合宿二日目ーそうだ牧場行こう(後編)ー
「ヒツジを飼っている家もあるんだ」
「なるほど〜」
その後も、ステラにオーストラリアでの生活を聞きながら、ふれあい牧場をまわる僕達。
日本とはまた違う豊かな自然の話を聞いていると、時々スケールの大きさに驚かされたりもする。
「ね〜。コアラやカンガルーは〜?」
「カンガルー トキドキ」
宮前先輩の言う通り、オーストラリアといえばまずはコアラだけど、野生では滅多に見られないのだとか。
カンガルーは夜に油断していると道路を跳ねている事もあるらしい。
日本でも山の方では鹿やイノシシにぶつかったとか聞いた事あるけれど、そんな感じなのかな。
「アト、ウマ イマス」
「馬?」
なんでも、週末のレクリエーションで結構馬に乗る人も多いのだとか。
「あっちに乗馬体験もあるよ〜」
そう言って宮前先輩が指さす先には、併設されている牧場の看板が見えた。
なんだか遠山先輩が居たら絶対に行きそうだけれど⋯⋯。
「去年は大変だったのよ」
結星先輩の説明によると、遠山先輩と佐藤先輩が挑戦して、調子に乗った遠山先輩が早駆けさせそうになり、つられた佐藤先輩が死にそうになっていたらしい。
「そんな事が⋯⋯」
もう少し平和なイベントの方がいいのかも。
「じゃあこっちにしようか〜」
そう言って案内されたのは、乳しぼり体験とアイスクリーム作り体験教室だった。
「Oh!milking ワタシ デキマス」
そう言って目をかがやかせるステラ。
「ステラって色々アクティブなのね」
「ユラ、ハヤク」
宮前先輩を先頭に、跳びはねる様なステラと、その勢いにのまれそうになりながら付いていく結星先輩。
その様子を眺めている僕も、普段では出来ない体験の期待に胸を躍らせるのだった。
「⋯⋯大きい」
初めて生で見る乳牛は思っているよりも迫力があった。
時折、尻尾をのんびりと動かしながら、慣れた様子でつながれているけれど、暴れたりしたら僕なんて、簡単に潰されそう。
「危険ですので、後ろから近付かないようにして下さいね」
案内係の説明にしたがいながら、そっと牛のお腹に手を伸ばしてみる。
その指先からは、思っていたよりも柔らかな感触と温もりが伝わってきた。
「⋯⋯こんな感じ?」
教えられた通りに、親指と人差し指で付け根をつまんでから、下の方へ向けて中指、薬指、小指の順番に押し出すイメージで握っていく。
「あれっ」
「んもー」
なんだかくすぐったそうにしているけれど、なかなかうまく出来ない。
他のみんなはどうだろうと周りを見てみると、結星先輩と、宮前先輩は少しずつだけれど、絞れているみたいだ。
「カズキ、Use a snapping (スナップを効かせて)」
声のする方を見ると、勢いよく絞られているミルクと笑顔のステラ。
「ステラ、ジョウズ」
スナップって事は手首をひねる?
「こんな感じかな⋯⋯」
試しに少し思いきって手首をひねりながら、下へ引っ張ってみると、1筋の白いしぶきが流れてきた。
「ぶもっ」
なんだか少し足ぶみを始めたみたいだけれど、大丈夫かな。
「どう、順調〜」
気が付くとステラと宮前先輩は、もう体験が終わったらしい。
「も、もう少しです⋯⋯」
そう答えながら、焦って手を動かしていると、突然後頭部をパシっと、誰かにはたかれた様な衝撃があった。
「?!」
「も゛〜」
「牧田君大丈夫?」
結星先輩の声がしたけれど何が起こったの?
「カズキ、レディ ハ ヤサシクデス」
そう言って笑うステラと宮前先輩の笑い声も聞こえて来た。
どうやら僕は、力を入れすぎて、絞っていた牛に尻尾ではたかれたのだとか。
「動画撮っていたから後で見せてあげるね〜」
「カズキ、オモイデ デキマシタ」
うん、思い出じゃ無くて、黒歴史って英語でなんて言うんだろう。
そんな事を考えながら僕はなんとか乳しぼり体験を終えたのだった。
次はあのアトラクションが?!
次回『スイカ割り始めました』は2月13日(金)21時頃更新予定です




