縁日へ行こう(中編)
「⋯⋯それじゃあ私はここで待ち合わせだから」
「「えっ」」
列車を降りて、乗り換えのバス乗り場に向かおうとした僕達だったけれど、ここで途中で竹内先輩から思わぬひとことが。
神社までは一緒だと思っていたのに⋯⋯、思わず結星先輩と顔を見合わせたけれど、そんな僕達を置いて竹内先輩はさっさと雑踏に消えて行ってしまった。
「それじゃあ行きましょうか⋯⋯」
「そうですね⋯⋯」
少し気まずい感じがしたのは、竹内先輩に2人だけのデートと勘違いされて、あらためて意識してしまったからだろうか。
結星先輩はデートと間違われてどう思っているのかが気になるけれど、隣を歩くその表情からはよくわからない。
とりあえずバス乗り場の方へ向かうと、周りは縁日に向かうらしい人達で賑わっていた。
中には同年代のカップルらしい姿もあって、ますます意識してしまいそうになる。
「結構、混んでいるのね。」
「そ、そうですね。」
もしかして僕達も知らない人からすれば、そう見られているのかな。
「牧田君、手をつながない?」
「えっ!?」
「ほら、混んでいるとはぐれちゃっても困るし」
急に差し出された手をそっと握ると、柔らかくて暖かい。
思わず夢見心地になりそうだった僕は、次のひと言で現実に引き戻された。
「なんだか弟が出来たみたいね」
そう言って微笑む結星先輩、まさかの弟扱いだったとは。
そりゃそうだろうな、色々な偶然が重なって知り合ったけれど、ただの同じ部活にいる下級生だもんな。
さっきから色々考え過ぎていたのは僕だけだったのかも。
とりあえず、今のこの間だけでも、2人だけの時間を楽しめたら。
そんな事を考えながらバスが来るのを待っていると、後ろの方から聞き覚えのある大きな声が。
「間に合ったぞー!!」
「ちょっとまってよ〜」
「あの声は、遠山君と紗英みたいね」
結星先輩も気付いた様で、スマホを取り出そうとしたのか、つないでいた手が離された。
「あっ⋯⋯」
「えっ?」
「いや、何でもないです」
思わず出かけた声を飲み込んだけれど、変に思われたかな。
宮前先輩とメッセージアプリで連絡を取っている結星先輩を見ながら、僕はいつか本当のデートが出来たらなんて事を考えてしまうのだった。
「よーし、まずは腹ごしらえだ!!」
その後、バスを降りた所で無事に合流した所で遠山先輩のひと声。
どうやら、試合が終わった後、着替えだけして急いで駆けつけてきたらしくて、エネルギー切れらしい。
「差し入れも食べてたのに〜」
そういう宮前先輩も参道に立ち並ぶ屋台を見ながら目を輝かせている様な。
「色々あるみたいだからゆっくり見ていきましょ」
そんな結星先輩の言葉も聞いていたのか、いなかったのか、早速、遠山先輩は焼きそばの屋台に駆け寄って、大盛りに出来ないか交渉している様だ。
「ねえ、結星、あっちにチョコバナナあるよ〜」
そういいながら戸惑う結星先輩を引っ張っていく宮前先輩。
「お~い、牧田!! あっちのたこ焼きも買っておいてくれないか!!」
先輩達、ちょっと自由すぎないかな、そう思いながらも、列に並びながら、ソースの焼ける香ばしい匂いや、どこかから漂ってくるベビーカステラの甘い香りを嗅いでいると、さっきの結星先輩とのやり取りで、少し落ち込んでいた僕の気分も高揚して来る。
うん、折角来たんだし、色々楽しまなくちゃ、そう思いながらたこ焼きを買って戻ってくると、遠山先輩は既に焼きそばを食べながら、次の獲物を探している様だ。
「先輩、ちょっとペース早すぎませんか?」
「何言っているんだ!! 祭りはまだまだこれからだぞ!!」
うん、完全に目的が違う様な気がするけれど、これでいいのだろうか!?
そう思いながら、僕は別行動になっている結星先輩と宮前先輩を待つのだった。
こんな甘酸っぱい青春がしたかった笑
いよいよ完結『縁日へ行こう(後編)』は明日21時頃更新予定です




