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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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夏合宿初日(探索編)

「資料室はこっちかな」


 食後のひと休みの後、僕と大山君、矢口君の1年生組は、案内板を頼りに施設内の見学に出かけていた。


 図書室を改装した資料室には、この高見原の由来や郷土の歴史、そして天体観測に関する資料も収められていると説明されていたからだ。


「屋上には、観測室もあるんだって」 


 矢口君の言う通り、街の灯りも少ないこの場所は、アマチュア天文家達も季節を問わず訪れているらしい。


「うん、そちらも後で確認しておこう」


 このメンバーだと、自然と大山君が先にたって計画を立ててくれる。


 いつもは高塚さんとペアで行動している事が多い矢口君も、今日の彼女は、結星先輩やステラ達と一緒に行動しているので、部活の事に集中しているみたいだ。


 


 資料室と書かれた部屋の扉を開けると、壁一面には、この場所で撮影されたらしい天体の写真が並んでいた。


「こんな綺麗な星空もあるんだ」


 そこには薄赤紫色の雲みたいな輝きが、今でもゆっくりと拡がっている様に見える夜空が写し出されていた。


「これは干潟星雲だね、天の川の近くに見えるよ」


 矢口君の後に、大山君が更に続けてくれる。


「多分、双眼鏡でも見えるはず」


 続いては、もう少し赤みと明るさを増した写真。


「なんだか大陸みたいな形だね」


「うん、これは実際、北アメリカ星雲と呼ばれていたりするよ。夏の大三角形と一緒に観測出来る」


 その後も、2人の説明を聞きながら僕達は室内を見て回った。


「こちらに彗星の写真もあるよ」


 矢口君の声を辿ると、さっきまでの華やかな写真とはうって変わって、暗い夜空を切り裂く様に長い尾をひいている輝き。


 その光は、どの姿も負けず劣らずの個性的なその存在を主張している。


「流星群もうまく観測出来るといいね」


 そうだった、夏の星座の他にも流星群もテーマだった。


 どうやらピークの時間帯は深夜に近いらしく、起きていられるかが心配だけれど、写真では無く実際にこの目で確かめてみたい。




「そろそろ観測室の方も覗いてみようか」


 屋上の観測室へと続く階段を登りながら、僕はさっき展示されていた星達をこの目で実際に見られる場所があると言う事が、少し信じられない様な気持ちになっていた。


「あれっ、君達も来たんだね」


 観測室には幸田部長と佐藤先輩の姿があった。普段はドタバタしていたりするけれど、さすがは天文部の両エース。


 2人の背後には、架台に取り付けられた、黒光りする筒の様な機材が見える。


 大きさはちょうど高塚さん位はあるのだろうか。


 側面からは補助用なのか、スコープの様な物も出ていて、普段、部室にある望遠鏡よりも圧倒的な存在感があった。


「こんなに大きいんですね」


「これは、ニュートン式の反射望遠鏡だよ。口径はそこまで大きくは無いけれど、まあ標準的なサイズだと思う」


 さすがは幸田部長、観測機材に関する知識はは天文部一だ。


「これって下から覗くんじゃ無いんですね」


「側面に突きだした部分が接眼レンズだよ」


 スコープだと思っていた部分は覗き窓だったのか。


 GWの時は、衛星や1等星がメインだったけれど、確かにこちらの方が色々と詳しく見れそうだ。


「こっちにあるのも凄いぞ。」


 そう言う佐藤先輩の方を見ると、サイズは小ぶりだけれど、複雑そうな機材と共にセッティングされている望遠鏡があった。


「シュミット式望遠鏡だ。視野が広いから、星団の観測や写真撮影にも向いている」


「望遠鏡にも色々あるんですね」


「そうだな、他にも種類はあるけれど、今回の目玉はこの2つだ」


 さっきの資料室で見た写真達が、もう一度、頭の中に蘇る。



「お楽しみは後にして、そろそろ先に夕食の時間かな」


 そう言われて気付くと、いつの間にか、窓からは西日が差し込んでたのだった。


次回で初日編は完結

『夏の星空』は1月16日(金)21時頃更新予定です

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