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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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夏合宿初日(出発編)

「おはようございます」


「おはよ〜」


「おはよう」


「Hello!」


「?!」


 合宿当日の朝、集合場所の部室に顔を出した僕を出迎えたのは、いつものメンバー⋯⋯だけじゃなかった。


「紹介するわね。私の家にホームステイしてるステラよ」


 結星先輩に紹介されたのは少し癖毛のブロンドの女の子。


「ステラ デス。ヨロシクネ」


 よろしくって英語でなんて言うんだっけ??


「大丈夫よ、少しは日本語もわかるから」


 結星先輩にそう言われて、なんとか自己紹介を済ませる。


「おはようございますっ。あれっ?」


 続いてやって来た矢口君と高塚さんも目を丸くしている。


「ハローっ! アイム アスミ タカツカ よろしくねっ」


 高塚さんが半分以上ボディランゲージでやり取りしながらコミュニケーションをとっているのを横目に見ながら、結星先輩に聞いて見た。


「ステラも、もしかして合宿に?」


「そうよ。元々SNSで偶然知り合ったのだけど、彼女の名前も星に関係している所から仲良くなってね⋯⋯」


 どうやら星に関係するコミュニティで親交を深めていて、夏休み(向こうでは冬休み?)中に北半球の星空を観測したいとの事で今回の合宿にも参加する事になった様だ。


 いつも賑やかだけれど、更に賑やかになる予感を胸に僕達は出発準備を整えるのだった。


 


「なんですか?この重い荷物」


 手分けして機材をバスに積み込んでいる最中、ひときわ大きい登山用みたいなリュックがあった。


「すまん!!それは俺の私物だ!!」


 僕の荷物といえば、せいぜい着替えくらい、他の部員達を見ても、少し大きめのスポーツバッグ程度なのに⋯⋯。


「遠山先輩、予定は2泊3日ですよね?」


「備えあれば憂い無しだ!!山ではほんの少しの迷いが命取りだぞ!!」


 ちゃんと泊まる場所もあるのに、何でサバイバル前提なんだろう。


 とりあえずこれ以上の事は気にしない事にした僕だった。 



「それではいよいよ出発ですが」


 バスの前で高木先生が出発前の挨拶をする。


「今年は海外からのお客様もいます。様々な交流の機会を大切にしつつ、節度を持って楽しみ、かつ、学んでもらいたい」


 節度を持ってという所で先生の視線が遠山先輩と佐藤先輩の方を向いていた気がするけれど、大丈夫だよね。





 やがて出発したバスは、宙柱神社に到着した。


「あれっ、もしかして都築先輩も参加するんですか?」


「⋯⋯まずは⋯⋯ここで⋯⋯安全祈願のお参りを⋯⋯するのが恒例行事⋯⋯なんだ⋯⋯」


 隣の幸田部長が説明してくれるのはいいけれど、なんだか顔色が⋯⋯、もしかしてバス酔い!?


「大⋯⋯丈夫。薬⋯⋯飲んだ⋯⋯」


 これ大丈夫じゃないやつだと思う。


「とにかく外に出ましょう。新鮮な空気を」


 僕が心配していたのは部長の事だったのか、それとも2次被害を恐れての事だったのかは聞かないでおいて欲しい。


「フフフ、いらっしゃい。」


「⋯⋯都築先輩、なんですか?そのお面は」


 とにかく、幸田部長を連れ出した僕の目の前には、巫女装束のキツネが立っていた。


「⋯⋯私はこの神社の御使い」


 最初の口調でバレバレです。


「ぶはっ!」


 幸田部長の顔色が紫に。


 さっきまでの青ざめた様子が、思いがけないお出迎えで一気に臨界点を迎えようとしている?!


「Wow!shrine(巫女さんだ) maiden!!」


「フフフ、えっ!?」


「So cute(可愛い)!」


 都築先輩がステラに不意打ちをくらっているのを背中で感じながら、僕は部長をトイレへと連れて行くのだった。


 その後参拝を終えて、あらためて都築先輩に聞いてみた。


「そのお面、わざわざ用意して待っていたんですが?」


「フフ、この前の縁日で売れ残っていたから」


 微妙にいつもの不穏さが無かったのは、ステラに毒気を抜かれたからなのだろうか。


 そんな事を考えながらバスに乗り込み、窓から先輩の方を見ると、鳥居の向こう側にもう1人キツネのお面を被った少女が見えた気がした。


「あれっ?!」


 見間違い? とにかく目的地に着く前から色々あった夏合宿はこうして始まりを告げたのだった。



『到着編』は明日21時頃投稿予定です


今年もどうぞよろしくお願いします

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