縁日へ行こう(前編)
夏至は過ぎたとはいえ、まだまだ太陽は西の空で存在を主張している夕暮れ、僕は駅前で1人佇んでいた。
今日は先日誘われていた縁日に、部員のみんなで行こうとしていたのだけれど⋯⋯
「ごめん、ちょっと間に合わないかも」
最初に連絡が入ったのは大山君。
最近、佐藤先輩と自作のモデルロケット作りの準備に没頭しているらしくて、今日は幸田部長も巻き込んで大きな街までパーツを見に行っていたのだけれど、どうやら手間取っているらしい。
「あら、早いわね」
連絡を確認して、ふと周りを見るとちょうど結星先輩が到着した所だった。
とりあえず大山君達の事を報告すると、困った様な顔をしながらこちらも思いがけない報告が。
「あのね、遠山君達がね⋯⋯」
どうやら遠山先輩が運動部の助っ人に呼ばれていたのだけれど、宮前先輩も応援に行っていたらしくて、2人とも遅れて合流するとの事。
「そろそろ5分前だし、どうしましょう」
「後は矢口君と高塚さんですね」
2人して顔を見合わせていた時、ちょうど矢口君からの着信が入った。
「ごめんね、愛純が浴衣の着付けに手間取っていて遅れているから先に行ってて」
高塚さん、気合入っているんだな⋯⋯じゃ無くて、今から結星先輩と2人きり?!
内心ドキドキしながらも結星先輩に矢口君達の事を伝える。
「仕方ないわね。2人だけで先に行こうか」
「そうですねー。仕方ないですよねー」
返事、うわずっていなかったかな、顔赤くなっていないよね。
たまに部活の最中に2人になる事はあっても、こうしてプライベートだと、どうしても意識してしまいそうになる。
偶然とはいえ、これは実質的にデートというやつなのでは。
最近高校生活にも慣れてきて、気になる子がいるとか、彼女が出来たとか、そんな話も周りで聞くようになり、少し敏感になっていた僕は、今の状況をチャンスだと喜んでいいのか、下手な事を言って嫌われたらどうしようとか、軽くパニック状態になりながら縁日へ向かう事になったのだった。
週末の夕暮れ時の列車の中はそこまで混んでいる事も無く、僕達は並んで座席に腰掛けていた。
「せっかく誘っておいて、みんな困ったものね」
軽くぼやいている先輩も可愛い、そして隣に座っていると、ふわりと漂ういい匂い。
「みなさん結構忙しいんですね」
当たり障り無い返事をしながら僕は、何か気の利いた事を言えないだろうかと必死に考えるけれど、距離が近すぎて、それどころでは無い。
「牧田君は他に予定とか大丈夫だったの?」
「⋯⋯いや、特に無かったですし、ほら、誘われたから空けてありましたし。」
一瞬、テスト前に真理恵ちゃんに会った事で、友也ともなんとなく遊ぶ約束をしていた事を思い出したけれど、今は結星先輩⋯⋯じゃ無くて天文部の事で頭がいっぱいだし。
「そうなの? この間も他の学校の子とも仲良さそうだったし」
「本当にただの幼なじみですよ」
結星先輩覚えていたんだ、というか何でそんな事気にしているのだろう。
ちょうどその時、列車が次の停車駅に着いた。
「⋯⋯おや、お2人さん。抜け駆けデートかな」
「「竹内先輩!」」
乗り込んで来たのはまさかの竹内先輩だった、もしかして縁日に行くつもりだったのかな。
「偶然ですね。天文部のみんなで行くつもりだったのに色々都合がつかなくて」
「⋯⋯なるほど、それで2人きり、これも星の巡り合わせ⋯⋯」
何を嬉しい事を⋯⋯じゃなくて、結星先輩の説明聞いて無かったのですか竹内先輩!?
「もしかして先輩も縁日に?」
とりあえず照れくささもあって強引に話題を変えてみる。
「⋯⋯たまには気分転換にと誘われてね」
「「じゃあご一緒に」」
思わず結星先輩とハモってしまった。
「⋯⋯悪いけれど、向こうで待ち合わせしているから、2人でごゆっくり」
もしかして松井先輩かな、というか2人でを何回も言われると、余計に意識してしまうのですけれど。
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか列車は進んで行くのだった。
今年最後の週末という事で続きは明日
『縁日へ行こう(中編)』21時頃更新予定です




