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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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夏合宿初日(夏の星空)

「やあ。今年も無事に新入部員は集まったみたいだね」


 夕食を終えて、談話室でひと休みしながら、ミーティングをしていると、竹内先輩と松井先輩と共に、もう少し歳上の大学生っぽい雰囲気の人が入ってきた。 


「江藤先輩、ご無沙汰しています」


 幸田部長の説明によると、竹内先輩達の、もう1つ前の世代の部長だとか。


 今日は竹内先輩と松井先輩を乗せて、合宿の様子を見に来てくれたらしい。


 今は大学で物理学を専攻しながら、趣味で天文サークルも続けているらしい。


「凄い方なんですね」


「別にただのアマチュアだよ。星の事が好きだったら、みんな同じさ」


 元々は結星先輩がきっかけだったなんて、とても言えないけれど、それでも最近は頑張っているつもりだ。


「江藤先輩、よろしくお願いします」


「よろしくね」


「⋯⋯しばらく見ない間に、倉野君以外の事もちゃんと考える様になったんだね」


 竹内先輩、色々とぶち壊すのやめてもらっていいですか?!


「カズキ、ラブズ ユラ?」


 ステラ、なんでそんな日本語わかるの!?




「そろそろ上に行こうか」


 ひと通り顔合わせも無事(?)に終わり、僕達はあらためて屋上へと登った。


「Oh,Big dipper!(あれが北斗七星)」


 ステラが暮れ始めた夜空を指して、興奮気味に叫ぶ。


 その指先を追っていくと、少し低めの空に、大きなひしゃくの形が見えた。


 そうか、北斗七星はオーストラリアではちゃんと見られないんだっけ。


 僕達が南十字星を観測出来たら、こんな感じなのかも。


「良かったね、ステラ」


 つられて、みんなの顔もほころぶ。


「私も⋯⋯」


 よく聞こえなかったけれど、何気なく呟いていた結星先輩の言葉の意味は、その時の僕にはまだわからなかった。




「それじゃあ、次は夏の大三角形を観察していきます」


 江藤先輩や竹内先輩達、歴代部長に見守られて、少し緊張気味の幸田部長が案内をしていく。


「まずはベガ」 


 GWの時は何もわからず、言われるがままにみんなの後を追って、空を眺めていた。


 最初に見付けやすいのは、暗くなり始めた東の空に青白く輝く星。


「次に右下の方にアルタイル」


 空にはまだ少し夕焼けが残っていたけれど、その中に、少し黄色っぽい星が見えてきた。


「もう1度、今度は左下」


 ベガから、天の川を挟む様にして視線を移していくと、星座の名前ーーはくちょう座にふさわしい、白くて優しい輝きのデネブ。


「Up so high!(あんなに高い所に)」


 南半球のオーストラリアでは、ベガは一応見えるけれど、残りの2つは難しいのだとか


「ワタシ ニホン キテ ヨカッタ」




「それじゃあ次は、大三角形から干潟星雲を探してみようか」


 資料室で見た写真を思い出す。


「えっと、確かデネブから南の方へ向かって⋯⋯」


 あの時、大山君から教わった通りに天の川の流れを辿っていくと、やがて星の密度が濃くなり、線を結ぶとティーポットを思わせる星の形が浮かび上がる。


「あれがいて座」


 その注ぎ口から湧き出るかの様に、空に拡がる灰色のモヤの様な固まり。


「あれだ」 


 双眼鏡を目に当てると、その姿はより鮮明になった。


 無数に輝く光の洪水、写真の様に鮮明では無いけれど、かえってその雄大さを強く実感出来る。


「あれが干潟星雲」


「こちらを覗いてごらん」


 江藤先輩と松井先輩がセッティングしてくれていた、撮影用のファインダー越しにその姿を見ると、資料室で見た光景が蘇る。


「もう1つ」


 幸田部長と佐藤先輩がシュミット式望遠鏡を操作して見せてくれたのは、干潟星雲よりも鮮明な赤さと3つに裂けた様な黒い溝がある星雲だった。


「三裂星雲だよ」


 代わる代わる、その姿を覗きながら、僕は普段よりもはっきりと見える星空の中に吸い込まれていきそうになっていた。




 

まだまだ合宿編は続きます

次回『朝からサバイバル!?』は1月23日(金)21時頃更新予定です

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