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再会は図書室で

 授業が始まって1週間、明日は初めての週末だ。


 とりあえず一通りの教科を終えて、僕はホッとひと息ついていた。


 なんとなくクラスのみんなとも打ち解けはじめ、今の所、勉強の方も問題無さそう。


 「ちょっと覗いてみようか」


 少し余裕が出来た僕が向かったのは図書室。


 この間の部活紹介がどこか気になり、星の事を書いた本でも少し読んでみるか、くらいの軽い気持ちだった。


 学年ごとに教室が並ぶ本棟とは別に、特別教室や部室がある別棟へ向かう。


 最初に案内はされていたけれど、今の所は授業で使った情報処理教室くらいしか行ってはいない。


 そもそも昔から、図書室に行くよりは、連れと喋っていたり、身体を動かしていたかで、本を読む習慣があまり無かった。


 強いて言えば、小学生の頃は雨の日にマンガとか読みに行っていたくらいかな。




 放課後、特に週末前の通路は、時折運動部のかけ声や、音楽室から練習中の音色がかすかに漏れてくるくらいで、あまり人影も無く静かだった。


 やがて図書室と書かれたプレートが見えてくる。


 扉を開けると、日差しを遮るカーテンや、足音を吸収する為か他の場所とは少し違う床、独特の紙の匂いと静けさが僕を出迎えた。


 司書係に軽く挨拶してから、とりあえずはどんな本が置いてあるのかを一通り見回ってみる事にする。


 新聞や雑誌、受験教材や資格取得教材といった、いかにも高校生らしい物から、定番の伝記や文学作品。


 意外だったのはライトノベル、漫画なども揃っていた。


 「結構便利かも、こんな本まであるのか」


 思わず立ちどまって、気になっていた作家の本をチェックしてみたりもする。

 

 つい寄り道に夢中になって、ふと気付いたら閉館時間が迫っていた。


 慌てて天文関係の場所だけでも確認しておこうと思い、書架へ向かうとそこには見覚えのある少女の姿があった。


「「あっ」」


 遊歩道の時もこんな感じだったっけ。


 お互いの顔を見て思わず出た1言がそれだった。


「あの時はどうも」


「あなたもこの学校だったの?」


「新入生です」


「ちょっと待ってて、ちゃんとお礼も言えてなかったし」


 どうやら部活の資料か何かを探しに来たみたいだ。


「よかったら何かお手伝いましょうか」


「大丈夫、後少しだから」


 そう言って彼女は何冊かの本をチェックしてから違う場所へ向かった。


 あまり天文とは関係無さそうな、他の場所でも何冊かの資料を揃えた後、僕達は図書室を後にした。




 とりあえず並んで歩きながら言葉を交わす。


「あそこに来たって事は、あなたも星が好きなの?」


「いや、とりあえずどんな本があるかなと思って、一通り見て周っていました」


「そうなんだ」


 そう言って、彼女は腕時計を見た。


「どうしよう、今日はあまり時間も無くなっちゃったし、よかったら来週にでも部室に来てくれるかしら」


「天文部でしたっけ」


「この間の活動紹介見てくれていたのね」


「はぁ、まぁ⋯⋯」


 まさか彼女の姿が気になって、覚えていたとも言えず、曖昧な返事を返す。


 そうしている間に、2階へと続く階段の所で彼女は立ちどまって僕を見た。


「そういえば名前、私は倉野 結星(ゆら)よ」


「あのっ、僕は牧田⋯一輝(かずき)です」


「そう、今日はもう少し用事があるからごめんなさい。部室はこの上、3階にあるからね」


 そう言って、彼女は階段を昇って行った。


 後に残った僕は、誰かが見たら少し気持ち悪い顔をしていたかもしれない。


「くらの ゆらさんか」


 ぶつぶつと呟く姿は、不審者と思われないかな、そんな事を考えながら、僕は校舎を後にした。




「あれっ、そういえば部活って何曜日にやってるんだ?」


 帰宅してからそんな基本的な事を思い出し、とりあえず来週になって、行ってみればわかるかなと、僕は軽く考えて週末を過ごしたのだった。

3話かけてやっと再会まで辿り着けました

次回『ここって天文部ですよね?』は22日の金曜日、21時頃投稿予定です

やっとタイトル回収出来るかな?


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