ここって天文部ですよね?
今回途中に、非常に読みにくい箇所がありますが、面倒でしたら読み飛ばして頂いても本編には一切影響ありません
翌週、僕はあらためて、別棟へと向かっていた。
休日に少し調べてみたけれど、そもそも普段の天文部の活動がよくわからない。
「大体、星が見えるのって夜だよな」
そうなのだ、大前提として星が見えなければ活動出来ないじゃないか。
紹介の時は星の写真や文化祭の催し物があったけど、平日の放課後は何をしているのだろう。
最初は、結星先輩の事しか頭に無かったが、変な角度から天文部の活動に興味が湧いてきた僕は、いつの間にか、体験入部くらいならしてみようかな、なんて気持ちにもなっていた。
この間先輩と別れた場所から上がってみると、幾つかの部室が並んでいた。
僕の他にも何人か様子を見に来た新入生らしい姿や、慣れた様子で部室を出入りする先輩方の姿も見える。
「天文部は3階にあるって言ってたよな」
ちょうどその時、上から降りてくる2人連れの会話が耳に入ってきた。
「あの先輩の占いよく当たるから」
「結構本格的だったけど、あれっていいのかな」
「わかんないけど⋯⋯」
「⋯⋯⋯」
後半はよく聞こえなかったけれど、この学校に占い部なんてあったかな?
別棟の3階は、幾つかの部室と、後は音楽室や美術室など、多分こんな機会が無ければ1度も訪れなかったかもしれない。
とりあえずプレートを見ながら進むと天文部のプレートを見つけた。
(妙に静かだけど、誰もいないのかな)
とりあえずノックすると妙に抑えた声色の答えが返ってきた。
「⋯⋯どうぞ」
(なんかヤバそうな声だけど大丈夫か?)
少し不安になったけれど、返事があった以上は、入るしかない。そう思い扉を開けた僕の目に飛び込んできた光景は⋯⋯。
「⋯⋯いらっしゃい。⋯⋯どのようなご要件で」
「?!」
壁にはこの間も見た幾つかの星の写真と奥の方には観測機材らしき物、資料が置いてあるだろう本棚。
そして机には怪しげな模様が書かれた地図のような物があり、横にはノートパソコンを拡げた女性の姿が。
西日がさしていて、長い髪と眼鏡をかけているらしい事はわかったけれど、表情が見えづらい。
「⋯⋯男の子1人は珍しい。⋯⋯何を占って欲しいの?」
なんで占い?
「あの、ここって天文部であってますよね?」
そう言われた女性は少し残念そうにしながら答えを返す。
「⋯⋯なんだ、そっちの方か。⋯⋯見学希望?」
(なんで残念そうなんだこの人は。天文部がオマケみたいな言い方だけど)
そんな事を思っていると知られたら、めんどくさそうなので、手短に用件だけを伝える。
「あの、こちらに倉野先輩という方いらっしゃいますか」
「なんだ、倉野君の見学希望か」
(この人なんか勘違いしてない?)
話が変な方向に進みそうなので、強引に修正を試みる。
「すいません。さっき占いと言ってましたけど、ここ天文部ですよね」
その時、何故か眼鏡の奥の瞳が輝きを増したように見えた。
「君は天文学と占星術には密接な関係があるというのを知らないのかい?なんと嘆かわしいいいかいまず占星術の起源は紀元前2千年紀の古代メソポタミアだ古代都市バビロンでは星や惑星といった天体は神々のお告げを解釈するために使われていた⋯⋯」
「また西洋占星術とは別にインドにおいてはもともと白道上の月の位置に着目したナクシャトラと呼ばれた東洋系の暦法を用いた占星術がありこちらはヘレニズム時代にギリシアから太陽と月と当時知られていた5惑星とラーフケートゥといった九曜十二宮と十二室を用いたホロスコープを⋯⋯」
(なんか変な火がついちゃった)
さっきまでのぼんやりとした口調から一転、早口で喋りまくるその言葉は、もはや何かの詠唱のようで僕はどうやって逃げ出そうかとしか頭に無かった。
「すいませーん。遅れました」
後ろで扉の開く音と共に、聞き覚えのある声。
「すいません。助けてください」
僕は思わず振り向いて、部室に入ってきた倉野先輩に情けない声をかけたのだった。
結局入部まで書けなかったという事で、タイトル回収の為に、明日の21時頃第5話、『新天文部員誕生』を投稿します




