縁日へ行こう(後編)
「ゴメンなさいっ。お待たせしましたっ」
その後も屋台のメニューを食べ尽くす勢いの遠山先輩や、SNS用の写真を撮ろうと色々試行錯誤している宮前先輩、それにつき合わされている結星先輩と共にひと通り食べ物系の屋台を周った頃に矢口君と高塚さんもやって来た。
「愛純ちゃん、いいな〜。 似合ってる〜」
宮前先輩の言う通り、しっかりと着付けをしてもらった浴衣姿の高塚さん。
いつもは元気いっぱいといった感じだけれど、今日はレトロ調の落ち着いた白系地に薄色の花柄をあしらった、少し大人びた感じ。
その隣で少し疲れた様子のこちらも浴衣姿の矢口君。
聞くところによると、高塚さんのお母さんがコーディネートしてくれていたそうなのだけれど、どうやら色々とおもちゃにされて遊ばれていたらしい。
一瞬、いつかの男の娘姿が浮かんだけれど、深く考えない様にしよう。
「よし!! そろそろ食後の運動だ!!」
どうやら遠山先輩のエネルギー補給は終わったらしいけれど、助っ人に行っていた疲れとかは無いのだろうか。
そんな事を思いながら僕達は射的の屋台へと向かう遠山先輩の背中を追っていった。
「らっしゃい。華やかな団体さんだねー」
女性陣を見ながら少しにやけた感じの係員が渡してくれたコルク銃、その背後には、積み上げられたお菓子や謎の箱が並んでいる。
「あの箱はなんですか?」
「あれは特別賞だけど、難しいよー」
「ねえ、あれ見て〜」
宮前先輩が指さす方を見ると特等にはテーマパークの優待券もあるみたいだ。
「ああいうのって、見せてるだけでしょ〜」
そう言いながら銃を手に取る宮前先輩、めちゃくちゃやる気なんですけれど。
「全然当たらないね〜」
「これ、結構難しいわね」
先陣をきった宮前先輩と結星先輩がやってみたけれど、なかなか思い通りに弾が飛んで行かなかったり、当たっても、うまく倒れてくれない様だ。
「なんだ!! 2人とも、気合いが足りないぞ!!」
遠山先輩、そういう問題なのでしょうか。
「今度はあたしやりますっ」
「愛純、大丈夫?」
変わって矢口君と高塚さんが銃を手に取る。
「こういうのって、どこを狙えば⋯⋯」
「当たれって狙えばなんとかなるかもっ」
そう言って高塚さんが撃ったコルクの弾は、お菓子の角に当たって逸れたと思ったけれど、角度が変わって、特別賞の箱をかすめていった様に見えた。
「惜しかったねー」
そう言って銃を回収しようとした係員の背後でコトリと何かが倒れる音がした。
「えっ!?」
「やったーっ」
どうやら跳ね返り具合が良かったらしく、高塚さんは見事に特別賞を撃ち抜いていたみたいだ。
「おめでとうございまーす。特別賞ゲットー」
カランカランと派手に打ち鳴らされる鐘の音と嬉しそうに受け取る高塚さん、無欲の勝利ってこういう事なのかも。
順番を待っていた遠山先輩と僕はなんだかその後に撃つのがためらわれて、射的を後にしたのだった。
「よし!! ならば金魚すくいで!!」
「それも良いけれど、先にお参りしましょうよ」
すっかり縁日気分を満喫していたけれど、そういえば、折角都築先輩のお誘いで来たのだしと、僕達は宙柱さまの本殿へと向かう事にした。
屋台の立ち並ぶ賑やかな通りから境内に向かうと、さっきまでの喧騒が嘘の様に静まりかえり、薄暗闇の中に立ち並ぶ灯籠の明かりが静かに参道を照らし出している。
「見て、天の川が綺麗」
結星先輩の声に上を見上げると高い木立の上には満天の星空が広がっていた。
「本当だ⋯⋯」
普段は街明かりで見えない星達の瞬きに目を奪われる。
「綺麗ですね」
「そうね、合宿だともっと綺麗に見えるわよ」
そう言って微笑む結星先輩。
「楽しみですね」
そう言いながら、僕はまた1つ夜空の魅力を知った様な気がしたのだった。
次回は一週お休みさせていただいて、再開は1月9日(金)の予定です
年内のお付き合いありがとうございました
少し早いですが良いお年を




