って」


私は呆然とした。


あの「ハズレ」だと思った男が、資産100億の経営者?


私が「やめといた方がいい」と言った相手が?


「佐藤さん、大当たりじゃないですか……」


彩音が言った。



その日の夕方。


佐藤さんが会社に来た。


周りがざわついた。


「佐藤さん!ニュース見たよ!」


「彼氏さん、上場企業の社長だったの!?」


「すごいね!おめでとう!」


佐藤さんは困ったように笑っていた。


「あ、うん……ありがとう……」


「結婚するの?」


「うん、来月……」


「きゃー!おめでとう!」


私は遠くから見ていた。


声をかけられなかった。


彩音がこっちを見ていた。



その夜、私のスマホが鳴った。


知らない番号だった。


「もしもし?」


「橋本絵里香さんですか?」


「はい、そうですが」


「突然すみません。高梨隆一さんとお付き合いされている方ですよね?」


「え、はい……どなたですか?」


「私、高梨の妻です」


……妻?


「高梨が、また独身だと偽って女性を騙してるんですね」


「え、ちょっと待って……妻って……」


「あの人、結婚してるんですよ。私と子供が2人います」


頭が真っ白になった。


「そんな……だって、高梨さん、医者で……」


「医者?何言ってるんですか。あの人、無職ですよ」


「無職?ポルシェは……」


「レンタカーでしょ。いつもやる手口です」


「ロレックスも……」


「偽物ですよ。ネットで買った中国製の」


「高級レストランも……」


「カード限度額いっぱいなので、多分あなたが払わされてたんじゃないですか?」


……確かに、最近「財布忘れた」が多かった。


「あの人、借金が500万くらいあるんです。あなたからも色々もらってますよね?」


もらってる。


「投資の話」で30万。


「親が入院」で20万。


「マンション頭金」で50万。


合計100万。


「あの人、結婚詐欺の常習犯なんです。他にも何人も被害者がいます」


「そんな……」


「警察に相談した方がいいですよ」


電話が切れた。


私は、その場に崩れ落ちた。


医者じゃなかった。


独身じゃなかった。


金持ちじゃなかった。


全部、嘘だった。


私が「完璧な男」だと思っていた高梨さんは、詐欺師だった。


既婚で、無職で、借金まみれの。



すぐに高梨さんに連絡した。


電話は繋がらなかった。


LINEも既読にならない。


ブロックされてた。


逃げられた。


渡した100万は、戻ってこない。



私は震える手で、彩音に電話した。


「彩音……高梨さんが……詐欺師だった……」


「え、先輩、どういうことですか?」


「既婚で……無職で……全部嘘だったの……」


「えっ……」


「100万、取られた……」


「そんな……」


彩音は言葉を失っていた。



私は震える手で、インスタを開いた。


高梨さんとの写真がたくさん並んでいる。


「医者の彼氏❤️」


「ポルシェでドライブ❤️」


「港区タワマン同棲準備中❤️」


全部、嘘だった。



翌日。


会社で噂が広まっていた。


「橋本さん、彼氏が詐欺師だったらしいよ」


「え、医者じゃなかったの?」


「無職で、既婚で、借金500万だって」


「やば……」


「100万以上騙し取られたって」


「佐藤さんは100億で、橋本さんは詐欺師……対照的すぎる」


ひそひそ声が聞こえる。


私は俯いて仕事をしていた。


顔を上げられなかった。


彩音がこっちを見ていた。



港区女子仲間のグループLINEが鳴った。


『ねえ、橋本さんの彼氏、詐欺師だったって本当?』


『マジらしいよ。医者じゃなくて無職だって』


『ポルシェはレンタカーで、ロレックスは偽物w』


『やばwww 100万取られたってwww』


『港区女子の末路って感じ〜』


笑われてる。


私が自慢してた相手を、みんなが笑ってる。


『てか橋本さん、同僚の彼氏を「ハズレ」ってバカにしてたんでしょ?』


『その彼氏が100億で、橋本さんの彼氏が詐欺師って』


『ブーメランwww』


『因果応報ってやつ?』


彩音もグループLINEにいた。何も発言してなかった。


私はグループLINEを閉じた。



数日後。


港区女子仲間から、パーティの誘いが来なくなった。


「橋本さん、今度のパーティなんだけど……ごめん、人数いっぱいで」


「あ、そう……」


「また今度ね」


今度は来ない。分かってる。


お金がない女は、港区女子仲間から切り捨てられる。


それがこの世界のルール。


上辺だけの友達だった。


彩音も、最近は距離を置いてるみたいだった。



私のインスタが炎上していた。


高梨さんとの写真に、コメントが殺到していた。


『詐欺師と付き合ってて草』


『ポルシェはレンタカーでしたwww』


『医者(無職)』


『港区女子の末路』


『見る目なさすぎて笑う』


『同僚の彼氏を「ハズレ」って言ってた人が詐欺師に騙されてるの面白すぎ』


誰かが魚拓を取っていた。


まとめサイトに載っていた。


『港区女子が詐欺師に騙された話まとめ』


何千件もコメントがついていた。全部、私を笑う内容。


彩音がLINEしてきた。


『先輩、これ見ました……?』


まとめサイトのURLだった。


私はアカウントを削除した。



親にもバレた。


「絵里香、医者と結婚するって言ってたじゃない!」


「ごめん、お母さん……」


「詐欺師だったって本当なの!?」


「……うん」


「借金もあるんでしょ!?自分で何とかしなさい!」


「……うん」


「だから地に足つけた生活しろって言ったでしょ!ブランドだの港区だの、身の丈に合わないことばっかり!」


「……ごめん」


「近所に何て説明すればいいの!『うちの娘は医者と結婚する』って言っちゃったのよ!」


「……」


「恥ずかしくて外出られないわ!」


電話は一方的に切れた。


実家にも帰りづらくなった。



警察に相談した。


「詐欺被害ですね。お気持ちは分かります」


「お金、戻ってきますか?」


「うーん、難しいですね。民事になるので」


「じゃあ、どうすれば……」


「弁護士に相談することをお勧めします。ただ、相手に資産がないと、回収は難しいかもしれません」


「……」


「他にも被害者がいるみたいなので、情報共有はできるかもしれませんが」


お金は戻ってこない。


100万円。


それと、ブランド品のローンが300万。


合計400万の借金だけが残った。



佐藤さんの結婚式は、帝国ホテルで盛大に行われたらしい。


私は呼ばれなかった。


当然だ。


婚活パーティで、あれだけ悪口を吹き込んだのだから。


彩音からLINEが来た。


『佐藤さんの結婚式、すごかったらしいですよ』


『帝国ホテルで、ドレスはヴェラ・ウォン』


『来賓が大企業の社長とか投資家とかばっかりで、すごい人脈だったって』


『佐藤さん、相変わらずナチュラルメイクで、すごく綺麗だったらしいです』


『旦那さんも、地味だけど穏やかな感じで、すごくお似合いだったって』


『学生時代からの友達がスピーチしてて、泣いてたらしいですよ。「美咲は昔から変わらない」って』


私は既読スルーした。



あれから2年。


会社の給湯室で、中村彩音が別の後輩と話していた。


「ねえ、橋本先輩と佐藤さんって、同期だったんでしょ?」


「そうそう。二人のこと、私ずっと見てたんだよね」


「え、どういうこと?」


「橋本先輩、私のこと後輩として可愛がってくれてたんだけど……正直、途中から色々見えてきちゃって」


「見えてきたって?」


「橋本先輩、佐藤さんのことめちゃくちゃバカにしてたんだよね。『地味咲』って呼んでたし」


「うわ……」


「『ユニクロでしょ?』とか、『もっとメイクしなよ』とか」


「ひど……」


「でもね、佐藤さんの服、実はエルメスとかボッテガとかだったの。ロゴないだけで」


「え、マジ?」


「私、途中で気づいたんだよね。橋本先輩は全身ロゴだらけだったけど、全部ローンだったし」


「うわ……」


「見た目も、橋本先輩は派手メイクだったけど、すっぴん見たら普通だったの」


「佐藤さんは?」


「ナチュラルメイクだけど、素肌がめちゃくちゃ綺麗で。すっぴんでも変わらないの」


「あー、本当の美人ってそうだよね」


「そう。橋本先輩、佐藤さんに『もっとメイクしなよ』とか言ってたけど、それ逆じゃんって」


「ね」


「生活も全然違ったんだよ。橋本先輩は毎晩六本木で飲み歩いて、脂っこい物ばっか食べて」


「佐藤さんは?」


「ヨガとジムで体作って、自炊で健康的な食事。だから肌綺麗だったの」


「お金かけずに綺麗になってたんだ」


「そう。橋本先輩は美容に毎月5万かけてたけど、肌荒れひどかった」


「本末転倒じゃん……」


「しかも橋本先輩、佐藤さんの物借りて返さなかったりしてたんだよね」


「え、サイテー」


「傘とか充電器とか。傘なんか『なくした』で終わり。私、見てたの」


「ひど……」


「その傘、実はフォックスアンブレラの3万円のやつだったんだよ」


「やば……」


「ハンドクリームも『ちょうだい』って取ってたけど、あれイソップの高いやつだったし」


「橋本先輩、気づいてなかったの?」


「ロゴがないと価値が分からない人だから」


「あー……」


「合コンでも、佐藤さんを数合わせで呼んで、いい男は自分が独占してたの。私も一緒に行ってたから見てた」


「マジで?」


「婚活パーティでは、佐藤さんの悪口を男性陣に吹き込んでたんだよね」


「『メンヘラ』とか『男癖悪い』とか」


「私、横で聞いてたの。さすがに引いた」


「サイテーすぎる……」


「でも結局、佐藤さんは100億の社長と結婚して」


「橋本先輩は詐欺師に100万取られた」


「因果応報ってやつだよね」


「ね。橋本先輩、佐藤さんの彼氏を『ハズレ』『スーツも時計も安物』ってバカにしてたんだよ。私に何回も言ってきた」


「その時計、1000万超えのパテックだったんでしょ?」


「そう。ロゴがないから橋本先輩には分からなかったの」


「本物を見る目がなかったんだね」


「橋本先輩はロゴがないと価値が分からないから。自分の彼氏のロレックスは偽物だったのにね」


「それも見抜けなかった」


「見る目なさすぎだよね……」


「ていうか、橋本先輩って今どうしてるの?」


「まだ婚活パーティ通ってるらしいよ」


「え、まだ?」


「『次は年収3000万以上の本物を見つける』って言ってるって」


「……学習しないね」


「港区女子仲間は全員離れたし、インスタは炎上して消したし、親ともギクシャクしてるのに」


「それでもまだ婚活してるんだ」


「生活レベル下げられないんだって」


「32歳で借金持ちで、それでもまだ高望みしてるの?」


「……正直、見てられないんだよね」


「え?」


「周りの女の子どんどん若くなってるのに、本人だけ気づいてないっていうか」


「痛いね……」


「私も昔は先輩として慕ってたけど、今はもう……ちょっと近づきたくないっていうか」


「分かる」


「見てて痛々しいんだよね。本人だけが『私は悪くない』『まだイケる』って思ってて」


「うわ……」


「佐藤さんは何か言ってた?橋本先輩のこと」


「何も言ってないって。悪口も、『可哀想』とかも」


「それが逆にキツいね」


「ね。完全に眼中にないんだろうね」


「結局、本物を見抜けたのは佐藤さんだったってことか」


「橋本先輩はブランドとか年収とか、外側ばっかり見てたから」


「佐藤さんは中身を見てた」


「その差が、今の差になったんだよね」


「ほんとそれ」


「……あ、来た。仕事しよ」


後輩たちは散っていった。



私は聞こえないふりをして、コーヒーを入れた。


全部聞こえてた。


彩音が言ってたこと。全部本当のこと。


でも、私は悪くない。


騙した高梨が悪い。


佐藤さんは、たまたま当たりを引いただけ。


運が良かっただけ。


私の価値は下がってない。


次こそ、本物を見つける。


今夜も婚活パーティがある。


年収3000万以上限定のやつ。


今度こそ、本物の医者か弁護士か経営者を捕まえる。


私は給湯室を出て、化粧直しに向かった。


つけまつげを付け直して、カラコンを確認して、リップを塗り直す。


鏡の中の私は、完璧。


……最近、ちょっと肌荒れがひどいけど。コンシーラーで隠せば大丈夫。


今夜の服は、まだローンが残ってるDiorのワンピース。


靴は、リボ払い中のJimmy Choo。


バッグは、先月やっと払い終わったCHANEL。


完璧なコーディネート。


これで男を落とせないわけがない。


「次は3000万以上の本物を見つけてやる」


私は自分に言い聞かせて、会社を出た。


六本木のパーティ会場へ向かう。


周りの女の子は、どんどん若くなっていく。


22歳、23歳、24歳……。


私を見る男の目が、変わってきてるのは分かってる。


でも、やめられない。


「次こそ」って、思ってしまうから。



(完)

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回は「ブランドロゴ」にしか価値を見出せない女性が、本物の価値を見抜けずに自滅していく姿を描きました。

主人公・絵里香が最後まで「自分が悪い」と思わず、ボロボロになってもまだパーティへ向かう姿に、人間の執着の怖さを感じていただければ幸いです。


反対に、美咲のように「ロゴに頼らずとも上質なもの」を知っている女性が最後に報われる展開は、書いていてとても爽快でした。


「スカッとした!」「自業自得すぎて震える」と思っていただけましたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価いただけると、執筆の励みになります!


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