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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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8/20

文化系とは?!(後編)

「よし!! 次は有酸素運動だ、俺について来い!!」


 生き生きとした遠山先輩はそう言って振り向くと、後ろを確かめもせずに走り出した。


「「「何処へ!?」」」


 呆気に取られる僕達1年生3人。


「正門を左に行くと、うちの運動部用グラウンドとその先に自然公園があるから。そこの遊歩道を周って帰ってくるのよ」


 そう言って倉野先輩と宮前先輩も走っていった。


(なんで自然に受け入れているんだろう)


 そう思いながらも僕達も後を追って走り出したのだった。




 校庭を周って校門を抜けると、まずは下り坂が待っていた。


 僕達の通う高校はやや小高い丘の上に位置していて、右手側に行くと住宅街や駅のある中心部につながり、今向かっている左手側の奥の方には、まだ自然が残る山や、のどかな風景が拡がる田園部もある。


(久しぶりに走ると気持ちいいな) 


 風を受けながら走っていると、陸上部だった中学時代を思い出して、気分が上がってきた。


 運動部用グラウンドの横を通り抜け、5分程で説明されていた自然公園が見えてくる。


「こんな近くに豊かな自然の場所があったのか」


 いつもは、街側から学校までの往復だったので、知らなかった景色。


 案内図には、子供の遊具がある芝生広場や少し広めの池と、その周りを巡る遊歩道があるようだ。


 更に奥にはドッグランやキャンプ場も併設されているようで、本格的なアウトドア体験も出来るらしい。


 公園の入り口を抜けて、視界が開けた遊歩道の先の方に、倉野先輩と宮前先輩の姿が見えた。


 どうやら恒例行事の様で、このコースを走るのに慣れているみたいだ。


 僕も少しペースを上げようとして、あとの2人を振り返ると、少し遅れてかけているようだ。


 こちらを気にしている様子の僕を見て、大山君が声をかけてきた。


「先に行っていいから」


 横でうなずく矢口君はあまり運動が得意でないのか、結構辛そうにしている。


「了解、先に行くね」


 そう2人に声をかけて前を向き、ペースを上げようとした時、横の木陰にカメラを構えた都築先輩の姿が見えたような気がした。


「フフフ、素晴らしい参考資料」


 ⋯⋯僕は何も見ていないし、聞いてもいない。


 そう自分に言い聞かせ、僕はただ無心になって先を急いだ。




 やがて遊歩道を1周し、再び学校の施設が見える頃に僕は前を走っていた倉野先輩と宮前先輩に追いついた。


「お二人とも結構早いですね」


「オリーちゃんといつも散歩してるから」


「あたしも〜」


 そんな会話をしながら最後の坂を上がり、スタート地点に戻って来ると、タオルを持った竹内部長と松井先輩が談笑しているのが見えた。


「あれっ。遠山先輩はどうしたんですか」


「アイツは物足りないからと言って、サッカー部の連中と走り込みに行った」


 ⋯⋯意味がわからない。


「まだ戻って来ない部員もいるし、初めてだから今日はアガリにしようか」


 気付けば、結構な時間が経っていた。


「牧田は後の2人をよろしくな。僕はちょっと写真部の方にいってくるから」


 そう言い残して松井先輩は先に行き、女性陣も先に着替えるという事で、去っていった。


 それから5分程遅れて、後の2人も戻ってきた。


「おつかれー」


「他の先輩達は?」


「少し用事が出来たから今日は終わりだってさ」


「まさか天文部で走り込みがあるとは思わなかったよ」


「この先大丈夫かな」


 口々にそんな会話を交わしながら部室に戻ろうとした時、向こうの方から松葉杖をついた幸田先輩の姿が見えてきた。


 そういえばストレッチの時までは居たけれど、すっかりその存在を忘れていた。


「幸田先輩、どうしたんですか、その足」


「坂を下りる時にちょっと挫いちゃってね⋯⋯」


 そう言って情けなそうな顔を見せる先輩を前に、僕達はただ、力無く愛想笑いをするのだった。

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